相続時に想定しうる借地権の使用貸借と名義人の変更に起因する問題について
相続時に想定しうる借地権の使用貸借と名義人の変更に起因する問題についてお伺いします。
・「借地権の使用貸借に関する確認書」に記載し忘れた家屋持分について、借地権の相続時に何らかの問題が起きる可能性があるか
・もしあるなら最善の対処法は何か
につき、御教示いただきたくお願い致します。
経 緯
父(平成17年死去)が、祖母(母の母、平成11年死去)が借地していた土地に、建物を建築するに際し、「借地権の使用貸借に関する確認書」を昭和63年12月12日に提出した。
確認書の借受者名は、父のみだが、建築時の家屋登記における持分は以下の通り
父 30/40
私 4/40
母 3/40
祖母 3/40
祖母が死亡し、借地権を母が相続する旨を地主に連絡し、地主と母との間で覚書を交わした
祖母の家屋の持分3/40も母が相続し、持分は以下のようになり、登記済み
財産が借地権のみだったので、税務署に相続税の申告は行っていない
父 30/40
母 6/40
私 4/40
父の死去に伴い、現在の持分登記は以下の通り、登記済み
相続税は発生しなかったが、税務署に申告済
母 23/40
私 17/40
質 問
・昭和63年に提出した「借地権の使用貸借に関する確認書」の借受者名が父のみで、家屋登記の持分を正確に反映していません。
それによって、母が死亡し相続が発生した場合、私が借地権を相続するにあたり、何か問題が起きる可能性はあるでしょうか。
同居の相続人である私が、「小規模宅地の特例(8割減特例)」を使えなくなる等の問題は起きるでしょうか。
あるいは、借地権の4/40が私に贈与されたとみなされる可能性はあるでしょうか。
・問題になるとしたら、それを未然に防ぐ今できる最良の方法は何でしょうか。
以上御教示いただきたくお願い致します。
税理士の回答
この「借地権の使用貸借に関する確認書」は、借地権者(地主をAとし借地権者をBとします)以外の者(Cとします)がその借地上に家を建てる場合に出てくる書面です(BとCは親族ですから、借地使用料は無償が普通です)。
こうしたケースは珍しくありません。そして関係者のA,B,Cは、Bが借地権者であるかということは正確に認識しています。しかし外部(つまり税務署)からは、建物所有者が借地権者であると見えてしまいます(登記簿には借地権者の記載欄がありません)。するとBの借地上にCが建物を建てると、税務署からは借地権がBからCに贈与されたようにみえるため、Cにドカッと課税せざるを得なくなります。
しかしこれは実情にそぐいません。そこでこうした事情を記載しこれに関係者が連署した上記の確認書を提出すれば、贈与税の課税をしないこととしたわけです。つまりこの書面の本質は、Cが以前にBから借地権の贈与を受けていたとする、Cの相続税逃れといったずるい主張をさせないためのものといえましょう。
さて前置きが長くなりました。
ご質問のケースでは、借地権者は当初の祖母から母に相続されており、皆さんもそのように認識されておられます。そして借地権者であるその母が亡くなった場合がご質問の対象となっています。つまり税務署が懸念するような「ずるい」ことをお考えではないわけです。
そうであれば、確認書の内容が実態とずれていても税務署はいちいちその点を追求するとはとても思えません。また建前は別にして、「40分の4が贈与されたとみなされる可能性」はないと思います。何よりその贈与は実際に行われていません。みなし課税などおいそれとできるものではないのです。
いずれにしても母が借地権者であることは紛れもない事実です。したがって同居されている等の他の要件が満たされている限り、小規模宅地の特例の適用も問題ないと考えます。
詳細にわかりやすくご説明下さいましてありがとうございました。
安心いたしました。
本投稿は、2017年07月13日 06時45分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。