給与計算をアウトソーシングするメリット・デメリットや費用相場

給与計算は専用ソフトなどを使用すれば自社で行うことができますが、比較的手間のかかる業務です。また、専門的な知識がないと計算を正確に行うことが難しいという懸念もあります。
そこで場合によっては給与計算業務を税理士などの専門家に外注(アウトソーシング)することを検討してみるとよいでしょう。
目次
給与計算をアウトソーシングするメリット・デメリット
給与計算のアウトソーシングには、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット1:コストカット
給与計算のアウトソーシングにおける最大のメリットは、時間と費用のコストカットができるということです。
従業員数が増えれば増えるほど、給与計算にかかる時間も増えます。特に、年末調整や賞与の時期などは通常時よりも業務負担が増加します。給与計算のための人員確保として担当者に長時間の残業させたり、ほかの人材を給与計算業務に割り当てたりするのは好ましいことではありません。
アウトソーシングをすれば、給与関連業務の担当人員を1人新たに雇用するよりもコストが抑えられる場合があるので、人件費の削減にもつながるほか、人員確保の負担も軽減することができます。
また、人員育成や給与計算の時間をほかの業務に充てることができるため、コア業務に集中することもできます。
メリット2:法改正への対応
給与計算は労働法や税法の知識が必要ですが、これらの法令は法改正が度重なって行われています。法改正がされた際に、その情報をすべてキャッチアップして計算などに反映させるのは、専門的な知識がないと困難です。
給与計算でミスをしてしまうと、従業員に迷惑がかかるだけでなく、金額の訂正・調整や給与明細の再発行など、事務的負担も増加してしまいます。
日頃から労働法や税法に携わっている専門家であれば、改正が行われた場合にも新しい法令に従って漏れなく計算してくれますので、その点もアウトソーシングをするメリットといえます。
デメリット1:ノウハウが蓄積されない
アウトソーシングをした場合、社内に給与計算業務のノウハウが蓄積されないというデメリットがあります。たとえば給与に関して従業員から問い合わせがあっても、即時に対応できません。
また、アウトソーシング先に何かトラブルが起きた場合に、社内で一時対応することができないというリスクもあります。
デメリット2:外注費が発生する
当然ながら、アウトソーシングにした際には委託先へ支払う費用が発生します。料金設定は従業員数に応じて加算されることが多いため、大規模な会社の場合は、その分費用も多く発生してしまいます。
また、アウトソース先によっては、企業の就業規則に合わせて給与計算のシステムを構築している場合もあり、就業規則の改定に合わせてシステムの再構築が必要となり、その都度費用が発生する可能性もあります。
従業員数や社内の状況などを考慮して、適切な判断をしましょう。
アウトソーシングできる給与関連業務

アウトソーシングでは給与計算だけではなく、給与に関連するさまざまな業務を依頼することができます。
給与計算・明細作成
従業員の勤怠情報を集計し、給与を計算します。残業代や社会保険料、雇用保険料のほか、住民税や所得税といった、毎月金額が変動する項目の計算も含まれています。
アウトソーシング先によっては、給与明細の作成や郵送など、明細発行に関連する業務もまとめて依頼することもできます。
振込・納税
確定した給与を振り込むためのデータ作成や振込、住民税・所得税の納税を行います。給与計算業務にオプションとして付随しているケースがほとんどです。
年末調整
年末調整では、源泉徴収票や給与支払報告書、支払調書などを、税務署や市町村へ提出する必要がありますが、そのような書類の作成と提出も代行してくれるケースが多いようです。
年末調整は、源泉徴収票やさまざまな申告書・証明書などの手配と提出に時間がかかる作業です。期日は翌年の1月31日となっており、間に合わない場合はペナルティが科されてしまいます。
年末調整だけをアウトソーシングすることも可能なので、検討してみるとよいでしょう。
社会保険の手続き
社会保険の加入・脱退に関する各手続きを代行してくれます。また、同時に労働保険の手続きも依頼することができるため、従業員の入退社が多い新年度が始まる前後などは、事務的負担を軽減することができます。
住民税の更新
住民税は、毎年5月に自治体から届く「住民税の特別徴収額通知書」をもとに、給与から天引き(特別徴収)します。給与計算の際は、6月から翌年5月までの住民税額を反映させなければなりません。しかし、住民税額は12か月すべて同じ税額というわけではなく、従業員の入退社などによって変動するため、納付金額を正確に把握する必要があります。
従業員数が多い場合は、税額の確認・反映作業だけでも手間がかかってしまうため、住民税の年度更新をアウトソーシングする企業も少なくありません。
賞与・退職金計算
賞与の計算における、税金・社会保険料などの計算や明細の作成なども依頼できます。
また、退職金にについても税金の計算や、各種証明書の発行や提出書類の作成など、退職時に必要な手続きを依頼することができます。
アウトソーシングする判断基準

アウトソーシングをすることで事務的な負担は軽減されますが、かえって外注費がかかるなど可能性もあります。
判断基準として、以下の状況に当てはまる場合に、アウトソーシングを検討するとよいでしょう。
- 給与関連業務によってコア業務がおろそかになっている
- 起業したばかりで給与関連業務に割く時間・人員がない
- 給与関連業務に対応できる専門知識をもった人員が社内にいない
- 給与計算を専門とする従業員を雇用しており、人件費が増加している
- 経理担当者が退職するが、後任が見つからない
以上をふまえると、従業員がごく少数の場合や、社労士資格を所有している従業員がいる場合などは、社内で給与計算を行った方がコストダウンになると考えられるため、アウトソーシングをしなくてもよいでしょう。
アウトソーシング先の選び方と費用相場
給与計算業務は法律で定められた独占業務ではないため、必要な資格はありません。しかし、計算においては税法などの知識が必要であり、税額計算や保険の手続きなども行う必要があることから、アウトソース先としては、税理士や社会保険労務士に依頼をするのがよいでしょう。
ほかにも、アウトソーシングを専門としている業者もあり、税理士・社労士・専門業者のそれぞれで特徴や費用相場が異なります。
税理士
税理士をアウトソース先とした場合、給与計算以外にも、その他の税務相談や節税対策の相談もできるといったメリットがあります。
税理士であれば、記帳代行や財務書類の作成など、依頼できる業務は多岐にわたります。顧問税理士に給与計算を依頼した場合は、税務サービスの一環として、低価格または無料で請け負ってもらえることもあります。
特に年末調整は税理士の独占業務なので、給与計算と一括で依頼することができることも強みのひとつです。
デメリットとしては社労士の独占業務である社会保険関係の手続きなどを行うことができない、ということが挙げられますが、社労士資格を持っていたり、社労士と提携している税理士も多いので、契約時に確認をしてみるとよいでしょう。
報酬相場は、従業員の人数にもよりますが、基本料金が5,000円から1万円程度、従業員1名につき1,000円前後となっています。
社会保険労務士
社会保険労務士(社労士)は、労働社会保険に関する手続きや、労務管理に関する相談などが独占業務として認められています。
社労士をアウトソース先とした場合は、従業員の入退社の手続きや毎年6月の労働保険の年度更新なども依頼することができます。
従業員数が数十名以上の会社は、社会保険料や残業代の計算がより複雑になっていくため、社労士資格を持った専門家に依頼をした方がよいでしょう。
ただし、年末調整については前述のとおり税理士の独占業務になるので社労士には依頼できません。
報酬相場は、基本料金が1万円から2万円、従業員1名につき500円から1,500円程度となっているようです。
アウトソーシング専門業者
給与計算の担当者は必要ない、とにかく非生産業務を外注してコア業務に集中したい、という企業は、給与計算業務のアウトソーシングを専門とした会社に依頼をするとよいでしょう。
費用は業者によって料金体系が異なるため一概には言えませんが、下記の表で紹介した例だと、少人数の企業であれば月に3万円ほどで委託できる会社もあります。
ただし、業者によっては、専門知識や実務能力のないスタッフを動員していたり、セキュリティが整っていないといったリスクも考えられます。
ミスや従業員のデータが外部に流出してしまうことのないように、アウトソース先は専門性と安全性をしっかりと確認し、慎重に選択することが大切です。
名称 | 特徴 | 料金 |
---|---|---|
ピタット給与 | 新たなシステムの導入不要。通常2日間以内で給与処理完了 | 年間処理料:250万円 (出勤簿の集計業務を含む価格、従業員200名規模企業の例) |
NOC給与計算アウトソーシング | プライバシーマーク、QMS取得し運用環境のセキュリティ性を確保 | 初期費用:700,000円 月額:150,000円〜 (従業員100名規模企業の例) |
メイソンコンサルタントグループ | 女性専門家のみが在籍しているアウトソーシング会社 | 月額:120,000円 (従業員50名規模、IT関連企業の例) |
給与PRO:給与計算アウトソーシング | 給与計算以外の経理業務全般のサポートも可能 | 基本料金:10,000円 月額:380円/ユーザー (従業員41〜50名規模企業の例) |
東京 経理・給与計算代行センター | 主に中小企業向け。プライバシーマーク取得 | 基本料金:30,000円/月 月額:390円/ユーザー (従業員41〜50名規模企業の例) |
おわりに
給与計算を自社で行う場合、給与計算ソフトを使用すれば計算の負担は軽減されますが、それでも事務処理や振込・納税などの手間はかかってしまいます。
社労士税理士や、社労士と提携している税理士に依頼をすれば、ワンストップで対応が完了するのでおすすめです。また、顧問契約も同時に依頼をすることで、給与関連業務の報酬額が安くなることもあるため、あわせて相談をしてみるとよいでしょう。
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