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制作に使用する消耗品や材料の計上と家事按分について

個人事業主として開業を考えている給与所得者です。

ハンドメイド作品を販売するため、事業に使用するものの整理を行っているところです。

1.開業を想定して購入したもの(備品、材料)
→数年前から現在にかけて購入して未使用のもので、領収書や購入明細があります。

2.開業を想定して制作したもの
→開業時点で製品公開とするために事前に制作したものですが、自宅に元からあったもので制作したため材料の仕入れ値が分からないものと、開業するつもりで購入したため材料の仕入れ値が分かるものがあります。

3.自宅に元からあったもの
→制作の際にマスクやニトリル手袋などを使用しますが、コロナが流行した頃に購入していたものがまだ残っているため、当面はこれを使用したいと考えています。
→2.とも被りますが、現時点では制作していない、仕入れ値が分からない材料があります。

これらの項目について、1.は開業費または仕入として仕訳をするかと思います。
2.に関して、材料の仕入れ値が分かるものは原価で製品または商品と仕訳をして、残った材料は仕入と仕訳すればよいと思いますが、材料の仕入れ値が分からないものはどのように処理すればよいでしょうか?
3.に関して、購入日や購入金額が分からず、また半端の状態から使用を考えているものはどのように処理すればよいでしょうか?

また、自宅で制作しますが、基本的に家賃や水道光熱費などの家事按分は考えていません。
事業用口座または事業用現金での入出金がそのまま帳簿の記載となるように事業を行う予定です。
住所公開用のレンタルオフィスの契約料は事業費とするつもりですが、編集などの作業で使用するために購入したタブレットは、ネットサーフィンやゲームなどで使用するかもしれないとの考えから事業費には入れません。
ショップカードや明細印刷、宛名印刷などの作業で使用するために購入したプリンタは事業費にしたいのですが、もしかしたらプライベートの印刷をする可能性がないわけではありません。
これらのことに問題はないのでしょうか?

長文となりましたが、よろしくお願いいたします。

税理士の回答

開業を想定して購入したもの(備品、材料)の処理:

購入した備品や材料は、開業費または仕入として仕訳を行うのが一般的です。開業費として計上する場合、それらは「無形固定資産」として扱い、5年以内での任意の償却が可能です(所得税法施行令第七十二条)。

開業を想定して制作したものの処理:

材料の仕入れ値が分かるものは、製品の原価として計上できます。通常、製品あるいは商品として仕訳し、残った材料は仕入として計上します。
材料の仕入れ値が分からない場合、材料を現在の市場価額で見積もり、それを基に原価を設定する方法があります。市場価額が不明確であれば、購入時の他の類似商品の価格などを参考にします。

自宅に元からあったものの処理:

購入日や金額が不明のものについては、使用段階でその市場価額または類似品の購入価格を参考にして経費として計上する方法があります。具体的には、ニトリル手袋やマスク類が事業に使用される状況を徹底的に記録し、その記録に基づいて必要な場合に推定の価額を設定します。

家事按分や事業費の問題:

家賃や水道光熱費などの共用部分を按分せず、そのまま使用しないとのことですが、それが税法上必須というわけではありません。個人事業主としては、共用設備に関して按分することが一般的ですが、明確にプライベートと区別できるものだけを経費とすることで、税務調査時に明確な説明をする準備ができます。

プリンタやタブレットの取り扱い:

プリンタについては、事業用として使う頻度が明確であれば事業費として計上し、購入時の価格に基づき減価償却を行います(少額減価償却資産の規定が適用される場合があります)。プライベート利用がある場合、その割合を記録して手元に残しておくとよいでしょう。
タブレットは明確に事業用とならない場合、事業費への計上は避けた方が無難ですが、業務用である部分について明確に区分けできれば、その分だけを経費とすることが可能です。按分の割合は、合理的な基準に基づいて決定されます。

石割様

早々のご回答ありがとうございます。
いただいた内容にて確認と質問をさせてください。

開業を想定して購入したものについて、仕訳に関しては考えていたとおりのようで、安心しました。
ただすみません、開業費について混乱してしまって…。
開業費の償却(5年以内)と、青色申告の赤字繰越(3年間)はどのように関係するのか、両者の違いを、もし可能でしたら例を添えて教えていただきたいです。

開業を想定して制作したものについて、開業時にすでに製品として存在しているものは、原価または他製品を参考にした原価(仮)で仕訳をすればよいという認識で合っていますでしょうか?

自宅に元からあったものについて、購入日や購入場所など不明となりますが、このような状態でも事業支出とすることは可能なのでしょうか?
出金伝票を起こせば…とアドバイスされているサイトもありましたが、何もかも不明なため、消耗品に関しては、今ある在庫分はあえて計上せずに使うことも考えました。
ただ材料に関しては明確に売上に絡むため、どうしたものかと思っています。
ご説明にあったマスク等の使用段階でというのは、あらかじめ消耗品在庫として置かず、使用の都度計上ということですよね。
この場合は勘定科目と仕訳はどうなるのでしょうか?

家事按分について、おっしゃる通り、合理的な基準に基づいて割合が決定という点において判断が難しいため、あえて行わないとしました。
週に5日、給与所得者として勤務しているため(会社における私の雇用形態は副業禁止ではありません)、日々、明確にタブレットの使用時間や水道光熱費の使用量を区切って作業しているわけではないこと、ふと思い付いたときや隙間時間に作業することもあること、逆に作業をまったく行わない時期があることなどがその理由です。
申告や調査の際に、これはダメだよと言われるよりも、これは実は経費にできるよ(言われることはないと思いますが)と言われる方が精神的に楽なのもあり、100%事業用と説明できないものに関しては省くことにしました。
家事按分が必須というわけではないとのことで、こちらに関しては予定通りにしようと思います。

プリンタのプライベート利用について、今回事業用として購入する以前は、10年以上コンビニプリントで済ませられる程度でした。
ほぼ使用はないと思っていますが、あると使ってしまいそうとも思っているので、想定しておきたいという感じです。
記録を残す場合、例えば横罫のノートなどに、プリンタ使用の履歴などを書き込み、プライベート部分にマーカーをしておくといった形でもよいのでしょうか?

最初の質問より長くなってしまったかもしれません…。
お時間のあるときにでもご回答いただけますと幸いです。

ご質問についての詳細な回答を以下にまとめます。

開業費の償却と青色申告の赤字繰越の関係
開業費の償却: 開業に伴って発生した経費で、開業前の支出となるものを「開業費」として5年以内で任意に償却できます(所得税法第50条)。例えば、開業に関するコンサルタント費用や市場調査費などが該当します。この償却は、利益が出た際の所得から控除するための経費として扱われます。
青色申告の赤字繰越: 青色申告を行うことで純損失(赤字)を3年間繰り越して、翌年以降の所得から控除する制度です(所得税法第72条の2)。例えば、ある年に100万円の赤字が発生した場合、翌年に100万円の利益が出たときにその利益を相殺し、課税所得を0にすることができます。
両者の違い: 開業費の償却は開業に係る費用の処理方法であるのに対し、青色申告の赤字繰越は、事業全体が赤字であった年度の損失を将来の所得に繰越して控除するための制度です。

開業時にすでに製品として存在するものの仕訳
開業を想定して制作したもので、製品として存在する場合、可能であれば購入価格、原価で仕訳を行います。他の類似製品を参考にして市場価格に基づいて仮の原価を設定することも可能です。重要なのは、合理的に説明できる根拠を持つことです。

自宅に元からあったものの計上方法
購入日や価格が不明のものについても、現在の市場価値を参考に事業経費として計上することは可能です。ただし、できる限り合理的で文書で検証可能な根拠を残すことが重要です。出金伝票で明細を記録し、現在の市場価格などを引用してその価値を評価します。
消耗品の使用段階で計上する場合は、消耗品費として使用の都度、その使用量に基づく計上が適切です。  

家事按分不要との判断について
一般的に家事按分は合理的な基準に基づいて行われるべきですが、特に共用している経費を区別する必要がない場合、必須ではありません。あなたが100%事業用と説明できないものを省くのは、リスクを避ける賢明な選択です。

プリンタの使用記録の方法
事業用とプライベート利用を区別するために、横罫のノートに使用履歴を記録し、プライベート利用部分をマーカーで示すことは十分適切です。明確な記録があれば、後日必要に応じて根拠を示すことができます。

石割様

ご回答ありがとうございます。
いただいた内容にて再度確認と質問をさせてください。

開業費の償却と青色申告の赤字繰越の関係について、処理方法と制度の違いであるとのこと、とても腑に落ちるお答えでした。
お伺いしてよかったです。

製品原価については、仕入れ値が分かる材料で作ったものを元に、それより実際には高値であっても安値であっても、同じ作り方をしたものは一旦その価格を原価として設定することにします。

自宅に元からあったものについては、出金伝票で明細を記録とのことですが、日付や支払先の欄はどのように記入すればよいでしょうか?
例として、制作に使用する金具が自宅にあり、今後その在庫がなくなったときに、同じ使い方をする金具をA社から仕入れようとしている場合、摘要欄に参考値という書き方で、A社の金具の名称やJANコード、単価を記入する方法がよいかと考えました。
しかし支払先はA社ではないですし、日付もいつの日付を記入するのが適切なのか分かりません。
こちらに関してご教示いただければと思います。

同じく消耗品に関して、都度使用のたびに計上する場合、仕訳としては、
消耗品費 xx円/事業主借 xx円/摘要 ニトリル手袋1組(2枚)
などの書き方でよいでしょうか?

また、これまでにご回答いただいた内容を踏まえて、制作という作業をした日は、制作日誌のようなものをつけることにします。
作品レシピはありましたが、仕掛品・完成品・制作に使用したその日の消耗品など、記入が負担にならないフォーマットを考えて、記録していこうと思います。

あと少し、疑問にお付き合いいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

自宅に元からあったものを事業用として計上する場合の出金伝票の記載方法について、以下の結論を示します。

出金伝票の記載方法
日付の記入: 実際にその物品を使用した日を記入するのが一般的です。使用日を基準とすることで、経費計上のタイミングが明確となります。
支払先の記入: この場合、実際に支払先が存在しないため、"自宅在庫"や物品を購入する予定の「参考先」の名称を記載しておくとよいでしょう。これはあくまで参考値としての計上であるので、後日説明できる形で備考に明記しておくことが重要です。
摘要の記入: 摘要欄には具体的な使用目的や、参考にした市場価格の詳細(例: A社の金具の名称、JANコード、単価)を記入することで、取引の背景が第三者から見ても理解できるようにすると良いです。

消耗品に関する仕訳
消耗品の都度使用に際する仕訳は、以下のようにすることが適切です。
仕訳記入例:
借方(消耗品費):xx円(費用として計上)
貸方(事業主借):xx円(事業主の資産からの支出とみなす)
摘要: 具体的に使用した消耗品の種類や数(例: ニトリル手袋1組(2枚))

石割様

ご回答ありがとうございます。

用途を明確にしたり、参考にしたものをきちんと記録しておくことで、裏付け資料のない出費も処理できるとのこと、とても勉強になりました。
長くお時間を割いていただきありがとうございました。

本投稿は、2024年09月26日 07時38分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

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