役員契約賃貸の経費計上について
現在役員名義契約の賃貸で事業をしています。実際に居住区域50:50事業区域としっかり分かれています。
役員社宅という言葉よりは、しっかりと作業場があるような感じです。
こういった場合は経費計上出来ますか?
また、可能な場合は仕訳の方法や役員の不動産所得についても教えていただきたいです。
税理士の回答
結論
経費計上は可能です。ただし安全に処理するには、
①「賃貸人=役員」「借主=法人」という“転貸(又貸し)構造”の正しい整理となります。
② 事業使用割合の明確化(50%を“根拠付きで説明できる状態”)
③ 適正な“役員への家賃支払い”と“役員側の不動産所得申告”
が必須です。
仕訳と税務の扱いを誤ると “家事関連費の否認” や “役員への給与課税(認定賞与)”リスク が生じますので、以下の形で進めるのが最も安全です。
理由
法人が使う作業場・事務所スペースが明確に区分され、客観的に事業のための独立した利用実態がある場合、法人はその使用部分について 「賃借料」として経費算入可能 です。
しかし契約名義が役員のままの場合、税務署は次の点を確認することがあります。
役員個人が賃借した物件を法人が使っているので、
法人 → 役員への賃料支払い が法律上必要(無償で使わせるのは難しいかと思います)。
その結果、役員側では 不動産所得(又は雑所得) が発生する。
家事関連費(居住部分)と混ざるため、事業割合が客観的に妥当か?根拠は?
法人負担額が居住部分に及んでいないか(=役員への利益供与になる)。
実務処理
① 契約名義は役員のままで大丈夫です(法人名義に変更不要)
ただし、法人は役員から「事業用スペースのみを間借りしている」という形をとります。
② 法人 → 役員へ“事業割合分の賃料”を支払う
例:家賃 100,000円、事業使用割合 50%
→ 法人が役員へ 50,000円/月 を賃料として支払う
【法人の仕訳】
(借方)地代家賃 50,000(貸方)普通預金 50,000
③ 役員側(個人)に発生する所得
役員は大家(転貸人)となるため、受取賃料 50,000 円は不動産所得 ですが、次の点に注意します
<不動産所得の計算>
収入 = 法人から受け取る賃料 50,000円 × 12ヶ月
必要経費 = 自身が払う元の家賃の “事業比例分のみ”
例:家賃 100,000円(月)を役員が個人で支払っている
→ そのうち法人へ貸している部分 50% を必要経費計上可能
必要経費:100,000円 × 50% = 50,000円/月
すると
収入:50,000
経費:50,000
で 不動産所得 0 円 となり、課税リスクを最小化できます。
④ 居住部分 50%は法人の経費不可
居住部分に法人が負担すると
→ 役員への経済的利益供与=給与課税(認定賞与)リスク
→ 措置対象になるので絶対に避ける。
⑤ 事業割合(50%)の根拠が重要となります
税務調査では次を要求される可能性があります
間取り図
仕事スペースの写真
面積比の説明(㎡ベースが最も安全)
仕事専用備品が配置されているか
生活スペースとの明確区分
数字だけの「50%です」は否認の可能性があります。
面積で算定し、写真・図面を保存しておくと非常に強いです。
知りたかった事全てを明確に説明いただき誠にありがとうございます。
こちらを参考に会計処理をしてみたいと思います。
本投稿は、2025年12月05日 10時45分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







