事業継承について
個人で薬局を経営しています。7月に親から息子の、私が事業を引き継ぎ、父の廃業関係と私の開業関係の手続きは終わりました。
①土地建物は父のもので、実質無償で引き続き営業しています。使用賃貸であれば贈与にならないという理解であってますでしょうか。
②レセプト関係が7.8月が名義の変更が間に合わず父の名義で精算されてきたのですが、私の売上に計上して問題ないでしょうか。
③水道光熱費を父名義から変えられない為(自宅兼店舗の為)、大体の使用料を計算し父に支払ったら経費にできますか?
④父の帳簿は6月で締めて、その後売掛金が入金になっても特に処理したりしなくてもよろしいのでしょうか。
⑤機械や備品(資産に載っているもの)については、無償で使わせてもらうことになってるのですが、これは贈与になりますか?使用賃貸という扱いにできますか?
わからないことが多すぎて混乱しております。ご教授願います。
税理士の回答
ご質問の5点について、順番に回答します。
◆① 土地・建物の無償使用について
土地・建物を無償で借りて使用するだけであれば、通常、贈与税はかかりません。
お父様が所有する土地・建物を無償で借りる場合は、一般的に「使用貸借」に該当します。
土地・建物の所有権がお父様に残っていれば、資産そのものの贈与には該当しません。
なお、お父様と生計を一にしている(生活費を共通にしているなど)場合は、建物の減価償却費や固定資産税などのうち、事業で使用する部分を必要経費にできる場合があります。
◆② お父様名義で精算されたレセプト収入について
ご質問者様の事業の売上であれば計上できますが、まずは収入がどちらに帰属するかを確認する必要があります。
売上を誰のものとして計上するかは、請求名義や入金先だけでなく、実際に誰の事業の収入なのかによって判断します。
7月以降の調剤がご質問者様の事業として行われ、その報酬を受け取る権利もご質問者様にある場合は、ご質問者様の売上として計上することが考えられます。
ただし、薬局の場合は、経営者の変更に伴う保険薬局の指定手続きも関係します。
まずは、7月・8月のレセプトがいつの調剤分なのか、保険薬局の指定日や報酬を受け取る権利がどちらにあるのかを確認する必要があります。
また、お父様が代わりに売上を受け取った場合は、親子間でお金を精算し、それぞれの帳簿に記録する必要があります。
◆③ 水道光熱費について
事業で使用した部分は経費にできますが、お父様への支払額をそのまま経費にできるかは別途判断が必要です。
自宅兼店舗の水道光熱費は、事業で使用した部分を合理的に計算できれば、必要経費にできます。
ただし、お父様と生計を一にしているかによって取扱いが変わります。
生計を一にしている場合は、お父様に支払った金額をそのまま経費にすることは原則としてできません。
一方で、お父様が実際に負担した水道光熱費のうち、事業で使用した部分は経費にできる場合があります。
生計を別にしている場合は、ご質問者様が実際に負担した水道光熱費のうち、事業で使用した部分を経費にすることが考えられます。
いずれの場合も、単に概算額をお父様に支払うのではなく、請求書を保存し、店舗の面積や設備の使用状況などを基に計算しておくとよいでしょう。
◆④ お父様の廃業後に入金される売掛金について
廃業後に入金された売掛金についても、回収した記録を残す必要があります。
6月までの営業で発生した売上は、原則としてお父様の事業収入です。
通常の経理では、廃業時点で入金されていない売上についても、売掛金として計上しておきます。
その後、7月以降に入金された場合は、売掛金の回収として処理します。
すでに計上した売上を、もう一度計上する必要はありません。
また、お父様が6月に廃業していても、2026年分の所得税の確定申告は別途必要になる可能性があります。
廃業までの売上や経費を整理し、申告が必要な場合は2026年分の所得として申告が必要か確認しましょう。
◆⑤ 機械・備品の無償使用について
機械や備品も、無償で借りて使用するだけであれば、通常、贈与税はかかりません。
お父様の所有物を無償で借りて使うのであれば、土地・建物と同じように、「使用貸借」として扱うことが考えられます。
また、お父様と生計を一にしている場合は、お父様が所有する機械や備品の減価償却費を、ご質問者様の事業の経費にできる場合があります。
その際は、お父様の固定資産台帳を確認し、取得価額やこれまでの減価償却の状況を踏まえて計算します。
一方、生計を別にしている場合は、原則として、お父様所有の機械や備品の減価償却費をご質問者様の経費にすることはできません。
◆その他の注意点
今回の事業承継では、医薬品などの在庫をどのように引き継いだかも重要です。
機械や備品を無償で借りる場合とは異なり、在庫そのものを無償でもらった場合には、お父様の所得税やご質問者様の贈与税が関係する可能性があります。
また、お父様が消費税の課税事業者であった場合は、廃業した年の消費税の確定申告や、事業用資産の取扱いについても確認が必要です。
まずは、お父様と生計を一にしているかを確認し、引き継いだ資産や負債、売上の帰属を整理することをおすすめします。
引継ぎでは、資産を譲り受けたものと借りて使うもの、父子それぞれに帰属する売上を一覧にすると整理しやすくなります。通常の収入計上では、入金名義や入金日だけでなく、報酬を受け取る権利の確定時期も重要です。水道光熱費は、単なる概算の支払額ではなく、請求書と店舗の使用実態から私用分を区分してください。薬局の指定・名義変更資料、レセプト明細、固定資産台帳を持って、お近くの税理士事務所で親子双方の帳簿を確認されることをおすすめします。
たくさんの質問にお応えいただきありがとうございました。
もし、これらの資産を無償で引き取ることになった場合は、時価で贈与したものと考えるのでしょうか。
機械や備品などは古く、ほぼ償却が終わって簿価1円のものばかりなのですが、今贈与でやったほうがよいか、今使用賃貸にし相続で取得したほうが良いのか何かアドバイスをいただけたら幸いです。
追加のご質問について回答します。
◆無償で引き取った場合の取扱い
機械や備品を無償でもらう場合は、原則として贈与に該当します。
贈与税は、もらった時点での価値を基に計算します。
そのため、お父様の帳簿上で減価償却がほぼ終わり、帳簿価額が1円になっていても、贈与税の評価額が1円になるとは限りません。
中古品として売買される場合の価格などを参考に、現在の価値を確認する必要があります。
なお、暦年課税の場合、その年にもらった財産の合計額が110万円以下であれば、原則として贈与税はかかりません。
◆今贈与してもらうか、借り続けるか
すぐに自分の所有物にする必要がなければ、まずは無償で借り続ける方法をおすすめします。
現時点で贈与の手続きをする必要がなく、将来の相続も含めて検討できるためです。
一方、ご質問者様の所有物として管理していきたい場合は、現時点で贈与してもらう方法もあります。
ただし、贈与してもらった機械や備品の減価償却は、原則としてお父様の取得価額やこれまでの減価償却の状況を引き継いで計算します。
贈与された時点の価格で、新たに減価償却を始めることはできません。
そのため、すでに減価償却が終わっている機械や備品であれば、贈与してもらっても、基本的に追加の減価償却費は発生しません。
どちらがよいかは、機械や備品の現在の価値や、今後の所有・管理方針、将来の相続などによって変わります。
なお、将来の相続で引き継ぐ場合には、ほかの相続人との関係も考えておく必要があります。
まずは、お父様の固定資産台帳を確認し、中古品としての売買価格なども参考に、対象となる機械や備品の現在の価値を調べるところから始めるとよいと思います。
宮本先生!
大変参考になりました。追加質問にもご対応いただき感謝しております。
資産の価値を調べるのも大変そうですね。
どう調べてよいやらです。
まずは使用賃貸から始めていきたいと思います。
ありがとうございました!
相亰俊信
お世話になります。
結論として、①と⑤は使用貸借(無償の貸し借り)であれば贈与税はかかりません。②は事業を引き継いだ日以後の調剤分であれば相談者様の売上となります。③は経費にできますが、お父様と生計が同じかどうかで方法が変わります。④は売掛金の消込(入金の記録)だけで足ります。
①土地は「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和48年個別通達)により、借地権相当額の贈与はないものとされます。建物も無償で使うだけでは贈与税は課されません。固定資産税相当額程度を負担する場合も、使用貸借の範囲とされます。
②所得は名義ではなく、実際に事業を行った人のものとして扱われます(所得税法12条、実質所得者課税)。引継ぎ日以後の調剤分は相談者様の売上とし、お父様名義で入金された分はお父様から受け取った旨を記録しておいてください。引継ぎ日前の調剤分はお父様の売上です。
③お父様と生計を一にしている(生活費を共通にしている)場合、所得税法56条により親族への支払は経費になりません。その代わり、お父様が業者へ支払った水道光熱費のうち事業で使った分は、相談者様の経費にできます。この場合、お父様へお金を払う必要はありません。別生計であれば、合理的に按分した実費をお父様に支払うことで経費になります。
④6月までの調剤分は、6月末時点で売掛金(未回収の売上)として計上済みです。入金時は売掛金を減らす処理のみで、新たな所得は生じません。お父様は、廃業年分の確定申告で6月までの事業所得を申告してください。
⑤所有権が移らない無償使用なので、贈与にはならず使用貸借の扱いになります。生計を一にしている場合は、所得税法56条により、事業に使う機械・備品や店舗部分の建物の減価償却費、固定資産税も相談者様の経費にできます。別生計の場合、無償使用ではこれらは経費になりません。
なお、将来資産を譲り受ける場合の取扱いや、消費税・インボイス登録の要否は別途確認が必要です。
本投稿は、2026年10月18日 15時15分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。






