役員退職慰労金について
1 法人の税務として、役員退職給与の額のうち、不相当に高額な部分の金額については、損金不算入とされることについては、理解できています。
2 他方で、退職給与を受け取った役員の税務としても、不相当に高額な部分という考え方はあるのでしょうか?この部分については退職所得として扱われず、配当や給与として扱われる場合もあるのか、という問題です。
税理士の回答

受け取る側はあまり専門誌等でも話題に上がることは無いですね。実態に即し、1人株主である等、配当課税の回避、といった特殊な事例でないと、他の株主の方への配当等も生じることになるので、現実的でない、発生件数がほぼない、といった理由となるでしょうか。
給与、というのは役員報酬としての賞与としての扱いですね。
(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額
と優遇されていますので、勿論、退職金としての実態が無ければ適用は受けないのでしょうね。通常、法人税上も容認されるものしか支給することは無いのでご興味がありましたら、理屈として、判例等を確認されても宜しいかもしれませんね。公表裁決等。
退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社又は信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされます。

役員退職金の不相当に高額な部分の金額は、配当や給与に該当することはなく、損金に算入されないだけの処理となります。
相田先生
ありがとうございます。ただ、法人税的にギリギリのところを攻めて退職金否認をされた場合、というのは結構あるのではないか、と思うのですが…。
富樫先生
ありがとうございます。要するに、ギリギリを攻めると、法人は後で法人税を支払わなければならないリスクを負うが、元役員は退職金の優遇税制メリットを享受できるという理解でいいわけですね。
所得税法では、退職所得を「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得をいう」とされています。従って、役員退職給与が法人税の取扱いで過大であったとしても、その支払いが退職の事実に基づき一時に支払われたものであれば、所得税の取り扱い(個人の所得区分)としては過大とされた分も含めて退職所得に該当すると考えます。

そのような解釈でよろしいと思います。
法人税法のみ、過大かどうかの判定があるだけで、所得税はすべて退職所得となり、控除額を差引き、1/2の退職所得金額となります。

所得税法では、同法30条1項で、「退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得をいう」と規定しており、この「退職手当等」から過大退職手当等とされた部分を除くとは規定されていません。
また、最高裁第二小法廷昭和58年9月9日判決は、ある金員が所得税法30条1項に規定する「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に該当するためには、それが、〔1〕退職すなわち勤務関係の終了という事実によってはじめて給付されること、〔2〕従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、及び〔3〕一時金として支払われること、との各要件を備えることが必要であるとしており、また、同項の「これらの性質を有する給与」に該当するためには、それが、形式的には上記各要件のすべてを備えていなくても、実質的にみてこれらの要件の要求するところに適合し、課税上、「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うことを相当とするものであることが必要である旨判示しています。
したがって、法人税法上、役員退職給与が過大であるとされたとしても、その法人を退職したという事実に基づき役員に一時に支払われたものであれば、その退職給与は退職所得として課税されることになります。
なお、「過大退職金2,140万円は、Aの専務取締役辞任に伴い請求人が一時に支給した給与であると認められるから退職所得に該当する。」とした裁決事例があります(国税不服審判所平成1年6月21日裁決 LEX/DB26010534)。

以上の様な事案はありますが、ものには限度がありますので、必ず大丈夫とは言えません。実態として退職したことに起因した給与に該当することが前提となりますね。
本投稿は、2018年05月21日 14時32分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。