非常勤講師と個人事業主の確定申告について
将来的に作家として活動していきたいと考えている者です。
確定申告の青色申告についてご質問があります。
現在、作家だけでは生活が不安な為、高校の非常勤講師として収入を得ながら作家活動しています。
非常勤講師としては、収入200万程給与があります。1年契約の時間講師ですので、国民健康保険に加入しています。今年で5年目です。
作家の収入は、今年以前まで作品収入はあったものの経費を差し引くと20万以下になったため開業しておらず、白色申告をしていました。
今年は、作家収入が非常勤講師と同額程になったため作家として開業をしました。作家収入は経費を引くと非常勤講師の収入の方が高くなりますが、確定申告は青色申告を行う予定でした。しかし、税務署で給与の他の収入が300万以下である場合は青色申告ではなく、副業として雑の収入と言われました。
この場合は、青色申告はできないのでしょうか?
今後は作家をメインの収入として活動していきたいと考えておりますが、知識不足で困ってます。
どうぞよろしくお願い致します。
税理士の回答

こんにちは。
税務署員が300万円の話をするのは…まだ時期尚早だと思いますが…。
2022/8/1に「「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募手続の実施について」として、雑所得の範囲に関する意見を国税庁が一般から公募しました。その中で、次のような記載があります。
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事業所得と業務に係る雑所得の判定について、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととします。
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この300万円ルールはちょっとしたトピックとして話題に上がっています。なお、今後、改正された場合には令和4年度の申告から適用される予定です。
ご質問者様の場合、人によって判断が分かれる気がします(つまり、確かに税務署の立場では「雑所得」と主張するかも、と思います)。個人的には事業所得としてチャレンジしてもいいのでは?と思います。

相談者様の場合、今後作品収入の方が本業になれば、収入金額に関わらず青色申告ができると思います。しかし、本業が給与所得であれば、作品収入の方は副業の形になり300万円以下の収入の場合は、雑所得(白色)での申告になると思います。

国税庁は「『所得税基本通達の制定について』(法令解釈通達)の一部改正(案)」について、「雑所得の範囲を明確化する」とし、「その所得がその者の主たる所得ではなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得として取り扱って差し支えない」と考えています。
これにより収入金額が300万円の規定をもって税務署から形式的かつ一方的に雑所得と認定されれば、青色申告の特典がないため青色申告特別控除や赤字の繰り越しがありません。また他の所得との損益通算が出来なくなってしまい、税負担が増えると懸念されています。
また国税庁は「(事業所得かどうかは)確定申告書と事業実態を見て総合的に判断することになる。300万円以下でも事業実態がある人は事業所得で申告してもらってもよい。有無を言わさず画一的に判断するものではない。」「反証として事業実態を示してもらえれば、従来通り事業所得として対応する。」と説明しています。
事業所得とされる判断基準は、最高裁では「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう」旨の判決があります。この判断材料としては取引の種類、取引における自己の役割、取引のための人的・物的設備の有無、資金の調達方法,取引に費した精神的・肉体的労力の程度、その者の職業・社会的地位などを検討する必要があります。
※最高裁昭和53年10月31日(第1審=大阪地裁昭和49年2月6日)
この基準によると正社員のたいていの副業は「雑所得」となります。事業と呼べるほど副業に時間や労力を費やしておらず、安定した収益は給料から得ており、生活費は給料でまかなっているという事になるからです。
貴方の場合、過去に非常勤講師としての給与収入が主たる生活費であり、それに比較して作家収入が従たる形となっていたため、税務署は副業扱いで雑所得として判断しているものと思われます。
ですが、将来的に作家として活動して作家収入をメインの収入としていきたいと考えておられ、おそらく作家として長年の文章研鑽や努力等を重ね、日頃の執筆活動に時間や精神的・肉体的労力等を傾け、様々な媒体で出版物や定期的な連載等が紹介されており、広く周知されて作家としての地位の確立しているなどの諸点を挙げることで、事業実態を理解してもらい「事業所得」として申告することが可能と思われます。
作家としての実態を確認証明できるような関係資料等を準備して、税務署で相談して頂くようにお勧めします。
お忙しい中ご回答頂き、誠にありがとうございます。先生方のご意見から青色申告で申告しようと思います。また、本日修正案についてニュースにもなっていたので安心しました。
ご丁寧に教えて頂き、誠にありがとうございました。
本投稿は、2022年10月04日 12時23分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。