生命保険契約に関する税務上の取り扱いについてのご照会
以下の件につきまして、税務上の取り扱いや申告の要否についてご確認させていただきたく、ご教示いただけますと幸いです。
【背景】
・被相続人の資金500万円を原資として、生命保険(保険料500万円)への加入を検討しております。
・この生命保険は、死亡保障を目的とした一時払終身保険を想定しており、特定の相続人1人が受取人となります
【確認事項】
1. 保険料500万円を被相続人の資金から支出する場合、受け取る保険金は贈与税・相続税の課税区分はどのように変わりますか?
2. 死亡保険金が300〜500万円程度である場合、遺留分侵害額請求の対象となりますか?
以上、実務的な観点からのご確認となりますが、今後の契約判断に向けてご助言いただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
税理士の回答
上田誠
【1. 税務上の取扱い(贈与税・相続税の区分)】
生命保険契約における課税関係は、「保険料の負担者」「被保険者」「保険金受取人」の関係によって決まります。
今回のケースでは次のような関係です。
• 保険料負担者:被相続人
• 被保険者:被相続人
• 保険金受取人:相続人の1人
この場合は、相続税の課税対象になります。
理由は、被相続人の死亡によって支払われる保険金であり、死亡により取得する財産(=みなし相続財産)とされるためです。
(相続税法第3条第1項第1号)
したがって、保険料が被相続人の資金から支出されている限り、
受取人である相続人が受け取る保険金には「相続税」が課されます。
贈与税の対象とはなりません。
【補足】
もし保険料を相続人自身が負担していた場合には、被相続人の死亡時に保険金を受け取っても「贈与」ではなく「一時所得」として所得税の対象になります。
しかし、本件では保険料負担者が被相続人であるため、所得税でも贈与税でもなく相続税の対象です。
【2. 遺留分侵害額請求の対象となるか】
死亡保険金は、法律上は「相続財産」ではなく「受取人固有の財産」とされています(最高裁平成16年10月29日判決など)。
ただし、相続人の一部にのみ有利に支払われる場合には、
「特別受益」とみなされ、遺留分算定の基礎財産に含めることがあります。
したがって、以下のように整理されます。
• 保険金が特定の相続人に偏っており、他の相続人とのバランスを欠く場合
→ 遺留分算定の基礎財産に含める(遺留分侵害額請求の対象となり得る)
• 保険金の金額が小さく、全体の遺産に比べて不相当でない場合
→ 遺留分侵害の対象とはならない可能性が高い
つまり、「死亡保険金300~500万円程度」であり、
被相続人の他の財産規模が比較的大きい(例:数千万円以上)場合は、
遺留分侵害とまでは判断されにくいです。
一方で、遺産全体が同程度しかない場合は、遺留分争いの対象になる余地があります。
【3. 実務上の対応ポイント】
1. 保険料を誰が負担するかを明確にしておく。
(被相続人の資金を使う場合は相続税の対象)
2. 保険金受取人が特定の相続人である場合、他の相続人への説明や遺産分割方針を事前に整理しておく。
(相続人間トラブル防止のため)
3. 相続税の計算上は、生命保険金のうち「500万円 × 法定相続人の数」までは非課税枠があるため、
複数の相続人がいる場合は一部または全額が非課税になることもある。
被相続人の資金500万円を原資として、生命保険(保険料500万円)への加入を検討しております。
とはすでに相続された500万円の現預金を生命保険料に充てることを検討していると読み取れますがそれでよいですか。
それとも相続は開始されておらず、被相続人ではなく予定被相続人という意味ですか。
本投稿は、2025年10月24日 11時54分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







