個人が法人に対して有している債権の放棄について
私は会社を経営しております。会社の資金繰りが厳しく、私個人の資金を会社に貸付けております。ただこのままだと、相続の際、財産として課税されてしまうので、債権を放棄しようと思っています。ただ、法人税の規定で債権の放棄(貸し倒れ処理)には
「債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合」が必要とあります。
1、贈与税との関係もありますが、個人が債権放棄する際にも上記の貸し倒れの要件が必要になりますか?個人なので、極端な話、返済できたとしても、債権放棄しても構わないのかなと思っています。個人で債権放棄した場合は、当然、法人の方では、債務免除益を計上すればいでしょうか?否認される可能性はあるのでしょうか?
2、法人に繰り越し欠損金があった場合、上記の債務免除益と相殺は可能でしょうか?個人で行った債権放棄が、法人側の債務免除の有効性、税務上否認される可能性はあるのでしょうか?
以上よろしくお願いいたします。
税理士の回答

1 債権放棄は可能ですが、他に同族の株主がいると、みなし贈与のリスクがあります。
2 法人は債務免除益を計上しますが、繰越欠損金があれば、相殺できます。
文面から分かる範囲内でお答えいたします。
1、贈与税との関係もありますが、個人が債権放棄する際にも上記の貸し倒れの要件が必要になりますか?
この場合は債権放棄する旨の文書を会社に差し入れれば可能かと思います。
個人で債権放棄した場合は、当然、法人の方では、債務免除益を計上すればいでしょうか?
会計処理はその通りになります。
2、法人に繰り越し欠損金があった場合、上記の債務免除益と相殺は可能でしょうか?
期間内(平成30年3月31日までに開始する会計期間に発生したものなら9年、4月1日以降に発生したものなら10年)のものでしたら相殺は可能です。
ただし、他の株主がいる場合、株式の価値があがるので、その他の株主に贈与税が発生する可能性があります。この点はご留意下さい。
お役に立ちましたでしょうか。

「貸し倒れの要件」は法人が保有する債権を貸し倒れ処理するときのものですので、今回のご相談では全く影響ありません。
相談者様の貸付債権を消滅させるには、相談者様が会社に対して債権放棄通知書を差し入れて、会社が次の会計処理を行うことで実行できます。
(借方)借入金 ××× (貸方)債務免除益 ×××
上記の債務免除益は会社にとっては益金となりますので、法人税等の課税対象になります。
しかし、債権放棄した事業年度が赤字であったり、税務上の繰越欠損金がある場合には、その欠損金等の範囲内であれば法人税等の負担は回避できます。
上記の一連の取引に関して必要書類を整備して会社で適正な会計処理を行っていれば、否認されることはありません。弊社のお客様でもよく行っています。
但し、お二人の先生方からご指摘がある通り、債権放棄することで会社の株価が上がることが考えられます。会社の株主が相談者様一人であれば問題ありませんが、他にも株主さんがいらっしゃる場合には事前に専門家にご相談のうえ実行されることをお勧め致します。

DESを実施し、資本に振り替えてしまうのも一案ですね。この場合、出資時の時価等、いくつか論点がありますので、実施の際には事前に税理士への相談が必須となりますが。
貸付金が株式に代わり、株価の価値は債務超過に近ければ、株価の評価額も少額でしょうし。均等割り等増加する場合もありますので、全体を見ての判断となりますが、選択肢の一つとしまして。
ご丁寧な回答ありがとうございました
本投稿は、2018年05月21日 22時06分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。