空室建物引き渡しの仕入れ税額控除
今回決算期末に建築請負工事完成に伴い引き渡しを受けましたが、決算期を超えた引き渡し翌月の中旬から入居がきまりました。
この場合、減価償却費は今回の決算期段階では空室であったため計上できないと思うのですが、仕入れ税額控除は引き渡しを受けた今回の決算で行ってよいのでしょうか
税理士の回答

税理士の田中智之と申します。
最初に消費税の仕入税額控除の時期について説明させていただきます。
課税仕入れは、事業者から資産を譲り受けるということですので、譲り受け=資産の譲渡の時期がいつかがポイントになります。
建物の建築請負工事に関しては、建物が完成して引き渡した時に資産の譲渡があったものと考えます。「引き渡した」かどうかは、作業の進捗状況、代金の決済状況、登記の有無等で判断します。
決算期末までに作業がほぼほぼ完了(軽微な作業を残すのみ)し、代金の決済が完了し、登記も済んでいれば今期に仕入税額控除することになります。
次に減価償却費の計上開始時期ですが、資産を取得した時点からではなく、事業の用に供した日=使用を開始した日からになります。消費税法と考え方が異なり、売上との対応関係が絡んできます。
収益物件については、募集を開始して入居可能になる日から減価償却費の計上ができます。例えば4月1日から入居可能ということであれば、空室であっても4月から減価償却費を計上することができます。
田中先生ご丁寧なご回答ありがとうございました。大変よくわかりました。

減価償却費の計上時期は翌期からで問題ありません。
仕入税額控除の時期について補足させていただきます。
この論点で国税不服審判所の裁決事例で、平成24年7月24日裁決が一番分かりやすいと思います。これは、仕入税額控除の時期で税務署が更正処分をしたのですが、裁決で税務署の処分を取り消した事例だからです。
この事例の概要です。
①設立事業年度(平成20年3月31日が決算日)に課税仕入れしたと申告し たが、税務署側から2期目に課税仕入れしたと更正処分。
②平成20年3月3日新築の保存登記、3月11日引き渡し、3月21日代金完済
同日抵当権設定
③施工業者は平成20年3月31日決算において本件工事の売上計上済
不服審判所の判断です。
「平成20年3月3日の時点で、本件建物は外壁及び屋根により外気と分断され、コンクリート基礎により土地に定着し、共同住宅用建物の用途に供し得るだけの構造を備えていたことからすれば、同日時点で、本件建物の大部分は完成していたこと、また、請求人とK社は、本件建物が完成したとして本件建物の引渡しを合意し、K社は、同日付で本件建物を請求人に引き渡したことが認められる。」とあり、課税仕入れの時期としては、建物の完成度合い、施工業者との引き渡しの確認、登記の有無、代金支払いの状況などで判断されます。
ですので、質問者様の物件について決算日前に上記の点が完了しておられましたら、消費税法上は今回の決算において仕入税額控除を行って差し支えないと考えます。
先生承知しました。ご丁寧にありがとうございます
本投稿は、2020年03月08日 08時41分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。