短期前払費用の新税率適用について
かなり長くなっていまいますが、お付き合いいただけないでしょうか?
税務関係の雑誌に法人税の短期前払費用の取扱を適用している場合において、短期前払費用に新税率適用分が含まれている場合の処理として①仮払金として翌期に繰延べる方法と②一旦、施行日以後の期間に対応する部分も含めて5%の税率を適用して仕入税額控除をして、翌期に仕入対価の返還を受けたものとして処理したうえで、改めて8%の税率を適用して仕入税額控除をする方法が紹介されていました。
具体的には次のようなケースが紹介されていました。
契約日:25年10月末日
賃貸期間:25年11月1日~26年10月31日
賃料:25年11月1日~26年3月31日 500,000円(消費税5%・25,000円)
26年4月1日~26年10月31日 700,000円(消費税8%・56,000円)
支払日:25年10月末に1年分支払う
①仮払金として翌期に繰延べる方法
(26年3月期)
消費税の計算は5%の税率適用分についてのみ仕入税額控除
賃借料 1,200,000 / 現金 1,281,000
仮払消費税 25,000 ←5%:11月~3月 /
仮払金 56,000 ←8%:4月~10月 /
(27年3月期)
消費税の計算は8%による仕入税額控除
仮払消費税 56,000/仮払金 56,000
②仕入対価の返還による処理
(26年3月期)
賃借料 1,220,000/現金1,281,000
仮払消費税 61,000/
※ 税込1,281,000×5/105=61,000・・・仮払消費税
税込1,281,000-61,000=1,220,000・・・賃借料
(27年3月期)
賃借料 700,000/賃借料 700,000
仮払消費税 56,000/仮払消費税 36,000
※前期において5%の税率で仕入税額控除を行った平成26年4月1日以後の期間に対応する部分を仕入対価の返還を受けたものとして処理し、改めて8%の税率を適用して仕入税額控除する。
・仕入対価の返還
税込756,000×5/105=36,000・・・仮払消費税
税込756,000-36,000=720,000・・・賃借料
弊社の場合は②の方法を採用しようとしています。
ここで質問なのですが、ここまでは支払側の処理を書きましたが、受取側はどう考えればよいでしょうか?
例えば②を採用した場合で、今度は弊社が受け取り側になった場合です。
具体的には商標使用料をもらっています。
契約日:25年10月末日
期間 :25年11月1日~26年10月31日
使用料:25年11月1日~26年3月31日 50,000円(消費税5%・2,500円)
26年4月1日~26年10月31日 70,000円(消費税8%・5,600円)
今まで弊社ではこれを10月に次のように一括計上しており、金額が低いので前受収益は計上しており
ませんでした。
現金 / 雑収入
/ 仮受消費税
そもそも一括計上すること自体が間違えているのでしょうか?
そして、今回の増税時の対応ですが、上記②の受け手側ということで次のように処理してもよいのでしょうか?
(26年3月期)
現金 128,100/雑収入 122,000
/仮受消費税 6,100
(27年3月期)
雑収入 72,000/雑収入70,000
仮受消費税 3,600/仮受消費税5,600
この雑誌には②の処理の受け手側については一切書かれておらず、次のような前受収益での処理が紹介されていました。
(26年3月期)
現金128,100/雑収入 50,000
/仮受消費税 2,500
/前受収益 75,600←70,000×1.08
(27年3月期)
前受収益 75,600/雑収入 70,000
/仮受消費税5,600
先に書いたように弊社では前受収益は計上せず、一括で収益計上しているので、増税時だけ前受収益計上すると27年3月期は26年3月期に計上した前受収益の振替分と27年10月に計上する向こう1年分の収益で19か月分の収益を計上してしまうことになるので、この処理は弊社にはよくないのではないかと思っています。
少額なのでここまで意識する必要はないのでしょうか?
ちなみにこの雑誌ですが税務関係の代表的な雑誌なのでまったくピントが外れたことを書いていることはないと
思います。
以上長々と書いてしまいましたが、よろしくお願いいたします。
税理士の回答
貴殿がお読みの税務関係の雑誌は、恐らく私が読んでいるものと同じものと思いますが、確かに支払い側のみの解説に終始しています。
これは短期前払費用を法人税法において損金計上を認めているため、その処理をしている場合の消費税の対応を明らかにしているものと思います。(今週号にも追加の記事が詳細に掲載されていました。)
受け取る側に関しては、あくまでも原則論で考えるものと思われます。
すなわち、消費税の課税売上は、資産の譲渡・貸付、役務の提供等が行われた時に発生します。仮に前受金の収受があった場合には、前受金の受け取り時にかかわらず現実に課税資産の引き渡しや役務提供をした時が課税資産の譲渡等の時期となり、課税売上の発生と考えます。
したがって、御社の場合にも当期末までの分が雑収入、翌期の分は前受金として処理すべきと思います。
今後、10%に再度改正される予定もありますし、これを機会に原則的な処理に変更されてはいかがでしょうか。
今まで前受時に全額を収益計上して申告されていたとのことですが、早めに収益計上して、その分早めに納税されているわけですから、消費税の改正がない状況下においては税務署的にはあえて問題とはならなかっただけだと思います。
本投稿は、2014年06月16日 18時00分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。