個人所有のアパートの建物のみを法人に売却した後の地代について
この度はお世話になります。
私個人で所有しているアパートの建物のみを私が役員を務める法人に売却することになりました。
土地は私の所有のままですので、通常なら借地権が発生し、法人から私にかなりの金額を支払うことになり、私が課税されてしまいます。
これを防ぐために、土地の無償返還に関する届出書を提出するのがよいことを知りました。
提出後のことで教えて頂きたいことがあります。
地代として土地の固定資産税相当額を法人から個人に支払うのが良いという記載もあれば、固定資産税相当額は少なすぎるのでその2.5倍は支払うべきという記載や、全く支払わなくて大丈夫という記載もありました。
どれが正しいのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
税理士の回答

小野陽祐
無償返還に関する届出書を提出した後の地代について明確な規定はありません。私見としては固定資産税相当額以上で法人税と所得税のバランスを考えて任意に金額を決定すればよいと思います。地代が多ければ会社の所得と法人税額は減り、個人の所得税額は増えます。以下に説明する使用貸借の定義から固定資産税相当額は使用者である会社が負担するべきものであり、会社では経費とし、貸主としては本来的に負担するべきでないので収益には該当しないものだと思います。(仮に個人で収益にした場合は、支払った固定資産税が経費となり結果は所得0円)
土地の貸借には賃貸借と使用貸借があり、使用貸借の定義としては、民法593条と595条1項を合わせ読んで、授受される地代がその土地の固定資産税相当額以下、と解釈され、諸費用は使用者が負担するべきものとされています。賃貸借は特に定義はありませんが、上記使用貸借よりも多く地代を払えば賃貸借でしょう。
相続税評価額についても、使用貸借にあたるのか、賃貸借にあたるのかで扱いが少し異なります。使用貸借の場合、個人の土地として自用地評価(100%)で、会社の借地権は0円となります。賃貸借の場合、個人の土地の評価は自用地評価の80%、会社資産として残りの20%が評価されます。一般的には少しでも会社の財産とした方が相続税評価額としては有利になりますのでこの観点からは賃貸借とした方が有利です。
小野陽祐先生
大変わかりやすく教えて頂きありがとうございました。
使用貸借ではなく賃貸借にするため、ちょうど固定資産税の額に設定したいと思います。

小野陽祐
言葉足らずですみません。
固定資産税相当額を使用者が負担するのは使用貸借でも賃貸借でも当然だと思うのです。
固定資産税相当額ちょうどで賃貸したら使用貸借と認定されると思いますので、賃貸借にしたいならば、固定資産税相当額に毛の生えた程度でも上乗せした地代が適切なのではないでしょうか。
小野陽祐先生
1.5倍から2倍で設定したいと思います。
ありがとうございました。
追加で質問させて頂きます。
地代が固定資産税相当額以下の場合は使用貸借、それより多ければ賃貸借と考えられ、賃貸借にした場合のメリットは、相続税を減らせる(土地の評価が80%)点であると教えて頂きました。
まだ私は若いので当分は相続のことを考慮せず、私個人の課税を少なくするために、地代を固定資産税相当額にして使用貸借にしておき、私がある程度の年齢になれば地代を増やして賃貸借に契約変更するという方法はいかがでしょうか。
何か問題点や気をつける点などアドバイス頂けましたら幸いです。

小野陽祐
ご記載の方法で問題ないと思います。
賃料を途中で改定することは何も不自然なことはありません。
例えば、退職を機に賃料を上げるなんてのもよいかもしれません。
他での所得が少なければ、所得税率も低く抑えられます。
退職を機に賃料を上げるのは良さそうですね。
大変丁寧にわかりやすく教えて頂きましてありがとうございました。
本投稿は、2015年08月21日 10時48分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。