非居住者の源泉徴収について
今年8月末に台湾へワーキングホリデービザで1年間渡航予定、その際日本の住民票を抜く予定の者です。
今回日本の企業と業務委託契約にて翻訳の仕事を請け負うことになり、企業担当者から「日本国内在住の場合は源泉徴収で10.21%、海外在住(非居住者)の場合は20.42%を源泉徴収として報酬から差し引く」との連絡がありました。翻訳の報酬については著作権や使用料の関係で源泉徴収が必要だということが分かりましたが、居住地が台湾の場合、租税条約(取り決め)により減免を受けることは可能なのでしょうか。また減免を受ける場合の対応事項や申請方法についても合わせてご教示いただけますと幸いです。
ちなみに現在、①日本の企業で正社員として勤務(8月末退職予定)②台湾の企業との業務委託の2つの仕事で収入があります。②の報酬についてはこれまで台湾の税金が差し引かれた状態で国際送金されていたので、確定申告の際に外国税額控除を申請してから追加納税をしてきました。今年1月から8月末までの収入に関しては、出国前に準確定申告をするという認識で間違いないかもご教示いただけますと幸いです。
諸先生方のご回答をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。
税理士の回答

米森まつ美
1 軽減等について
台湾とは「租税条約」が締結でず、「相互免除法」により、軽減等が出来ることになりました。
相互免除法では、著作権の使用料に該当する場合は10%の軽減、著作権の譲渡に関しては非課税となっています。
会社(報酬の支払者)との契約をご確認ください。
※国税庁HPから関連のパンフレットを添付します。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi.pdf
減免等を受ける際の様式も添付します。
2部作成し、会社を通じて会社の所轄の税務署に提出します。
1部は税務署、1部は会社保存となりますので、会社の控えのコピーを頂くようにしてください。
使用料の場合https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/pdf2/ts326-5.pdf
譲渡の場合
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/sogomenjo/10.htm
2 準確定申告について
貴方が出国の翌日から日本の非居住者に該当する場合で、納税管理人の届出書を提出しない場合は、出国前までに準確定申告を提出します。
納税管理人を置いた場合は、通常の確定申告時期に納税管理人が確定申告を行います
3 非居住者・居住者の確認
貴方が日本の非居住者となるか否かは、できましたら会社を通じて、会社の所轄税務署に確認されることをお勧めいたします。
※ 源泉徴収の有無も併せて、「源泉徴収義務者=報酬の支払者」の所轄税務署が管轄となるため。
通常ワーキングホリデーは、訪れた国の知見を深めるため、通常の観光ビザよりは長い期間その国に滞在し、かつ、滞在期間中の生活費などを賄うための就労が認められる制度であると考えられます、
そこでその就労は短期間契約のものであると推察できるため、出国時に相手国に「継続して1年以上居住することを通常必要とする職業」を有していると考えられません。
そのため、例えワーキングホリデーのビザが1年以上であっても、相手国に1年以上居住するまでは、日本の居住者に該当すると考えられます。ただし、状況に寄って判断が分かれることもあるため、一旦、会社を通じて税務署に確認されることをお勧めしています。
※ 住民票の有無は、判断の参考にはなりますが、絶対ではありません。
国税庁HPから
「住所の推定」という説明箇所を添付します。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875-1.htm
「居住者・非居住者の区分」の説明箇所も添付します
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875.htm
この度は、丁寧にご回答くださいまして誠にありがとうございました。
住民票を抜くことと非居住者として扱われることを混同しておりましたが、自分の中で整理することができました。手続き等に関するURLのご提示もありがとうございます。
厳密にいうと台湾のワーキングホリデービザは申請時に滞在日数180日で発行され、渡航後の再申請により更に180日滞在日数が延長される仕組みだそうで、合わせて最大360日の滞在が可能であることがわかりました。そのため住民票を抜いて渡航する場合でも、居住者として日本で確定申告が必要なのではないかという結論に自身の中で至りました。
現在既に業務委託契約を結んで業務を行っている台湾の企業に問い合わせたところ、台湾で業務を行う(ビザを所持して台湾で業務する)ことから、9月以降に関しては台湾居住者としての税率に変更になるとのことです。
また、これから業務委託契約を結ぶ日本の企業(翻訳業)にも問い合わせたところ、10%の減免が受けられるとのことで確認が取れました(日本に納税する場合は減免は関係ないかと思いますが)。
重ねてのご質問となり大変恐縮ですが、先生からのお話を踏まえ、
①2023年1~8月に勤務した日本企業(正社員)の給与、2023年1~8月に受け取った台湾企業との業務委託報酬、日本企業(翻訳)との業務委託報酬については、居住者として日本の確定申告(+おそらく追加納税)※日本に両親がおりますので、納税管理人として届け出ようと思います。
②2023年9~12月に受け取る台湾企業との業務委託報酬については、台湾での申告手続き
という認識で間違いございませんでしょうか。
改めまして、この度の先生のご回答に感謝申し上げます。

米森まつ美
回答します
日本においては、1年を経過する日までは日本の居住者に該当することになります。
そのため、仮に9月に180日のビザが発給されても日本の居住者としての申告・納税義務を有することになります。
ビザはあくまでも、その間滞在することが許されているだけのものであるため、ビザの発給を持って日本の「非居住者」に該当することにはなりません。
台湾の税法では、180日(183日?)以降は、台湾の居住者として取り扱われるとのことですが、そうしますとこの場合「双方居住者」となるため、協定の内容で、どちらかの巨樹者に該当するかを確認しないといけません。
双方居住者に該当する場合、どちらかの「居住者」になるか判断しないといけません
協定の第4条第3条に、双方居住者は次によりその地位を決定するとして、どちらかの国の居住者となるか判定しないといけません。
(a) 個人は、その使用する「恒久的住居」が存在する地域の居住者とななります。双方の地域内に有する場合は、当該個人は、その人的及び経済的関係のより密接な地域(重要な利害関係の中心となる地域)の居住者とみなされます。
(b) その重要な利害関係の中心がある地域を決定することができない場合又はその使用する恒久的住居をいずれの地域内に有市内場合には、その有する常用の住居が存在する地域の居住者とみなします。
(c) その畳用の住居を双方の地域内に有する場合又はこれをいずれの地域内にも有しない場合は、当該個人は、当該個人が国民又は市民である地域の居住者とみなします。
国税庁HPから、協定のリンクを選択しても残念ながら、ページが更新されたらしく、リンクを紹介できず申し訳ありません。
結論を言えば、貴方は1年を経過するまでは日本の居住者となり台湾の非居住者に該当すると考えられます。
台湾の課税は、業務委託の内容が、「自由職業(事業所得)」となるのか「人的役務の提供」となるのか、「著作権の使用料」に該当するかにより台湾での取り扱いが異なります。
なお、事務所を台湾で設けた場合は、183日を超えた時点で台湾での申告義務が生じると考えらえます。
ただし、台湾での具体的な課税は台湾の課税当局にご確認ください。

米森まつ美
ご質問の回答として
① 2023年1~8月に勤務した日本企業(正社員)の給与、2023年1~8月に受け取った台湾企業との業務委託報酬、日本企業(翻訳)との業務委託報酬については、居住者として日本の確定申告(+おそらく追加納税)※日本に両親がおりますので、納税管理人として届け出ようと思います。
⇒ 日本の居住者に該当すると思われますので、12月までの所得が申告納税の対象となります(全世界課税)
そのため、給与は1月~8月(正社員)、業務委託は日本及び台湾企業とも1月~12月分までの所得が対象となります。
なお、日本の「非居住者」に該当する場合は、ご理解のとおりですが、著作権の使用料に関して「届出書」を提出する必要があります。
② 2023年9~12月に受け取る台湾企業との業務委託報酬については、台湾での申告手続きとなる。
⇒ 台湾の「国内源泉所得」が対象となります。(非居住者として)
なお、もしも台湾の居住者に該当する場合は、台湾で全世界課税となりますので、日本企業との業務委託にかかる報酬も課税の対象となると考えられます。
再度確認しなければいけないことがあります。
台湾の企業様が、「180日を超えると居住者となる」と判断されたのでしょうか。
それとも、「業務を請け負っている」ことから、台湾非居住者の「国内源泉所得」に該当するとして「課税される」と説明をされているのでしょうか。
協定の第5条では、恒久的施設(住居ではない)には
事務所なども含まれており また
企業が行う役務の提供であって使用人その他の職員又は者を通じて行うもの(183日を超える一定期間行うもの)とされています。
そして、事業利得(第7条)は「恒久的施設」を通じて行う場合課税をすることが出来るとなっています。
183日を超えるので「恒久的施設」を有していると認定され、事業利得として課税されるということなのでしょうか。
課税となる「根拠」をご確認ください。(正確には台湾の課税当局に確認が必要となります)
前述のとおり、私は貴方は日本の居住者に該当すると考えましたが、台湾の企業の方が「日本の非居住者」「台湾の居住者」であるとの考えの場合は、念のため貴方の所轄の税務署に、事前予約の上相談をされることをお勧めいたします。
本投稿は、2023年05月30日 21時39分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。