非移住者の支払うべき税金とは
はじめまして。松岡と申します。私は現在、フィリピンに3年住んでいます。フィリピンに来る前に海外転出届を役所に提出しています。
現在、フリーランスとしてオンラインで日本の会社と仕事をしたいと思っています。その際、日本とフィリピンの租税条約によると、どちらかの国に税金を支払う義務があると記載されていました。もし、私が日本に税金を納めるとしたら、所得税のみ日本に納めたらいいのでしょうか。その他に納める税金はあるのでしょうか。
また、私は現在フィリピンで正社員として勤務しています。なので、その場合だと、フリーランスとして稼いだお金の分の税金を、日本ではなくフィリピンに納税した方がいいのでしょうか。(正社員として働いている分の給料の税金はフィリピンの会社が私の代わりにフィリピンに納税してくれています。)
もし、フリーランスとして稼いだお金の分の税金を、フィリピンに納めるべきなのであれば、毎回、日本の会社から報酬を頂くたびに、源泉徴収分は差し引かないで欲しいとその都度、各日本の会社に伝えるべきなのでしょうか。
お忙しいとは思いますが、どうぞお返事よろしくお願いします。
税理士の回答

米森まつ美
回答します
貴方は、日本の非居住者、フィリピン(比国)の居住者に該当すると解されます。
日本の非居住者は、日本に「源泉」のある所得(国内源泉所得)のみ課税され、同じ所得に対して比国にも課税されますので、その場合は二重課税防止(租税条約)として、比国で外国税額控除されます。
※比国の税制はこちらでは不明なため、比国の税務当局でご確認ください。
貴方と日本の会社との契約が、どのようなものに該当するかにより、日本の国内源泉所得に該当するか否かが分かれます。
まずは、どの「国内源泉所得」に該当するかご確認ください。
国税庁HPから「源泉徴収のあらまし」の7枚目(P270)の表を参考にご判断ください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2020/pdf/12.pdf
もしも、貴方の報酬の内容が「著作権等の使用料」に該当するものの場合には、国内法上は20.42%の源泉徴収を要しますが、日本国と比国との間の租税条約上においては、税率が10%に軽減されています。
国内法の税率に比べて、免税や軽減をされている場合は、報酬が支払われる前に支払者を通じて「租税条約の届出書」を提出することにより税率の免税・軽減が受けられます。
※平成20年に日比租税条約は改正になっており、使用料の税率が記載されていますので参考にしてください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nichi_hi.pdf
国税庁HPから、「租税条約の届出書」の掲載箇所を案内します。
所得によって、提出する書類が異なりますが、「使用料」の場合は
「5 様式3」が該当します。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/mokuji2.htm
雇用契約等にかかる「給与」に該当する場合は、貴方が日本の会社から「役員給与」として得るものでない場合は、原則、日本での勤務部分が「国内源泉所得」になり、日本で課税されます。
「源泉徴収のあらまし」44枚目(P307)~を参考にしてください。
おはようございます。大変ご丁寧にご返信して頂きありがとうございます。
分からない箇所を再度、質問させて下さい。
前置きの情報として、私は非居住者で、日本国内に事業所や資産などを持たず、海外で業務を行い、モノやサービスのやりとりがすべて日本国外で完結します。
もしも、貴方の報酬の内容が「著作権等の使用料」に該当するものの場合には、国内法上は20.42%の源泉徴収を要しますが、日本国と比国との間の租税条約上においては、税率が10%に軽減されています。
→どういった場合に"「著作権等の使用料」に該当する"のでしょうか。
私はフリーランス向けWebサイトを通してWebサイトの制作の案件を獲得し、日本の依頼者から報酬を頂こうと思っています。この場合、上記のものに該当するのでしょうか。
国内法の税率に比べて、免税や軽減をされている場合は、報酬が支払われる前に支払者を通じて「租税条約の届出書」を提出することにより税率の免税・軽減が受けられます。
→もしも、私が免税を受けられる場合、私が支払者(依頼者)に下記の書類を報酬日前に、在住国のフィリピンからオンラインで支払者に提出したら良いのでしょうか。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/1648_41.htm
書類名:租税条約に関する届出書(使用料に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除)(PDFファイル/1,175KB)
もう二点、追加で質問させて下さい。
正直、フィリピンに納税する事に不安を感じます。(要因:言葉の壁や法律の難しさなど)また、フィリピンは居住外国人への税率が高い事を下記のWebサイトから知りました。
https://www.philesson.com/tax-philippines/
よって、報酬を頂く際に日本の依頼者に源泉徴収を差し引いて頂き、その分を日本で確定申告する事は可能なのでしょうか。
また、もし日本で確定申告出来る場合、日本もしくはフィリピン、どちらで確定申告する方が節税出来るのでしょうか。
お忙しいとは思いますが、ご解答どうぞよろしくお願いします。

米森まつ美
回答します
先に、最後の二点の質問にお答えします。
① 源泉徴収が必要な所得の場合は源泉徴収を行います。
「資産の譲渡」による所得の場合が源泉徴収の上、確定申告になります。
「使用料」の場合は源泉分離課税となりますので、源泉徴収にみとなり、確定申告はできません。
(源泉徴収のあらましの7枚目の表をご確認ください)
「譲渡」と「使用料」については、後ほど説明します。
② 節税について
貴方が日本の非居住者であり、日本国内に支店などの恒久的施設を有しない者となりますので、日本の居住者のように確定申告等で課税を完結することはできません。
そして、居住地の課税権を侵害することは残念ながらできません。
そのため、「どちらで確定申告する方が節税できるか」に関しては、「選択できることではありません。」という回答になります。
③ 著作権の使用料に該当するか
契約内容を確認しないと一概に申し上げることはできませんので、考え方のみお伝えします。(契約内容を確認して判断するような場合は、無料相談の範疇を超えてしまいます)
WEB制作の報酬ということであれば、その制作物には「デザイン」等も含まれるため、その制作された物は「著作物」になると思われます。その上で、著作物には著作権が生じます。
貴方のお仕事の報酬が、著作物の作成で、かつ、その著作物にかかる「著作権」を、日本の企業に譲渡する場合は日比租税条約第13条(5)において免税になります。
しかし報酬が、その著作物の利用状況によって決まる場合等は日比租税条約第12条の「使用料」に該当し10%の源泉分離課税(軽減)となります。
いずれにしても、「租税条約の届出書」の提出が必要になりますし、日本の会社が「源泉徴収義務者」となりますので、契約内容を日本の会社から所轄税務署に確認されることをお勧めします。
④ 提出方法
以前は、提出者のサインが必要でしたが、現在は必要がなくなっていますので、「租税条約の届出書」をオンラインで支払者の方(会社)に提出することは可能です。
支払者の方には、報酬の支払前に所轄税務署に提出するようにお伝えください。
米森先生
大変分かりやすくご説明していただきありがとうございました。
クライアントの契約をまずはしっかりと確認したいと思います。
この度は誠にありがとうございました。

米森まつ美
ベストアンサーをありがとうございます。
契約内容を確認され、クライアントともよく打ち合わせをされた上、適切な手続きをおすすめください。
本投稿は、2021年08月21日 20時32分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。