新築の賃貸建物を購入した場合の建物と建物附属設備の取得価額の区分方法について教えてください。
平成28年3月に新築マンションを一室購入しました。
賃貸で貸しているので、確定申告をしています。減価償却費の計算を今までは建物1本にしていますが、税金対策の為に今後は建物と建物附属設備に区分できたら、と思いました。
しかし建物及び建物附属設備の購入代価等が売買契約書等で区分されておらず、不動産会社に問い合わせても、工事費割合を出していないとの事で固定資産評価額での按分もできません。
このような場合、他に方法がありましたら教えて頂きたいと思います。
税理士の回答

新規購入される分ではなく、購入済み、かつ、いったん、資産按分し、減価償却済みのものを償却されるのですね。
そもそもの按分が誤りであったとして。
であれば、更正の請求をし、税の還付も受ける。
その場合、説明責任を負うことになりますが、建物付属設備の割合も明確なものは無い。
その場合は、なかなか難しいのかとは存じます。
新築物件であれば、おおむね、概要もわかりますので按分は出来るでしょうし、中古物件でも賃貸を開始する際のタイミングであれば、仮にそれが誤りであり、当初按分割合を合理的な説明ができれば、立証責任は課税庁にありますので、付属設備の割合がどの程度か、大まかなものでも税務上のリスクは相対的に低く、現実的な対応とされるのも一案です。
ただ、一度按分したものを変更する場合の立証責任は、申告者の方にあり、立証責任があると、仮に税務訴訟等になれば立証責任を負う方が大きな負担を負うことになりますし、様々な問題が生じることが想定されます。
よって、変更はしない、というのが無難かとは存じます。
なお、それらを踏まえて、それでも勝負してみよう、という場合、施工業者に聞いてみる、可能であれば、根拠資料ももらえないか確認してみる、というのがよろしいのかと存じます。
実際の施工状況等が確認できない場合に、一般論として、といった物件の特色に応じた検討をされることになりますが、それらであれば説得力としては乏しいものがあるのではないか、とも思われます。

見積書などで明細がわかれば、建物と建物附属設備に区分が可能です。
過年度分はそのままにして、平成30年分から、正しい資産に変更して、減価償却費を計上してください。

次の優先順位で分けましょう。
① 見積書や建築業者が出す原価証明書など、実物についての客観的資料
② あくまで、①がない場合のみ、当該物件にかかる固定資産税を司る役所に、再取得費評点数なる資料があります。固定資産税の納税義務者(その年1月1日の所有者)であれば教えてくれます。その点数が、天井、床などの建物本体と、冷暖房設備などの付属設備と別れている場合がありますので、その比率で建物取得価額を按分しましょう。

(追加情報)
私自身に確信はありませんが、友人の税理士によると、付属設備2割までなら否認はされないとのことです。

不動産会社に問い合わせをして、マンション本体、電気設備、給排水設備、衛生設備、空調設備、運搬設備等のおおよその金額を教えてもらうしか方法はないと思います。
不動産会社がわからなければ、建築した施工業者に確認し、おおよその金額や割合がわかると思います。
建物と建物附属設備の取得価額の具体的な区分方法については、税法や通達においては明確な基準が設けられていません。実務で参考になるものとしては過去の国税不服審判所の裁決(平成12年12月28日裁決)で示した区分方法がありますが、実際にその方法で区分するのは非常にハードルが高いと思います。
http://www.kfs.go.jp/service/JP/60/17/index.html
具体的には、建築工事に係る資料を基に工事費の割合から区分するとされています。
区分の計算方法が大変だからといって、金額の根拠なく強引に分けるのは問題があると思います。

税理士同士の討論会になってもよろしいでしょうか。
服部先生、平成13年2月19日の名古屋国税不服審判所の裁決(タインズコードF0-1-531)に下記のようなものがあります。
ズバリ、この方法で行けると考えておりますが、いかがでしょうか。
私も、後ほど、服部先生の挙げられた裁決を検討してみます。
いずれにしても、鉄筋の場合などは特に、本体と付属設備が分けられられると納税者にとっては当面はかなり有利で、税理士としてはできればアドバイスしたいところですね。
〈記〉
鉄筋鉄骨コンクリート造等のマンションの場合には、建物本体及び建物附属設備を区 分して、それぞれの耐用年数により減価償却費の計算をする必要がある。このことから 、建物附属設備の取得価額を建物本体の取得価額に含めたところで減価償却費を計算し たとする原処分庁の主張は採用できない。
7 建物の取得価額を建物本体及び建物附属設備に区分する方法については、①販売会社 又は建築会社が作成した譲渡原価証明等に基づいた建物本体及び建物附属設備の価額の 割合による方法、あるいは、②公的機関が物件ごとに算出した再建築費評点数算出表に おける構造別の再建築費評点数の割合により区分する方法が合理的と認められる。中古 資産については、新築時から請求人の取得時までの損耗等を見込んでその割合を補正す る必要がある。 裁決年月日 H13-02-19 コード番号 F0-1-531
回答ありがとうございます。
再度、不動産会社に問い合わせた所、やはり比率は出していないとの返答で、管理組合にある建築図面をもとに税理士さんに相談してくださいと言われました。
施工業者にも問い合わせてみますが、建築図面から計算することは可能なのでしょうか?
ご連絡ありがとうございます。
建築図面だけで区分するのは難しいと思いますね。価額の区分には工事費の内訳がやはり必要になると考えます。
南先生が記載された13年2月19日裁決と、私が記載した12年12月28日裁決は、考え方は類似しているかもしれませんね。
私も明日、確認してみます。

工事費割合が算出できない場合には、国税不服審判所の平成13年2月19日の裁決要旨より、市役所の固定資産税課で、固定資産税評価額の再建築費評点数算出表を入手して、構造別の再建築費評点数の割合により、建物と付属設備を区分することが合理的な区分方法となります。

現状に踏まえて、既に、昨年度は按分せずに申告している。
これを、新規取得の場合でも裁決等、税理士の中でも疑義が生じる、リスクがあるであろうという処理を、初年度では無く、2年目に変更しようとしている。
税務調査を呼び込む契機になる恐れがありますし、なった場合、立証責任は申告者にあります。
といった状況から、今回は、按分しない。
次回、購入することがあれば、その時は初年度に慎重に検討する、という結論になるでしょうか。
そもそも初年度は按分を失念した、という重要な情報が有りますので。
過去の裁決からは、
① 販売会社又は建築会社が作成した譲渡原価証明(工事費明細)等に基づいた建物本体と建物附属設備の価額の割合により区分する方法「H12年12月28日裁決」
② 工事費等の割合の算出が困難な場合には、公的機関が物件ごとに算出した構造別の再建築費評点数の割合により区分する方法「H13年2月19日裁決」
と整理できそうです(中古物件の場合には未償却残高割合による補正が必要)。
いずれにしても区分する根拠があっての方法になりますので、採用可能な方法で区分頂ければ宜しいと考えます。また、これら以外の計算方法でも「合理的」であれば是認される可能性はあると考えます。

今回の場合は新築段階での建物と付属設備の振り分けですので、実際の減価が不明な場合、再建築費評点数による振り分けが最も合理的であると考えております。
余談ですが、築年数の古い中古物件を分ける場合は、当時の再建築評点数の入手は難しいので、また他の合理的按分基準を探さなければなりませんね。

初年度でなくても、その後に正確な資産や耐用年数に変えることは、当然のことと思います。
仮に税務調査としても、特に問題はないと思います。
本投稿は、2018年05月26日 21時40分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。