外国の証券口座での外貨建MRF(外国株式)の収益分配金を邦貨換算する為替レート
外国の証券口座にて外国株式の取引を行っています。
口座にはポジションとして保有している外国株式と自動的に変換される外貨建てMRFのようなもの?があります。(FDRXX: Fidelity Government Cash Reserves)
※配当金に対して外国での源泉徴収はあるが、国内での源泉徴収は無し
この外貨での配当金を申告する為には都度邦貨して配当所得を申告する必要があると認識しています。
この時の為替レートについて、検索すると「TTB]というような情報がいくつか見つかるのですが、これが理解出来ずに困っています。
収益分配金はそもそも円資産で購入したものでは無く、外貨としてそのまま生まれたものなのでTTMとすると方が適切のように思うのですが、やはりTTBで計算すべきなのでしょうか。
収益をTTBで計算したとすると、得た外貨預金(または再投資されたMMF)の資産価格はTTSで計算されることとなり、分配金を得る毎に(MMFだと毎月)差額が発生することになると思います。
外貨のまま生まれる収益・資産として、RSUやストックオプション等が給与所得として計上が必要な例があると思いますが、こちらはTTMで計算することとなっており、考え方として一貫性が無いように思えます。
TTBにした方が、所得としては少なく計上出来る為損がある訳ではないのですが、帳簿が非常に複雑になってしまうという点で苦労しています。
考え方について教えていただければと思います。
税理士の回答

中島吉央
外国株式は配当の円換算レートはTTBによることとされています(措置法通達9の2-2)。
ただ、TTSやTTMによる計算は納税者不利になるということですよね。それについて、税務署がどうこういうと思えないですね。
外部リンク先 国税庁HP「措置法通達9の2-2」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/sochiho/880331/gensen/58/09/02.htm#a-02
中島様
返信ありがとうございます。
この場合、TTBを使わなくてもいいが納税者不利になる、かといって不利になる分には税務署が問題にするようなことは無い、といった感覚でしょうか。
税額もそうなのですが、やはり帳簿上での不一致が非常に気になります。
外貨建MMFの取得費用まで具体的なシチュエーションを広げて考えると、
1.日本円から外貨預金に変更
→外貨預金の収入金額はTTS
2.外貨預金から外貨建MMFを購入
→外貨建MMFの取得費用はTTS
→外貨預金の収入金額はTTB = [TTS - TTB]の為替差損が発生
3.外貨建MMFを売却し外貨預金に預け入れ
→外貨建MMFの取得費用はTTB = [TTS - TTB]分の株式売却損が発生
→外貨預金の収入金額はTTS
という形になるかと思います。
現在の市場ではMMFはほぼノーリスク、ノーコストで取引が出来るような状況ですので、
極論を言えば2と3を100回繰り返せば実際には発生していない「損」を大量に帳簿上で計上出来るということになってしまうと思います。
この辺の不整合がどうしても納得できず、継続的に考えるのであれば
外貨預金(証券口座預り金)←→外貨建MMF←→外国株式
を行ったり来たりする際に常に発生する損益確定と取得費用計算の為の為替レートは、全て外貨建取引としてTTMを使うべきなのかと考えました。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/11a/01.htm
しかし、この流れに配当金はTTB、RSUのVestはTTM、といった個別の決まり事で上書きすると、
とても帳簿上で一貫性のあるルールを適用しているようには見えなくなってしまう、ということを悩んでいます。
個人の確定申告だと、実際には外貨建MMFと預金、株式への変換は非常に多く発生する為、額としてはそれなりになってしまいます。

中島吉央
法人の場合は、有価証券の取得時も配当の受取時も、原則はTTMによって換算します(法人税法基本通達13の2-1-2)。法人の場合、仕訳を切ることが前提ですので、TTMで統一するほうが、ごく自然といえます。特に再投資型の場合、有価証券の取得時はTTS、配当の受取時はTTBとなると差額を雑収入等で計上しなくてはいけないので面倒くさいといえます。
かたや、個人の場合は、仕訳を切ることが前提でないので、有価証券の取得時はTTS、配当の受取時はTTBと納税者有利となっています。しかしながら、再投資型や外貨建MMFのようなものに通達を当てはめるのは、ちょっとどうかなと思う部分はありますが、通達がそうなっている以上、税務署職員は否認できません。
有価証券の取得時も配当の受取時もTTMによって換算すれば、納税者不利ですから、税務署がうるさく言うことはないでしょう。
なお、余談ですが、記名の国外株式の配当等の円換算日は、支払開始日と定められている日となっていますが、実際に配当が入金されるのは、円換算日からしばらくたってからということが多いですが、この間における為替変動は雑所得となります。
外部リンク先 国税庁HP「法人税法基本通達13の2-1-2」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/13_2/13_2_01.htm

中島吉央
(追加です)
細かいことですが、外貨MMFの収益分配金は配当所得ではなく利子所得となります。
中島様
色々と詳細な説明ありがとうございます。また、確認していく中で私も大きな勘違いをしていることに気づきました。
証券口座内で外貨建MMFを経由して株式の売買を行っている場合、取引明細では一見「外貨建MMF←→株式」と見えていますが、考え方としては「外貨建MMF←→外貨預金←→株式」と考えなくてはいけないですね。
そして、この場合にTTB/TTSで取引を行うと
1.外貨建MMFを売却 = TTBで約定金額の邦貨換算額を確定
2.外貨建資金として計上 = TTBで預入時のレートを計上
3.外貨建資金を引き出し = TTSで引出時のレートを確定(ここでTTS - TTBの雑所得が発生する)
4.外国株式を購入 = TTSで取得費用の邦貨換算額を確定
という形になるかと思います。
この時発生するTTS-TTBの雑所得はTTMで計算した場合は発生しない(既にもしくは将来の株式譲渡損益に含まれる)ことになるかと思います。
つまり、外貨建MMFを株式購入の原資として利用した場合は、株式の購入の都度雑所得として計上すべき雑所得(TTS - TTBの利益)が発生することになり、
雑所得は総合課税なので、状況によっては一概に納税者不利とはならない場合もあるかと思います。
実際には為替差益が発生していない仲介としての外貨建MMFで無視できない額の雑所得が発生する、ということが感覚的に違和感があり
また、この雑所得を細かく申告すべきかという点については下記の記事でも紹介されているように実態には即していないというのが実情なのかな、と感じます。
https://derukui.com/2017/08/%E5%A4%96%E8%B2%A8%E5%BB%BA%E9%A0%90%E9%87%91%E3%82%92%E5%8E%9F%E8%B3%87%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E7%AD%89%E8%B3%BC%E5%85%A5%E6%99%82%E3%81%AE%E7%82%BA%E6%9B%BF%E5%B7%AE%E6%90%8D/
※「実際の為替レートの変動では無いTTB/TTSの差額」が都度発生する実態に言及することなく、為替差損益が実現したものとする、という表現はどうなんだろう、と思います。
TTMで計算すれば、この雑所得は発生しなくなるのですが、証券会社の取引報告書では
外貨建MMFの売却額: TTBで計算
外国株式の購入額: TTSで計算
という形で記載されてしまっているので、個人でTTMを使うと証券会社の取引報告書と差異が生まれてしまう、という管理上のデメリットが大きいですね。
証券会社としては株式譲渡損益のみを報告書で証明出来ればいいのだと思いますが、同時に差額のような形で生まれた雑所得は納税者自身で管理してくださいね、ということになるのでしょうか。
また、外国株式の配当にもですが、外貨建MMFに自動的に再投資されることを考えると。
この場合
1.配当所得 支払い開始日のTTB で計上
2.外貨建資金として計上 入金日のTTBにて預入時のレートを計上(ここで支払い開始日~入金日の為替差損益が発生する)
3.外貨建資金を引き出し 入金日のTTSで引出時のレートを確定(ここでTTS - TTBの為替差益が発生する)
4.外貨建MMFを購入 入金日のTTSで取得費用を計上
という流れになるのでしょうか。(2と3は同時に処理してもよさそうですが)
いずれにしても非常に面倒になりますね。
個人は仕訳を切る必要が無い、からと言って雑所得を申告しなくても良いというわけでは無いと思いますし、
かと言って実態に即していない雑所得での利益を取引毎に積上げて申告するのは、直観的に理解しづらいですしTTMに是正して欲しいな、と思います。
個人投資家の観点では、総合課税の所得額を膨らませる可能性があり、そのデメリットが大きい為、
外国株式取引の為の待機資金を外貨建MMFを経由させること自体、細かく利子を得られるメリットをデメリットが上回ってしまうと思います。
外貨MMFの収益分配金は利子所得とのご指摘ありがとうございました。
完全に勘違いしておりました。
本投稿は、2019年11月03日 00時07分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。