勤務先が日本法人を持たず、現地で源泉徴収をされる場合、日本での確定申告はどのようになるでしょうか
3月にオーストラリアより来日し、現地勤務からリモートワークになりました。勤務先は日本法人を持っておらず、自宅からインターネットを通じて仕事をしています。給料はオーストラリアにて源泉徴収がされ、オーストラリアの口座に振り込まれている状況です。調べたところ、私は非永住者の区切りになるようです。日本国内での収入はありません。海外での所得ですが働いているのは日本国内なので実質外国税額控除は適用されないのでしょうか。
日本に所得税を払うことはあってもオーストラリアで徴収された税が還付されることはないのでしょうか。
宜しくお願いいたします。
税理士の回答

回答します。
先ず貴方が、日本・オーストラリアのいずれかの居住者になるか確認しないといけません。
貴方はオーストラリアから来日しリモートワークによる勤務とのお話ですが、その来日理由が、「日本での勤務(1年以上を前提)」を命じられたのか「一時的に日本での勤務」を命じられたかにより考え方が変わると思います。
例えば、「新型コロナの影響で当分の間帰国するように」との名レオであれば、一時的と考えられます。辞令などをご確認ください。
日本での勤務(1年以上を原則)としての来日であれば、入国の翌日から居住者となりますが、一時的な日本での勤務であれば非居住者となります。 ただし、一時的な予定であっても日本の滞在が1年を超えた時にはその時点で日本の居住者になります。
【日本の居住者・オーストラリアの非居住者】
日本では「全世界課税」オーストラリアは「源泉地課税」となります。
給与は外国払いですので、日本での源泉徴収及び年末調整はされませんので、貴方の全ての所得に関して確定申告を行うことになります。
オーストラリアで課税された所得に関しては「二重課税防止」の観点から外国税額控除の対象とされます。(オーストラリアの納税証明書が必要になります)
【日本では非居住者・オーストラリア居住者】
オーストラリアでは「全世界課税」日本では「源泉地課税」
勤務が日本ですので、日本でもその勤務に係る報酬(給与)に対して課税されます。ただし、支払先がオーストラリアでかつ日本支店等(恒久的施設)がありませんので源泉徴収がされません。
そこで、「非居住者」の確定申告・納税をするになります。
この納税額に関して納税証明書を入手することにより、日本で課税された所得に関しては「二重課税防止」の観点から外国税額控除の対象とされます。
【双方居住者】
貴方の住居や親族の居住地、国籍などからどちらかの居住者として確定する必要が生じます。
【日・オーストラリア租税条約】
給与等の課税に関しては、租税条約に様々な取り決めがあります。
日本での滞在が短期間の場合等は、短期滞在者として免税の可能性もありますが、確定申告のことも踏まえて、所轄の税務署の確認されてはいかがでしょうか。
【オーストラリアの税法関連】
オーストラリアの課税関係は、オーストラリアの課税当局に確認してください。
国税庁HPのタックスアンサー等から参考になる箇所をお知らせします。
No2875「居住者と非居住者の区分」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875.htm
No2012「居住者・非居住者の判定(複数滞在地がある人の場合)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2012.htm
No2873「非居住者等に対する課税のしくみ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2873.htm
日・豪租税条約(外務省HP)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty169_13.pdf
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty169_13.pdf
米森様
お世話になります。この度はご丁寧なご説明、ありがとうございます。日本には向こう1年以上住む予定のため、日本の居住者、オーストラリアは非居住者になります。実は所轄の税務署に2回、国税局電話相談センターに問い合わせをしましたが三者三様の考えで結局はどれが答えなのか分からないでおります。
所轄の税務署①: オーストラリアで源泉徴収された税と日本の所得税を照らし合わせ差額を還付する(オーストラリアで源泉徴収された所得税率は18%)
所轄の税務署②:オーストラリアでたとえ多く源泉徴収されたとしても、海外収入が総所得のため、実質”外国税額控除の限度額=日本に支払う所得税額”となるため還付はなし。または日本に支払う必要がある可能性もある。そもそも日本で源泉徴収された税はないため還付自体がない。
国税局:日本の居住者(非永住者)で、実際勤務しているのが日本国内であるため、そもそも外国税額控除は適用されない。外国税額控除は日本で働いている人が一時的に海外派遣などで海外収入を得た場合の為のものである。オーストラリアの国税局に所得税を課さない旨の申請等をしない限り実質二重に払うことになる
以上の案内を受けました。オーストラリアでの手続きについては別途調査中です。
このような複雑な件にも関わらず、ご親切にご対応いただき誠にありがとうございます。

お返事をありがとうございます。
オーストラリアの会社から支給された報酬が「給与所得」となる前提で再度説明いたします。
貴方が日本の居住者になるとの説明でしたので、当該報酬について日本国では課税権を有すことになります。
また、外国払いの給与であるため、所得税の源泉徴収はありませんので確定申告により納税することになります。
じつは、貴方が受け取る報酬が「オーストラリア法人の役員報酬」でない場合、租税条約上オーストラリアでは課税されないと思われるのですが、その根拠が不明です。
オーストラリアやオーストラリア法人では、貴方を日本の居住者でありオーストラリアの非居住者として処理されているのでしょうか。
なぜそのような話をするのかと言いますと
日・豪租税条約では、原則給与所得に関しては「役務提供地国」課税とされています。(§14)
具体的に条文を読むと
「『一方の締約国(日本)の居住者』が、その勤務について取得する給与、賃金その他これらに類する報酬に対しては『勤務が他方の締約国内(オーストラリア国内)において行われない限り』、当該一方の締約国(日本)において『のみ』租税を課すことができる」と記載されています。
つまりは、『日本の居住者の給与等は、オーストラリア国内において勤務が行われない限り、日本においてのみ課税される』と記載されています。
ただし、貴方がオーストラリア法人の役員で、その報酬が「役員報酬」である場合は、その「役員報酬」に対してはオーストラリアでも課税の対象とされますので(§15)、二重課税防止の措置として「外国税額控除」の対象となると理解しています。
もしも、オーストラリアにおける課税(源泉徴収)が誤りであるならば、オーストラリアから還付されることになります。そのため日本国における確定申告による「還付」という処理は起こりません。
国税局の「申請」という話は、オーストラリアでの租税条約の適用に関するなにか手続きのことを説明しているように推察されます。
次に、当該報酬が「役員報酬」であり、二重課税対象として「外国税額控除」の対象となった場合であっても、全額が控除の対象となりません。(外国税額控除額の計算があります)
また、日本国の算出税額よりも他国に納税した額が多かったとしてもその部分は還付しません。(他国で納めた税額部分を、日本国が負担し還付するようなことはしません。)
還付についての説明に関しては、所轄税務署①の方はなにか勘違いをされたと思われます。
租税条約の適用等について、所轄税務署や国税局の方とどのように(どの程度)お話されたのでしょうか。
一つ一つの回答はあながち間違ってはいないようですが、全体をとらえての説明ではなく、なにか一言足りないような気がいたしました。
また、所轄税務署への相談は、所得税部門の「審理・指導担当」に「事前予約」して相談されたと思いますが、先日添付した租税条約の所定の箇所もお持ちになった方がよろしいかと思います。
米森様
お世話になります。この度は二度にわたり当方の複雑な状況にも関わらず、ご丁寧にご説明を頂き誠にありがとうございます。
日・豪租税条約の条文の抜粋とその解説を頂き、当方の場合には日本のみが課税できるということが良く理解できました。
また、他国で納めた税額部分を日本国が負担し還付することについては、所轄税務署①の方の説明が他の2名とは異なっていたので、はっきりしないままでしたが、米森様のご説明でそのようなことはないということが明確になりました。
オーストラリアの雇用主は勿論承知しておりますが、米森様のご指摘通り、オーストラリア国税局にてきちんと”オーストラリアは非居住者、日本の居住者”として手続きがされていない為にオーストラリアから源泉徴収がかれている状況なのだと思います。オーストラリアの年度末は6月で、7月より新しいファイナンシャルイヤーが始まっておりますので早急にオーストラリア国税局にて必要な申請をしようと思います。
所轄税務署①は20分程度(電話相談)、所轄税務署②は2時間(事前予約でオーストラリアの納税証明書と給与明細を持参して対面相談)、国税局の方とは45分程(電話相談)、其々こちらの状況について同じ問い合わせをした回答が前回の通りでした。国税局の方に「最終的に確定申告の手続きをするのは所轄税務署なので所轄税務署と明確になるまで相談予約をする必要がある」とのご案内を頂きましたが、正直3度目の所轄税務署相談には不安がありました。
米森様のご説明でかなり問題点がクリアになりましたので、オーストラリア国税局での手続きが済み次第、先日添付頂いた資料を持参し改めて相談に参ります。
今後状況が変わり自国と日本の行き来が生じる働き方に変わる可能性もあり得ます。
確定申告の手続きを税理士さんにお願いする際には直接ご連絡させて頂きますのでどうぞ宜しくお願い致します。
このような面倒な質問にも関わらず、ご親切にご対応いただき誠にありがとうございます。

ベストアンサーを有り難うございます。
少しでもお役にたてましたら、幸いです。
私も東京国税局に勤務しておりましたが、国際課税につきましては租税条約と国内法との双方を熟知しないと判断が付かないケースがあり、専門で事務に携わらないとなかなか回答が難しい所があります。
混乱を生じさせましたこと、国税OB(OG)として代わりにお詫び申し上げます。
今後もご不明点がありましたら「みんなの税務相談」をご活用ください。
本投稿は、2020年08月14日 22時39分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。