債務免除益と贈与について
いつも大変お世話になっております。
同族会社における役員貸付金の債務免除に関し、以下の件についてご相談申し上げます。
株式会社X社は、代表取締役兼100%株主であったAが本年急逝し、相続人は配偶者Bと子C(19歳大学生・法人の社員・従業員ではない)です。
AはX社から役員貸付金6,000万円を借入れており、相続人はAのプラス財産とマイナス財産を併せて承継する予定です。
現在、X社は取締役・株主ともに不在のため経営不全状態にあり、早急な相続手続きと法人機能の復帰が必要です。
しかし、Aに対する貸付金が多額であるため、相続人は承継に躊躇しています。
そこで、BおよびCが相続を行うことを前提(遺産分割でBが全財産相続)に、R8年のX社定時株主総会において、Cに対して債務免除を実施する方向で検討しています。
免除理由は、Cが若年であり今後の生活基盤の確立と自立が必要な時期にあること、現時点で返済資力がなく将来的にも返済見込みが困難であること、返済請求を継続すると生活設計に著しい支障が生じるおそれがあることから、法人としての経営判断に基づき、生活安定と社会的自立を支援する趣旨です。
なお、債務免除による法人側の貸倒処理については、損金不算入処理を予定しています。
一方、Cの債務免除益に係る納税資金確保のため、R7.8月にBが保険金3,000万円を受領した後、その一部(約700万円)をCへ贈与します。この贈与は、学業(留学等)、就業や将来の活動資金、健康上の不測の事態への備え、資格取得やスキル向上のための自己投資、また世代間資産承継を計画的に進める目的で行うものです。
時系列は以下の通りです。
R7.7 A死去
R7.8 Bが保険金3,000万円を受領
R7.8 BからCへ約700万円を贈与(上記目的)
R8.3 X社定時株主総会でCへの債務免除を決議(3月20日頃予定)
R8.3 Cが贈与税申告・納税(3月15日まで)
R9.3 債務免除益に係る確定申告・納税
【質問事項】
・上記の贈与と債務免除の流れは、税務上、形式的・実質的に「同一経済的取引の一環」とみなされる可能性は高いか低いか。
・Cが受ける債務免除益は、雑所得ではなく所得税法第34条(1項)に基づく「一時所得」として計算して差し支えないか。
以上、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
税理士の回答
ご質問の重要性などを踏まえると、関与税理士さんと話を詰めるべきレベルだと考えます。
そのまま、このサイトでの、他の先生方の回答を待たれるのも一考ですが、まずは、顧問税理士と深く話し合うべきだと思います。
坪井先生、適格なご判断ありがとうございます。
しかし、今回のケースでは顧問税理士の方では頼りにならず、
セカンドオピニオン的にこのスキームの適否について見解を求めているところでした。
もし差し支えなければ、坪井先生のご見解をお聞かせ願いたく思います。
(税務判断ではなく、あくまで先生個人の見解で結構です)
相続財産の全体像や、会社BSの状況等を考えて次の一手を進めるべきであり、自社株買取や他者への売買によるお金の捻出が可能か否かなど、先に把握すべきことがあると思います。また、債務免除していくのは、給与認定等はないのでしょうか。
その他の多くの選択肢を模索し、それに対応する課税関係をひとつひとつ丁寧に答えを出したうえで、色々な方法を組み合わせるべきだと思い、サイトでは限りない問答になってしまうので、顧問税理士と言わせていただきました。
坪井先生
このたびは更なるご回答を賜り、誠にありがとうございます。
会社B/Sの状況は、総資産6,500万円に対し、役員貸付金6,000万円、現預金100万円、その他固定資産約400万円、負債は金融債1,500万円、資本金300万円、剰余金4,700万円となっております。
Cに対する債務免除については、Cは社員・従業員ではないことから、給与課税として認定される可能性は低いと考えております。
また、他者への株式売却による資金捻出は困難であり、貸付金も形式的な債権で時価は実質0円と見込まれるため、自己株式売却による解決も現実的ではございません。
一方で、個人の相続財産としては、持ち家および事業用不動産(土地等)を所有しており、今後の生活再建を考慮すると、相続放棄によるメリットはほぼ無い状況です。
Cはまだ19歳であり、形式的とはいえ3,000万円の負債を負う心理的負担は大きく、相続放棄を望む気持ちもありますが、次順位の相続人に引き継がれることで争族となる可能性が高く、第一順位のB・Cで相続し早期解消を図る方向で検討しております。
最終判断は顧問税理士と行う予定ですが、税務判断そのものではなく、実務上、同様の事例においてどのような見解や対応が取られることが多いのか、またその際の留意点について、ご教示いただけますと幸いです。
本投稿は、2025年08月14日 10時57分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。