管理支配基準の解釈について
管理支配基準については、法令や通達で明確な適用要件が定められていないと理解しています。
そのうえで、収入計上時期を判断する際に、実務や判例ではどのような事情が認められていると管理支配基準の適用を検討しやすいと考えられますか。
特に、権利確定主義では実態を十分に反映できない場合に、どのような事実が重視されるのかを教えていただけると助かります。
税理士の回答
ご質問のとおり、管理支配基準は法令・通達に明文の要件がないため、実務・判例の「事実認定」を積み上げて判断します。
以下は、管理支配基準が認められやすい典型的な事情で、
実際の税務実務・裁判例でも重視されています。
1.「引渡し済み」で買主が実質的に使用開始していること
最も重要なのは“実質的な引渡し”が成立している事実 です。
例えば
商品・設備・システムが買主のもとに到着済み
買主側が現実に使用・設置・稼働している
売主が自由に持ち帰れない状態
顧客がその資産を使って売上を上げられる状態になっている
裁判例でも「使用開始=経済的支配の移転」と強調されます。
2.危険負担(リスク)の帰属が買主に移っていること
次に重視されるのが、“壊れたら誰が責任を負うか” という視点。
利用される判断材料
破損・事故の責任が買主に移っている
保険の負担が買主側
目的物の保管・管理義務が買主にある
売主がリスクを負わない状態
これは「所有権の形式」よりも税務署が強く見るポイントです。
3.代金額(対価)が確定していること
管理支配基準は、取引金額が確定していること が必須に近い扱いです。
具体例
完成検査も終わり追加工事なし
出来高調整なし
最終請求額が確定している
契約上金額に未確定要素が残っていない
金額が揺れている段階では「支配移転」とは認められません。
4.買主側に経済的利益(収益獲得可能性)が帰属している
判例・実務上もっとも本質的とされる基準です。
買主側がすでに目的物を用いて収益を得られる状態
経済的価値(便益)が買主に移転している
売主の側ではその資産から利益を得ることが不可能
つまり“誰が経済的に得をしているか”という点を税務署は強く見ます。
5.契約書上の形式より実態が優先されていること
管理支配基準は、形式(所有権移転条項)ではなく実態重視です。
例
所有権留保があっても、買主が完全に使っているなら支配移転
売主名義のままでも、売主側がもはや支配できないなら買主と判断
倉庫預かりでも、実質的に買主が管理するなら支配移転と認定される場合あり
“名義だけ売主”は、税務上ほとんど通用しないということです。
6.売主の手元から「事実上のコントロール」が離れていること
つまり、売主がもはや「自由に処分できない状態」であること。
例
売主が物件を持ち帰れない
売主が変更・修理・撤去を自由にできない
買主の承諾がないと動かせない
売主に管理権限が残らない契約内容
売主に支配権が残っている場合、管理支配基準は使えません。
本投稿は、2025年11月14日 10時22分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。







