勤務実態のない人への給与
勤務実態のない家族社員がいます。一度も出勤したことない社長の身内へ80,000円毎月給与を支給しているのですが、問題があるとしたらどのようなことがありますか?
税理士の回答

架空人件費の計上に該当し、脱税行為となります。
故意に架空人件費の計上を行った場合は、税務調査により重加算税という高額の税金が課されます。
勤務実態を伴う人件費の支給を行って下さい。

佐藤和樹
結論:重大な税務リスクあり
勤務実態のない家族に給与を支払っている場合、税務調査で否認される可能性が極めて高いです。否認された場合、次のような不利益が生じます。
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1. 法人税上の問題
● 損金算入の否認(法人税法第36条)
• 実際に働いていない家族に支払った給与は「経費(損金)」として認められません。
• → 過去に遡って、否認された分の法人税が追徴課税されます(更正)
例:
80,000円 × 12ヶ月 × 3年間 = 2,880,000円
→ これが損金否認されると、数十万円〜100万円超の追徴税額+加算税+延滞税が課される可能性があります。
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2. 源泉所得税・住民税のリスク
• 源泉徴収・住民税も適切に納めていたとしても、「実態がない」給与支払と判定されると、虚偽記載とみなされ、ペナルティの対象になることがあります。
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3. 消費税のリスク(簡易課税以外)
• 給与は消費税の対象外ですが、「実態のない支払」が他の仕入や外注と誤認されていると、仕入税額控除の否認に発展することも。
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4. 社会保険・労働保険の問題(加入していれば)
• 社保や雇用保険に加入していた場合、不正加入・不正給付とみなされ、保険料の返還・追徴や、最悪の場合は刑事告発対象になるリスクがあります。
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5. 民事・刑事的リスク(悪質な場合)
• 架空人件費として「法人から資金を抜く目的」だと判断されれば、背任・横領・詐欺などの刑事問題に発展する可能性すらあります。
• 特に粉飾決算や資金還流の形跡があれば、銀行や金融機関との信頼関係が崩れるリスクも。
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税務署から見た危険サイン(調査でチェックされる点)
• 出勤簿やタイムカードの有無
• 勤務実態(職務内容・業務日報・メール履歴など)
• 銀行振込の名義と頻度
• 他の社員との給与水準との整合性
• 家族内での金銭の動き(給与→代表者への返金など)
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今後の対応について(アドバイス)
1. 勤務実態を明確に作るか、支払を停止する
→ 出勤実績・職務記録・報告書などを整備
2. 過去分を自主的に修正申告するか検討
→ 状況によっては修正申告でペナルティ軽減が可能
3. 顧問税理士に早急に相談
→ 税務リスクの整理と今後の防止策を確認
本投稿は、2025年06月03日 16時41分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。