少額繰延資産と短期前払費用の違いは何ですか?
お世話になります。
少額繰延資産と短期前払費用の違いについて、ご教示ください。
基本的に両者は、
「本来繰り延べるべき損金を一括処理できるという意味では同じ」だが、
(1)少額繰延資産⇒金額の問題
(2)短期前払費用⇒期間の問題
で区別される、と理解しているのですが、この理解は誤りでしょうか。
初歩的な質問で恐縮ですが、ご教示のほどお願いいたします。
税理士の回答

浅山直希
定義の違いということでしょうか??
定義の違いというのであれば、繰延資産は既に役務の提供を受けていますが、前払費用は役務の提供を受けていないというところに違いがあります。
ちなみに、繰延資産とは、将来の期間に影響する特定の費用として、すでに代価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用のことを指し、具体的には、株式発行費、社債発行費、創立費、開業費、開発費が該当します。
どちらも、全額、一時に損金に計上できますが、短期前払費用と少額繰延資産は、下記の様に取引の性格が異なります。
①前払費用及び短期前払費用は、下記の通りです。
「前払費用」
前払費用とは、法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいいます。
前払費用は、原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものです。
2 短期前払費用
法人が、前払費用の額で、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、1にかかわらず、その支払時点で損金の額に算入することが認められます。
ただし、借入金を預金、有価証券などに運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、たとえ1年以内の短期前払費用であっても、支払時点で損金の額に算入することは認められませんので注意してください。
(法基通2-2-14)
②繰延資産とは、すでに対価の支払が終了し又は支払義務が確定し、それに対応する役務の提供を受けたが、その効果が将来にわたって発現される費用であり、収益との対応関係から次期以降にわたって繰延べ経理された資産を言います。なお、20万円未満の少額繰延資産は、全額損金になります。

繰延資産とは、「既にその対価の支払が完了し、又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって期待される費用」をいいます。
具体的には創立費・開業費・開発費・株式交付費・社債等発行費の企業会計上に定める費用と、税法固有の繰延資産(公共的施設の設置又は改良のために支出する費用など)です。
前払費用とは、「既に対価の支払いをしたにもかかわらず、それに対する役務やサービスは時の経過に伴って受けられるもの」をいいます。
具体的には前払家賃・前払賃借料などが該当します。
例えば前払家賃は慣例的に4月に5月分を支払います。当社が4月決算法人だとすると、翌期の5月になってはじめて物件の賃借というサービスを受けられますので、決算時には「前払費用」。
それに対し、開発費は創業時から会社の清算時までその効果が見込まれます。ただ会社の清算はいつになるかわからないし、半永久的に会社は継続することを前提にしているから便宜上5年以内に償却しましょうというものです。
期間や金額の問題ではなく、費用の性格上の違いです。
なお少額繰延資産は繰延資産のうち20万円未満のもので、その支出時に費用(損金)処理できますよというものです。
皆様方の誠実なご回答、誠に感謝いたします。
例えば、従業員用の借上住宅の契約時に火災保険料や保証料(家賃滞納に係るもの)を支払いますが、期間は「2年」だけど金額は「5万円」という場合、一括で損金処理できるのか、と困っております。期間や金額の問題だけなら、短期前払費用としてはダメだけど少額繰延資産は使えるといった安易な発想をしていました。
取引の性格の違いということですと、上記火災保険料や保証料は、どのように理解すべきでしょうか。
役務提供は終わっていないと考えるのが良いのでしょうか。
それとも役務提供は終わっているが効果が当該期間に及ぶと考えるべきなのでしょうか。

火災保険料、保証料は借上住宅の契約期間(2年)に対応する費用で、実際に借上が経過した時点で費用化されるものなので「前払費用」に該当します。
「この借上住宅の借上を当初の2年間から1年で終了することになりました。」と仮定します。2年分5万円の火災保険料・保証金のおよそ半分の2万5千円が返却されますよね?
5万円は借上期間24か月のうち実際に経過した月に対応する部分が費用になりますよ(上記の仮定では5万円×12か月/24か月=2万5千円分が費用になりますよ)ということです。
火災保険料、保証料(将来、未経過保障料が返還される場合)は、1年以上は、長期前払費用になります。

補足としての説明です。
設立時に支出する登録免許税は創立費は繰延資産になります。
設立登記のために支払ったのですが会社の清算がいつになるかわからないのことからどの期間に対応する費用なのか不明です。また清算しても返金されません。つまり財産性がありません。
一方、借上社宅につき契約時に支払った保険料や保証金は何年何月から何年何月までの分と対応する期間が明らかです。また途中で解約したら借入していない期間に対応する金額には返還請求権があります。つまり財産性があります。
対応期間が不明確かつ財産性がないものが繰延資産。
対応期間が明確かつ財産性があるものが前払費用。
(必ずしもこのように言い切れないものあるのですが…)
と考えれば今後悩まずに済むのでは。
誠実なご回答、誠に有り難うございます。
本投稿は、2019年05月10日 11時28分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。