老人ホームの未成工事支出金に係る消費税について
令和3年11月に老人ホームの建設の受注を獲得し、来期に完成・引渡をする見込みです。期末時点の未成工事支出金が約5000万円あります。
未成工事支出金の内容は下請業者等への外注費で、請求書日付で外注費を計上しており、仮払消費税もその都度計上しています。
この場合、居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の制限を受けるのでしょうか?
税理士の回答
文面を拝見する限り、ご質問者様が居住用賃貸建物を取得する訳ではないようですから、そもそも関係ないと思います。
ご指摘のとおり、弊社ではなく契約の相手方が居住用賃貸建物を取得し使用します。
しかし、消費税法では次のとおり規定されており、条文にあてはめると仕入税額控除できないように思えてきて困ってます。
居住用賃貸建物のうち高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するものに係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としない。
調整対象自己建設高額資産とは、他の者との契約に基づき、又は事業者の棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産で、その建設 等に要した課税仕入れに係る支払対価の額の税抜金額等の累計額が 1,000 万円以上のものをいう。
今回の取引についてみます。
①老人ホームは居住用賃貸建物に該当する
②老人ホームは発注者との契約に基づき、未成工事支出金は1000万以上である。
以上からすると調整対象自己建設高額資産に該当しそうな気がするんです。読み方が間違えているんでしょうか?
消費税法12条の4の本文をよくお読みください。
自己建設高額特定資産の"仕入れを行った"場合です。建物の仕入れを行うのは発注者です。
自己建設高額特定資産とは既にある建物の購入ではなく、賃貸建物をゼネコンなどに発注することをいいます。
ここの読み方がそもそも間違えています。
居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限が設けられた主旨をお考え下さい。非課税売上に対応する課税入れについて、金の売買等の少額な課税売上を立てることで還付を受けたことが横行したためです。(個人的にはやり過ぎの法改正ではあると思いますが)
貴社については、老人ホームの引き渡しが課税売上、建設に掛かった経費などが課税仕入になるだけの話です。
ご回答ありがとうございます。
確かに本文括弧書きにて自己建設高額特定資産の"仕入れを行った"場合との文言があります。また、建物の仕入れを行うのは発注者であることもおっしゃるとおりです。
しかしながら、括弧書きの前の文を参照すると”当該自己建設高額特定資産の建設等に要した政令で定める費用の額が政令で定める金額以上となつた場合”=自己建設高額特定資産の仕入れを行なった場合となっています。また、同条前半部分で”高額特定資産の課税仕入れ”という表現をみると、この項では仕入れ=課税仕入れ(2条1項12号)と読むのかなと思います。
そうすると弊社が建設等に要した金額が千万円以上のためこれに該当するように思えます。
と、ここまで調べながら書いていたら自己解決できました。課税仕入れ時には仕入税額控除の制限を受けるが、35条の2により建物の譲渡時に仕入税額控除の加算調整で全額控除できそうです。
処理としては先生がおっしゃることと結果的に同じになりそうです。
いろいろと勉強になりました。お忙しいところありがとうございました。
そもそも、自己建設の自己とは建設をする受注工事会社ではなく発注者(最終的な所有者)のことです。
建設費等に要した費用というのは、発注者が最終的に支払う建設費用のことであって、受注した工事業者が支払う費用ではありませんので、35条の2の解釈も違います。
35条の2は居住用賃貸建物として取得したが、3年以内に事務所等に転用したり売却したりした場合の条文です。
居住用賃貸建物と高額特定資産がごちゃまぜになっていますが、いずれにしても貴社に対しては両方とも該当しません。
書店で書籍を漁ってみましたが、「不動産取引と消費税」大蔵財務協会 初版のP285に私の質問と類似の説明がありました。
この本によれば、建設業者で請負に基づく建物の建築工事で建設費用千万円以上のものは、自己において使用する建物でなくとも自己建設高額特定資産に該当するとのことでした。
理由は12条の4本文をあてはめただけでしたが。
もう少し検討してみたいと思います。
お忙しいところありがとうございました。見解は異なりますが、先生のおっしゃることも誠にもっともだと思います。その分だけ理解が進みました。また機会がございましたらご助言いただけたらと思います。
仮に、ご記載の書籍の通り自己建設高額特定資産に該当したとしても、消費税法施行令第50条の2第1項により、当初のご質問の仕入税額控除の対象となる居住用賃貸建物に該当しません。
ありがとうございます。
仮に自己建設高額特定資産に該当したとしても、弊社はあくまで請負契約に基づき老人ホームという建物を引渡すだけなので”住宅の貸付けの用に供しないことが明らか”のため、仕入税額控除の制限を受けないという理解をしました。
すっきりしました。大変有意義なご指摘等誠にありがとうございました。
本投稿は、2022年06月01日 18時55分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。