中小企業の資金調達に役立つ「中小機構の債務保証」とは?

資金繰りが厳しくなったり新しい事業を始めようと思った中小企業が資金の借り入れをしようと思った時、なかなか信用保証会社が保証人になってくれない・保証料が高額である・信用保証会社が保証人になってくれたとしても金融機関が貸出してくれないなど、中小企業の資金調達の大変さは並大抵のものではありません。
そんな中小企業の状況を支援しようとできたのが中小機構による債務保証です。保証を受けるにあたっての条件はありますが、国からの保証が受けられるとなると金融機関からの資金調達も容易になります。
今回は資金の借り入れに一役買ってくれる、この債務保証制度についてご説明いたします。
目次
中小機構の債務保証とは
債務保証とは、債務者の履行を第三者が保証することです。つまり、履行しない場合、代わりに債務を履行する義務を負うことです。中小機構ではこの第三者の役割を、条件によって行う制度があります。
一般に、中小企業では金融機関に融資を受ける際、信用保証協会の保証を受けることが多いと思います。返済が困難になった場合に、公的機関である信用保証協会が代位弁済することは金融機関にとって非常に安心できることです。
反対に、信用保証協会の保証が取れない場合には、金融機関にとって不安材料となり融資を断られる場合がほとんどとなります。
しかし、信用保証協会の保証は、事業の状況によって受けることができない場合もあるでしょう。
将来収益が上がることが見込まれる場合でも、資金調達ができず倒産してしまうこともあるかもしれません。国ではこの状況を打開する為に、中小機構による債務保証制度を設けました。
中小機構による債務保証制度には、次のような特徴があります。
- 企業の規模の制限がない
- 信用保証協会等の保証を受けることが困難なものが対象となる
- 最大50億円の資金調達に対応できる
債務保証はどんな時に使えるの?
中小機構の債務保証制度は、次の5つの状況に対応するように作られています。
- 新事業に関するもの
- 新事業への投資に関するもの
- M&Aに関するもの
- 事業再生ADR事業者対象
- 地方創生
それぞれ内容・要件を確認していきましょう。
新事業活動円滑化債務保証制度
企業実証特例制度を利用した新事業活動計画を作成し、認定された事業者が対象となります。
企業実証特例制度とは、政府の展開している成長戦略のひとつです。規制の緩和をすることにより新規事業が展開できる場合に、安全性の確保を条件に主務大臣により認められます。これは企業単位もしくは事業体で特例的に認められる制度です。
つまり、規制の枠を超えた自由な発想を生かし、新たな事業に挑戦する企業を応援しますという制度です。
保証限度 | 保証割合 | 保証期間 | 保証料 |
---|---|---|---|
25億円 | 50% | 運転資金:5年以内 設備資金:10年以内 |
年0.3% |
特定新事業開拓投資事業円滑化債務保証制度
ベンチャーファンドに対して債務保証を行う制度です。対象となるベンチャーファンドは特定新事業開拓投資事業計画を作成し、経済産業大臣の認定を受ける必要があります。
これは新たな事業の開拓・成長には、ベンチャーファンドの促進が必要であるとの考えから設けられました。
認定を受ける為には、ベンチャーファンドは単に資金供給のみでなく、もっと直接的に事業育成に関与する必要があります。計画の認定には主に次のような要件があります。
- 「新たな事業の開拓を行う事業者」に対しての投資及び経営支援であること
- 投資先企業に経営・技術の指導を行うこと
- 投資家から組合へ出資される金額が20億円以上であること
保証限度 | 保証割合 | 保証期間 | 保証料 |
---|---|---|---|
25億円 | 50% | 1年以内 | 年0.3% |
事業再編円滑化債務保証制度
事業再編計画を作成し、主務大臣の認定を受けた事業者が対象となります。
合併や分割により経営資源を融合させることにより、さらなる成長や新市場の開拓を目指す取り組みをサポートします。複数企業によるものだけでなく、グループ内再編も対象となります。
事業再編計画の認定には、修正総資産利益率が2%ポイント向上することや有形固定資産回転率5%向上などの達成数値が定められています。また認定を受けると、会社法の特例措置や税制面での優遇措置などを利用することができます。
保証限度 | 保証割合 | 保証期間 | 保証料 |
---|---|---|---|
25億円 | 50% | 運転資金:5年以内 設備資金:10年以内 |
年0.3% |
事業再生円滑化債務保証制度
事業再生ADRによって、事業再生を図ろうとする事業者向けのつなぎ融資を円滑化します。
事業再生ADRとは、過大な債務を負った事業者が法的手続きではなく、第三者の手により、当事者間の話し合いにより問題解決を図ることです。
公正な立場から調整を行う第三者は、次のいずれかの事業者である必要があります。
- 中小機構
- 中小企業再生支援協議会
- 特定認証紛争解決事業者
保証限度 | 保証割合 | 保証期間 | 保証料 |
---|---|---|---|
5億円 | 50% | 1年以内 | 年0.5% |
地方活力向上地域特定業務施設整備事業円滑化債務保証制度
地方創生事業の一環として、地方の雇用を安定させるために設けられています。東京23区から本社機能を地方へ移転、もしくは地方における本社機能の拡充をする事業者を対象としています。債務保証を受けるには、さらに地方活力向上地域特定業務施設整備計画の認定を受ける必要があります。
認定を受けるには、認定地域再生計画に適合するものであることや、雇用の拡大に寄与するものなどの条件があります。また、認定を受けると、オフィス減税などの税制上の特例を利用することができます。
保証限度 | 保証割合 | 保証期間 | 保証料 |
---|---|---|---|
15億円 | 30% | 10年以内 | 年0.3% |
おわりに
中小機構の審査は、主務省庁や都道府県の認定審査とは別に行われます。金融機関、主務省庁、中小機構と連絡を取りながら、債務保証を受けられるのか確認していくようにしましょう。