本開業以前に間借り営業による事業収入がある場合の開業日及び開業費の考え方について
下記の状況にて確定申告を行うにあたり、考え方をご教示ください。
【状況】
2023年3月 飲食店開業に向け公務員退職
2024年3月~10月 事前の経験として、親戚経営の居酒屋を間借りし、トライアルとしてランチ営業を実施
2024年12月 物件契約
2025年1月から内装工事を開始、3月上旬開業予定
間借り営業の開始日である2024.3.13を開業日として開業届提出済(提出日2024.5.1)
あわせて青色申告承認申請書も同日提出済
・間借りでのトライアル営業にあたって、営業開始前に調理器具や食器等の備品・消耗品等を購入(約12万円)
・約8か月のトライアル営業での事業所得は約60万円(売上 約140万円-原材料費・水道光熱費・交通費等の必要経費 約80万円)
【相談事項】
① 開業日について
開業届の開業日は2024.3.13としましたが、本営業を開始する2025年3月の日付を会計上の開業日とすることは可能でしょうか?
本営業に向けて、今後、開業前の空家賃や水道光熱費、広告宣伝等の費用がかかってくるため、できればそれらを開業費として計上し、繰延資産として任意償却したいと考えています。
② 2024年分の確定申告について
<①が可能な場合>
・トライアル営業による所得約60万円の申告が必要になると思いますが、青色申告と白色申告、どちらで申告するのがよいでしょうか?
・この60万円は開業日(2025年3月)以前の所得となりますが、事業所得として申告するのでしょうか?それとも、雑所得等として申告するべきでしょうか?
・トライアル営業開始前に支出した費用(約12万円)は、2025年分の申告時に開業費として仕訳してもよいのでしょうか?それとも、2024年分で開業費以外の勘定科目で申告するべきでしょうか?
<①が不可の場合>
・開業日は2024.3.13となるので、それ以前の必要経費(約12万円)は開業費として計上可能かと思いますが、それ以降に支出した本開業にかかる経費は開業費ではなくそれぞれ該当する勘定科目で計上する、それらは繰延はできず該当年の経費として処理する、ということになりますか?
・この場合、開業日以前の必要経費(約12万円)を開業費として計上し、繰延資産として翌年以降で任意償却するためには、白色申告ではなく青色申告を行う必要がありますでしょうか?
税理士の回答

石割由紀人
1. 開業日について
会計上の開業日を2025年3月に変更することは可能ですが、開業届に記載した2024年3月13日との整合性を保つ必要があります。その場合、開業届の修正手続きを行うのが適切です。本営業に向けて発生する費用(空家賃、水道光熱費、広告宣伝費など)は、開業費として計上し、繰延資産として任意償却が可能です。
2. 2024年分の確定申告について
- ①が可能な場合(開業日を2025年3月に変更する)
トライアル営業による所得は2024年分の雑所得として申告する方が合理的です(事業として継続的・計画的とは言い難いため)。トライアル開始前に支出した費用(12万円)は2025年分の開業費として計上可能です。
青色申告ではなく白色申告を行うのが適切ですが、2025年以降の青色申告を見据えた帳簿作成を行ってください。
- ①が不可の場合(2024年3月13日を開業日とする)
2024年分の所得は事業所得として申告します。トライアル営業開始前の費用(12万円)は開業費として計上し、繰延資産として任意償却できます。本営業にかかる経費は通常の経費科目で計上し、2024年の必要経費として処理します。この場合、青色申告を行うことで繰延資産の処理や翌年以降の節税効果を活かせます。
3. 申告方法の選択
開業日を2025年3月に変更する場合、2024年は白色申告で雑所得として処理し、2025年以降に青色申告を適用する流れがシンプルで実務負担も少ないです。一方、2024年3月13日を開業日とする場合、2024年分を青色申告で行うことで、開業費の処理や節税が可能です。
石割先生
早々のご回答、誠にありがとうございます。
一つ一つ丁寧に解説いただき、大変わかりやすかったです。
開業届の修正手続きを行うことにより、開業日の変更が可能とのことですので、
・開業日を実際に本営業を開始する2025年3月に変更
・2024年分の申告は、トライアル営業による所得(約60万円)を雑所得として白色申告
・2025年分の申告は、トライアル営業開始前に支出した費用(約12万円)+以降に支出した開業に要した経費を開業費として計上し青色申告(開業費は繰延資産として任意償却)
として手続きを行いたいと思います。
そのうえで、下記の点について追加でご教示いただけると幸いです。
① 開業日の変更は開業届の再提出によって行うようですが、変更手続きは開業日以降でないとできない(未来の日付を開業日として変更することはできない)と思われることから、2024年分の確定申告のタイミングでは変更手続きが未了という可能性が高いのですが、確定申告後に変更手続きを行うということでも問題はないでしょうか?
② 2024年分は白色申告を行う予定ですが、所得が低額のため所得税についてはほぼ影響がないと思われる一方、住民税や国民健康保険料については青色申告にした方が低く抑えられるというような記事も見ました。
私の今の状況でしたら、白色申告でも住民税や国保料にも大きくは影響はないでしょうか?
ちなみに、2024年はトライアル営業による所得以外に、アルバイトの賃金収入(約18万円)有り、国保料約11万円、国民年金保険料約15万円、その他生命保険料やidecoの掛金(約14万円)も支払っています。
重ねての質問となり恐れ入りますが、何卒よろしくお願いいたします。

石割由紀人
① 開業日変更のタイミングについて
開業届の開業日を変更する場合、原則として開業日以降に変更手続きが可能であり、未来の日付を事前に登録することはできません。そのため、2024年分の確定申告時点では開業日の変更が未了であっても問題はありません。以下の手順をおすすめします。
1. 2024年分の確定申告
開業日の変更が未了の状態で白色申告を行い、トライアル営業分の所得を雑所得として申告してください。
2. 2025年3月以降に開業届を再提出
実際の開業日(2025年3月)に変更する手続きを行います。税務署には「開業日を誤って登録していたため修正したい」と説明してみてはいかがでしょうか。
3. 2025年分の申告
開業費の計上と青色申告を行います。2025年3月が正式な開業日となるため、トライアル営業の期間を事業の準備期間として扱うことができます。
② 住民税や国民健康保険料への影響
2024年分の白色申告であっても、現在の所得状況を考えると住民税や国民健康保険料への影響は軽微であると考えられます。ただし、以下を考慮してください:
1. 住民税
住民税の計算には「所得割」と「均等割」が含まれます。雑所得として申告する場合も必要経費を差し引いた後の所得(約60万円-基礎控除48万円)が課税対象となりますが、以下の控除を適用できます:
- 基礎控除:48万円
- 生命保険料控除、iDeCo掛金、社会保険料控除(約40万円)
これらを適用すると、課税所得はほぼゼロとなる可能性が高く、住民税は均等割(約5,000~6,000円)のみとなる可能性があります。
2. 国民健康保険料
国保料は前年の所得を基に算定されるため、雑所得として申告しても影響は大きくありません。計算上、控除後の所得が少ない場合、保険料の引き下げ効果は青色申告でも大きく変わらないと予想されます。
結論
- 白色申告でも住民税や国保料に大きな影響はありません。
- 今後の青色申告への切り替えと開業費の計上を見据えた帳簿準備を進めてください。
石割先生
追加質問についても、ご回答ありがとうございます。
ポイントを押さえつつ、丁寧にわかりやすくお答えいただけたので、疑問がすべて解決しました。
教えていただいた手順にて手続きを進めます。
本当にありがとうございました!
本投稿は、2025年01月05日 16時27分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。