開業届の提出及び開業日前後の所得・経費の仕訳について
私は大学での非常勤講師(給与所得)に加え、この10年ほど予備校で講師を務めております。予備校とは業務委託契約であり、最初の契約時に開業届の提出を促されていたのですが、当初は数年で辞めるつもりでいたため、それを税務署に提出していませんでした。そのまま今日までずるずると来てしまったのですけれども、今年7月末に余儀なくされた引越しで業務専用の部屋を確保したことから、2学期開始の9月1日を開業日とする開業届及び青色申告承認申請書を、今月内に改めて提出しようと考えております。
現在のこの状況で、お尋ねしたいことがございます。まず、令和3年分の確定申告まで予備校からの報酬を雑所得(業務)とし、大学の給与所得と合わせて白色申告を行ってきましたが、開業日とする9月1日以前の報酬及び経費は、どのように仕分けするのが最適でしょうか。練習の一環として開業日以降と同様の仕訳を会計ソフト上で既に記帳してはいるものの、やはり報酬を雑所得と位置付け、そして経費(インターネット料金や書籍代)を開業費として仕訳しなければならないのでしょうか。ちなみに予備校からの今年の報酬は、国税庁による「所得税基本通達」改正案で示された300万円という基準は超える予定です。
また、そもそもこのタイミングでの開業届及び青色申告承認申請書の提出で、令和4年分から青色申告を行うことができるのでしょうか。先述したように、予備校での講師業務を始めてから約10年が経過しているため、少し不安になっております。
以上、どうぞ宜しくご回答下さいますようお願いいたします。
税理士の回答

土師弘之
9月1日を開業日とするのであれば、何を以って開業とするのかということになり、上記の考え方には疑問が生じます。予備校が増えたとか、契約契約形態が変わったとか、収入が激増したとか、これまでの業務形態から見て何らかの変化がなければ、新たに開業したとは見られないと思われます。業務用の部屋を確保したというのは主観的な見方ですので、これだけでは不十分だと考えられます。
300万円を超えているから「事業所得」だとすると、1月からの収入合計になるはずですので、1月からは事業を行っていたということになります。
青色申告承認申請書は、適用を受ける年の3月15日までに提出しなければならないことになっています。それ以降の開業であれば開業後2か月以内です。
したがって令和5年分から青色申告とするのは十分可能ですが、9月をもって、それ以前は「雑所得」それ以降は「事業所得」とするには、それなりの説得力を持った説明が必要になると思われます。
以上の考えは、主たる収入が非常勤講師としての給与所得、副業が予備校講師の業務委託という形態を前提にしていますので、予備校が開業届を促すような業務形態であれば、当初から「事業所得」であったと言えないこともないと考えられます。
早速ご回答下さいまして、ありがとうございます。
どうやら令和4年分は、従来通り予備校からの報酬を雑所得と位置付けて白色申告をしなければならないと理解しました。
お忙しいところ誠に申し訳ないのですが、追加でお尋ねしたいことがございます。ご回答の内容からすると、毎年ほぼ一定の報酬を同一の予備校から今後も継続して得る場合、改めて開業届を提出するタイミングが事実上無くなってしまっていることになるのでしょうか。令和5年分からであれば青色申告が十分可能であるとご教示頂きましたが、今後も業務形態に大きな変化がないとすると、令和5年1月1日以降、例えばどのような開業理由であれば税務署に受理してもらえるのでしょうか。

土師弘之
改正予定の「所得税基本通達」では、「事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない。」としています。
つまり、収入が300万円を超える場合には「事業所得」として取り扱える可能性が高いということです。
令和4年分から事業所得として取り扱える可能性があることから、これから青色申告承認申請書を提出すると、適用されるのは令和5年分からとなるということになります。
よって、本来ならば、もっと前に開業届を提出しておくべきでしたが、これを失念していたと考えるのが妥当だと思います。
開業届の未提出には罰則規定がありませんので、提出していない者が多くいます。したがって、税務署も特に督促もしてません。
このことから、これから開業届を提出するにも、開業年月日を令和4年1月1日以前とすることになります。
令和4年分を「雑所得」とするのであれば、おっしゃるとおり、規模が変わらない限り事業所得とする機会を失ってしまう可能性は十分にあります。
ご回答ありがとうございます。
仮の話を続けてしまいますが、令和4年分の白色申告で予備校からの報酬を「雑収入(業務)」ではなく「事業収入(営業等)」とし、可能であれば実際に予備校で講師を始めた約10年前の日付で提出を失念してしまっていた開業届を税務署に送付し、かつ令和5年3月15日までに青色申告承認申請書を提出すれば、令和5年分からは青色申告ができそうだと考えてもよろしいでしょうか。

土師弘之
その通りになります。あまりにも古い開業年月日なので、税務署から問い合わせがあるかもしれませんが、上記のように説明すれば納得してもらえるはずです。
ご回答ありがとうございました。
開業届を税務署に提出する際には、経緯を説明した別紙を添えておきたいと思います。
実は周りに同じような状況にある大学非常勤講師が少なくありません。土師先生に今回ご教示頂いたことを仲間と大事にシェアしたいと思います。最後まで丁寧にご説明頂きまして、本当にありがとうございました。
本投稿は、2022年09月15日 08時47分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。