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【まとめ】個人事業の事業承継方法とは?必要書類や税金についてわかりやすく解説

個人事業主として何らかの事業を行っている方が、自分が現役を引退し「子に事業を継いでもらおう」と考えたとき、具体的にはどのような手続きが必要になるのでしょうか。

この記事では、個人事業主の事業承継方法と承継にかかる税金について解説します。

目次

個人事業の承継方法

事業承継とは、経営者が行っている事業を後継者に引き継ぐことをいいます。

事業の引継ぎ先としては、子などの親族内承継、社内昇格人事による社内承継、事業の売却によるM&Aなどの方法があります。

個人商店などの個人事業の場合は、株式の取得によって事業承継をする中小企業とは違い、現経営者が廃業の手続きをして、後継者が新規で開業の手続きをすることで事業承継が完了します。単に「お店をあげる」と言っただけでは、事業の承継はできません。

先代の経営者(親)が行う手続き

譲渡者となる先代の経営者は事業承継に先立ち、所轄税務署長に対して「個人事業の廃業届出書」の提出をします。

開業届と廃業届は同じ用紙なので、「廃業」に丸をつけるか「開業」を二重線で消すなどしてください。提出しない場合の罰則はありませんが、法律上は廃業した日から1か月以内に提出となっているので、速やかに届出をしましょう。

廃業届の書き方

廃業届の書き方を簡単に説明します。

  • 届出の区分
    廃業事由に事業承継と記載し、引き継いだ先の住所、後継者の氏名を記載します。
  • 所得の種類
    所得の全部を承継するのか、それとも一部を承継するのか記載します。
  • 廃業日
    廃業した日を記載します。子が開業した日と同日でも問題ありません。
  • 廃業に伴う届出書の提出の有無
    青色申告の取りやめ届出書や、事業廃止届出書なども提出する場合はチェックを入れます。

そのほかの必要な書類

また、ケースに応じて次の書類の提出も必要です。

所得税の青色申告のとりやめ届出書

青色申告をしていた場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」もあわせて提出が必要です。ただし、別の事業を行っていたりして、青色申告を継続する場合は提出する必要はありません。

>> 国税庁|所得税の青色申告の取りやめ届出書(PDF/126KB)

事業廃止届出書

消費税の課税事業者である場合は、消費税の事業廃止届出書の提出します。

>>国税庁|事業廃止届出書(PDFファイル/126KB)

所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書

子に事業を承継した場合は、親の所得が予定よりも少なくなると想定でき、その場合、親が予定納税義務の対象者だと、予定納税額が多くなりすぎてしまうことになります。

そこで「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請」を提出すれば、予定納税額を減額することが可能です。

廃業だけでなく、休業や失業、業績不振のため所得が少なくなることが見込まれる場合もこの申請ができます。

  • 一期・二期分の減額申請は、7月1日~7月15日まで
  • 二期分のみの減額申請は、11月1日~11日15日まで

>> 国税庁|[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続

従業員を雇用していた場合

従業員を雇用して給与を支払っていた場合は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を、廃業から1か月以内に提出する決まりになっています。

また、「源泉所得税の納期の特例」を受けていた場合は、廃業することでその資格を失うため、廃業の翌月10日までに預かった源泉所得税の納付が必要になります。

許認可事業を行っていた場合

行政庁による許認可を受けている事業は、あくまで経営者個人に対して許可が下りているため、後継者にそのまま承継させることはできません。よって、所轄行政庁に対して別途廃業届の提出が必要となります。

>> 起業で必要な許認可とは?許認可事業の「一覧」と「手続き」のまとめ

後継者(子)が行う手続き

後継者が行う手続きとしては、基本的に新規の開業手続きとほぼ同じです。

まず、所轄税務署長に対して、事業を開始してから1か月以内に「個人事業の開業届出書」を提出します。提出するタイミングは、現経営者が廃業届を出す前でも後でも問題ありません。

開業届の書き方

開業届の書き方を簡単に説明します。

  • 届出の区分
    事業承継によって開業する場合は、事業の引き継いた先の住所、氏名を記載します。
  • 所得の種類
    通常は事業所得になりますが、賃貸経営を引き継ぐ場合は不動産所得になります。
  • 開業日
    開業した日を記載します。厳密な開業日ではなく、任意で決めることができます。
  • 開業に伴う届出書の提出の有無
    青色申告承認申請書や、消費税に関する課税事業者選択届出書などを提出する場合はチェックを入れます。
  • 事業の概要
    承継する事業の内容をできるだけ具体的に記載します。たとえば、食品の卸販売業やインターネット通販事業、といった感じです。
  • 給与等の支払の状況
    専従者や使用人の人数や、給与の支給方法(年俸、月給、時給、日当など)について記載します。

そのほかの必要な書類

そのほか、必要に応じて以下の手続きも合わせて行います。

所得税の青色申告承認申請書

開業初年度から青色申告をする場合については、開業してから2か月以内に所轄税務署長に対して提出しましょう。途中から青色申告を希望する場合については、青色申告をする年の3月15日までに提出すれば問題ありません。

>> 青色申告を始める方法とやめる方法、承認取消しの注意点について
>> 専従者控除とは?青色事業専従者の要件と給与の決め方をわかりやすく解説

減価償却資産の償却方法の届出書

定額法以外の方法によって減価償却費を計上したい場合は、開業した日の属する年分の確定申告期限までに、所轄税務署長に対して提出します。

>> 30万円までなら一括で費用計上できる「少額減価償却資産の特例」とは

従業員を雇用していた場合

配偶者や親族などの身内でない従業員を雇用していた場合は、あらためて雇用契約を結び直す必要があります。

たとえば、雇用契約書や労働条件、雇用保険や労災保険などの労働保険について再手続きしなくてはなりません。また、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」や「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」など、従業員をはじめて雇用する際の手続きも必要になります。

>>【まとめ】はじめて従業員を雇用する時に必要な手続き・期限・届出先・準備の一覧
>> 従業員を初めて雇った事業者必見!源泉徴収税っていつどうやって納付するの?

屋号を引き継ぎたいときは

「○○事務所」や「○○商店」といった屋号について後継者が引き継ぐ場合、特別な手続きは不要です。個人事業の開業届出書に、先代の経営者が使用していた屋号を記載すれば、そのまま問題なく屋号を使用して事業を営むことができます。

ただし、先代の経営者が地方法務局で屋号の商号登記をしている場合は、別途名義変更の手続きが必要になります。

また、屋号付きの口座は、屋号の後に続けて個人名が入るため、新しく口座を開設し直さなければなりません。後継者が別途銀行にて、口座開設の手続きをする必要があります。

屋号をつけるときの注意点

個人規模ではあまり影響はありませんが、不正競争防止法という法律があるため、他人が使用している商号と誤認のおそれがあるものを使用してはいけません。使用すると、商号の不正使用による差し止め請求や損害賠償請求を受けたりする可能性があります。

個人事業の承継にかかる税金

手続きとしては開業届と廃業届を提出するだけで完了しますが、事業として用いている資産を受け継ぐ場合は、その価額に応じて「贈与税」が課税される可能性があります。

贈与税の課税対象となる資産

贈与税については、原則として経済的価値があるものすべてについてが課税対象となります。

個人事業主の承継のケースでは、先代経営者の屋号付き口座の預金残高、取引先に対する売掛金、在庫商品、営業車両などすべてが対象です。

  • 不動産(建物や敷地)・預貯金・商品・売掛金・社用車・機械類 など

ただし、先代経営者の頃から未払いになっている買掛金や借入金など「債務」については、事業用債務となるため、プラスの資産から差し引くことになります。

  • 買掛金・未払金・借入金 など

年間110万円以下は非課税

事業承継で引き継ぐ資産から債務を差し引いた残りが、課税対象となりますが、贈与税は年間110万円の基礎控除があるため、110万円以下であれば贈与税は課税されません。

20歳以上の後継者が父母や祖父母から贈与を受けた場合、110万円を超えた部分に対して下記のとおり「特別贈与財産」の税率が適用されます。

基礎控除後の課税価格特別贈与財産
税率控除額
200万円以下10%-
300万円以下15%10万円
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
3,000万円超50%415万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

たとえば、親である先代経営者から屋号付き口座に預金されていた600万円を引き継ぐとします。債務が一切なかった場合、課税される贈与税は次の通りです。

600万円 - 基礎控除額(110万円) = 490万円
490万円 × 20% - 30万円 = 68万円

不動産など高額な事業資産がある場合

事業で使用する資産のうち、不動産のような課税評価額が高額になるものについては、所有権を先代経営者に持たせたまま後継者が借りて使用する「使用貸借」の契約をすることにより贈与税負担をなくすことができます。

ただし、このやり方ですと不動産の所有権は先代経営者のままなので、相続が発生した時には相続税の負担があるかもしれないという可能性を覚えておきましょう。

相続により引き継ぐ場合

先代が亡くなったことにより事業承継が発生した場合でも、基本的な手続きは贈与による承継のときと同じで、先代の廃業手続き等を後継者が代わって行うことになります。

税金についても、相続税の基礎控除額を超える部分については事業用資産であっても課税対象となりますが、「個人版事業承継税制」の適用により相続税の納税猶予を受けられます。

個人版事業承継税制による納税猶予

2019年の税制改正により、個人事業主の事業承継によって生じる贈与税や相続税について、納税猶予が受けられるようになりました。

先代経営者から事業に使っていた「特定事業用資産」のすべてを後継者が引き継ぐなどの要件を満たした場合に、その資産に対して課税される贈与税(または相続税)の納税が猶予されます。店舗や支店が複数ある場合については、個別に後継者を分けることも可能となっています。

特定事業用資産とは

「特定事業用資産」とは、青色申告書の貸借対照表に記載のある資産で、次の要件に該当するものをいいます。

  • 土地のうち、400m²までの部分
  • 建物のうち、800m²までの部分
  • 固定資産税の課税対象になっている減価償却資産
  • 自動車税や軽自動車税が課されている自動車

ただし、「小規模宅地等の特例」とは併用不可となっています。「小規模宅地等の特例」では400m²までの土地について、評価額が80%減額されるため、大幅な節税効果があります。

この点も踏まえて、どのように承継方法がベストなのか、事業承継に強い税理士に相談しながら対策しましょう。

>>「小規模宅地等の特例」で相続税評価額が80%減!適用要件や計算方法を解説

おわりに

個人事業の事業承継は、手続きだけで見ると法人の場合よりも単純ですが、事業資産の贈与や相続にかかる税負担がネックとなります。

そこで個人版事業承継税制が適用できれば、後継者にかかる納税負担を大幅に軽減できますが、まだ制定されたばかりということもあり、要件が複雑で事前の準備も必要になってきます。

スムーズに事業承継を行うためにも、税理士と相談しながら計画をしていくとよいでしょう。

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