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相続した賃貸マンションでの共同経営時の申告方法

土地と賃貸マンション(8戸)を法定割合にて相続。
母1/2
兄1/4
弟1/4


下記のようにした場合法的な問題等はあるでしょうか?

兄弟が土地と建物を母に使用貸借契約として無償で貸し出す。
賃貸の収益は母の収入として申告。
それとは別に、母から兄弟へ毎年110万を贈与する。(非課税枠)
※賃貸マンションの収益は大体500万程度だと思います。

税理士の回答

不動産(賃貸マンション)から生じる収益は、その不動産(賃貸マンション)の所有者に所有権の割合に応じて帰属します。
「実質所得者課税の原則(12-1)」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/03/01.htm

従って、ご質問のようなケースにおいて家賃収入のすべてをお母様の収入として申告することはできないと考えます。
3名様が所有権の割合に応じて収入経費を按分し、各々が不動産所得として申告することが必要になります。
3名様が全員青色申告を選択することで、それぞれ10万円の青色申告控除額が適用できますので、考えようによってはお一人に集めるよりは節税効果が期待できるとも考えられます。

なお、贈与は上記の家賃収入とは切り離して考えますので、毎年の贈与が法的に有効な贈与であれば毎年110万円を贈与されることは問題ありません。

回答ありがとうございます。

使用貸借(民法第593条~第600条) が適用されるハズですが、賃貸マンションでは適用されないと言う事でしょうか?
賃貸マンションの兄弟が所有する部分を母へ貸し出す事は出来ない?
土地は出来ると思いますが…。

>法的に有効な贈与であれば
法的に有効でない贈与とはどのような贈与があるのでしょうか?
今回のようなケースでは問題はないという解釈で良いですか?

税理士ドットコム退会済み税理士

税務は実態ですので。仮にこれができれば親族内でいくらでも所得を按分できますね。過去の判例等で固まった地面となります。

税務的な論点と民法と切り分けて考えられるとよろしいのかと存じます。

回答ありがとうございます。

>税務は実態ですので。仮にこれができれば親族内でいくらでも所得を按分できますね。過去の判例等で固まった地面となります。

「過去の判例等で固まった地面」とはどういう意味でしょうか?
過去に賃貸マンションの場合は、使用貸借契約と見なさない、という判例があったと言う事でしょうか?

>親族内でいくらでも所得を按分できますね。
可能なのは、建物の所有者(共同所有の場合で)に対して贈与の110万までですので、いらくでもと言う事はないと思います。
実質母側の所得税は増加(賃貸の収益に対する所得税は全額支払っている)しているので、贈与の110万が丸々利益になるわけではないと思います。

またそもそも贈与と所得税は別ものではないのでしょうか?
過去にどのような判例があったのか?教えて頂けると助かります。

税理士ドットコム退会済み税理士

最初のご相談文を拝見したとき、よく研究されていらっしゃると思いました。
他の先生が、大筋をご回答されていたので、私からはご回答申し上げませんでしたが、素晴らしい着眼点であると思います。

〉使用貸借(民法第593条~第600条) が適用されるハズですが、賃貸マンションでは適用されないと言う事でしょうか?

そういう事ではありません。
マンションでも、使用貸借は可能です。
お母様がお住まいになるのであれば、使用貸借(=お母様がご兄弟にお家賃を支払わずに使用する)に問題はありません。

問題になるのは、そこから「収益」が上がる場合です。
「収益」が上がれば所得税の課税関係が生じ、お母様のお住いのケースでは考えなくてよかった所得税法が登場します。
所得税法第12条の実質課税の原則です。収益の起因となる資産の真の所有者が誰であるかによりその収益にかかる所得税を誰に課税するかを判定し、それが明らかでない場合にはその資産の名義人が真の所有者であるものと推定する(所得税法基本通達12-1)とあります。
従って、ご相談者様の場合は、相続財産から得た収益は、資産の所有者(相続分割の通りの割合)に課税されます。

※参考
(所得税法 第四章 所得の帰属に関する通則)
(実質所得者課税の原則)
第一二条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
(所得税法基本通達)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/03/01.htm


〉賃貸マンションの兄弟が所有する部分を母へ貸し出す事は出来ない?
土地は出来ると思いますが…。

本当によく勉強していらっしゃると思います。

以下、土地が全てご相談者様の所有で、使用貸借契約で建物だけがお三人の所有である前提でお話しましょう。
土地も、土地家屋でも、家屋だけでも、使用貸借契約は可能です。
ただし、それが収益を生むと、以下同文。

従って、理論的に言えば、実質所得者課税によれば、こちらについてもご相談者様のご兄弟とお母様への借地権代は、土地所有者のご兄弟の不動産所得になります。
しかし、実務上、このケースの土地(借地権)については、課税関係は生じません。
最初のケース同様、建物の所有権割合での不動産所得申告になります。


これは、不動産賃貸業の収益の起因資産が建物であるからでしょう。
仮に、ご相談者様の土地に、土地の使用貸借でお母様が建物を建てて不動産賃貸業により収益を上げ、かつ、これをお母様お一人の不動産所得として申告する場合、これは認められます。

お母様は、不動産賃貸業について、建物を建てるという事業投資をしているわけです。
この点が、相続財産そのままで、使用貸借でご兄弟の所有部分も含めて、お母様の不動産賃貸業として全額をお母様の不動産所得として申告できないケースとの違いです。

最初の例で、不動産賃貸業でなく、そのマンションで、土地建物の使用貸借で、お母様が物品販売業をされていたとすれば、その物品販売業の収益は、全てお母様の申告で問題ありません。

税理士ドットコム退会済み税理士

文字数の関係で続きです。


>法的に有効でない贈与とはどのような贈与
贈与は契約ですので、両者の合意が必要です。
例えば、相続税の節税目的で、親が子供名義の口座をつくって現金を振り込んでも、子供の方がその贈与を知らなければ贈与契約は成立しません。親が勝手に贈与税の申告までしていたとしても、子供の同意がなければ、その振り込まれた現金は親の財産(=相続財産)となります。

他の先生のご回答で、論点が変わってしまっていますが、2度目のご質問への回答です。

ご連絡ありがとうございます。
不動産の貸借形態には民法に定める使用貸借は勿論あります。
親子3人の共有の不動産を例えば母一人が無償で使用するといった親子間の使用貸借は全く問題ありません。そこに経済的利益が移転していないというのが根底にあります。
しかし、共有関係にある賃貸用不動産については、一の共有者(兄弟)が他の共有者(母)と使用貸借関係を結び、賃貸用不動産に係る収益費用を他の共有者のみに帰属させることはできないものと考えます。
所得税法第12条に規定する「実質所得者課税の原則」の考えからすれば、兄と弟も賃貸用不動産に関し一定の持分を持つ権利者ですので、この権利を使用貸借という契約関係で他の共有者(母)に移転させることは税務上認められないものと考えます。

土地に関しても同様で、親子が所有する土地を子が無償で使用(使用貸借)することは税務上問題なくできます。しかし、借地人が存する土地(底地)を共有者の一人に使用貸借契約で収益を集約させることは認めていないと考えます。

最後に、「法的に有効な贈与」とは、民法549条に定める贈与を指します。
第549条「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」
つまり、「贈与者の意思表示」と「受贈者の受諾」といった両者の合意があるのが法的に有効な贈与となります。法的に有効でない贈与として実務でよくある例は、例えば受贈者に知らせていない財産の移転や、受贈者が自由に使用することが出来ないような、言うなれば形式だけを整えているようなもの等があります。
贈与を行う場合には、贈与契約書で贈与者と受贈者の意思を明確にすることが大切になります。

税理士ドットコム退会済み税理士

ダメ押しのの追加説明です。

不動産賃貸業は建物を建てて所有することが事業としての主たるアクションな訳です。そこが、所有権が収益帰属の根拠となる。
そう考えれば、土地の使用貸借で建物を建てた場合、建物所有者が全収益を建物所有者の不動産所得として申告できる場合と、当初のご相談のケーズで、課税関係が異なることにも、ご納得いただけるのではないでしょうか。

回答ありがとうございます。

>南吉彦さま
>従って、理論的に言えば、実質所得者課税によれば、こちらについてもご相談者様のご兄弟とお母様への借地権代は、土地所有者のご兄弟の不動産所得になります。
しかし、実務上、このケースの土地(借地権)については、課税関係は生じません。
最初のケース同様、建物の所有権割合での不動産所得申告になります。

上記のご説明について
土地(所有者は母と兄弟で兄弟の所有分を母へ無償で貸し出す)は使用貸借がみとめられるが、建物(賃貸の収益)は所有者(母と兄弟)の所得となる。
という解釈で良いでしょうか?

税理士ドットコム退会済み税理士

不動産所得の収益については、結果的にYESです。

なぜなら、不動産所得は資産から生ずる収益ですので、その不動産所得は、その収益の起因となる主たる資産(建物)の所有者に帰属し、その所有者に課税されます。
土地に使用貸借が認められ、建物には使用貸借が認められないためではありません。この場合でも、土地建物の使用貸借です。

同じ状況でも、それが不動産所得でなく、お母様が一人で営む事業から生ずる事業所得(その不動産を賃貸して賃貸人に対し食事その他の世話をする下宿屋業、または、そこでアクセサリーを売る物品販売業)だった場合には、下宿屋業またはアクセサリー屋さんの収益は、お母様お一人の事業所得です。
この場合でも土地建物の使用貸借です。

更に例をあげれば、土地の使用貸借でも、実質所得者課税が適用されることはあります。

ご相談者様の土地を、お母様が使用貸借により借り、お母様がそこで青空駐車場で、駐車場業を営んだら、その駐車場業収入は、
⇛土地の所有者のご相談者の不動産所得です。なぜなら、収益の起因となる土地がご相談者の所有だからです。

しかし、ご相談者様の土地を、お母様が使用貸借により借り、そこにアスファルト舗装を施し、駐車場用の自動車止めと自動精算機を設置し、駐車場業を営んだら、その駐車場業収入は、
⇛お母様の事業所得です。なぜなら、収益の起因となる資産が、お母様所有の駐車場施設を使った駐車場業という事業だからです。

非常に分かり易い回答ありがとうございます。

と言う事は、幸い遺産分割協議書はまだ作成しておりませんので、そこに
・建物は母の所有
・土地は母と兄弟所有
としてしまえば、兄弟の土地の所有分を母へ無償で使用貸借し、賃貸の収益は母の所得とする事が出来ると言う事ですね。

後はどのような方法が一番節税になるのかは総合的に判断が必要だとは思いますが…。

税理士ドットコム退会済み税理士

それが節税になるかどうかは別問題ですが、
その場合は、全額をお母様の不動産所得として問題ありません。

税理士ドットコム退会済み税理士

民法上の法形式と、所得法上の実質所得の論点はおおむね解決されたご様子ですね。

踏まえて、分割協議前であれば、ご自身で検討されるのも一案ですが、まず、概況を身近な税理士に、こういったオープンスペースでは、触れられない、微妙な部分、ですが、それがキーとなる部分も含めてご相談されるのがよろしいのかと存じます。

その上で、専門家の方の立場からどういった選択肢が考えられるか。
幾つか提示してもらい、そのメリットデメリット、そして、実行可能性等を鑑みて確認されると、おそらく、自然とできることとしては決まってくることが往々にしてあります。

餅は餅屋ですね。

本投稿は、2018年05月03日 14時00分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

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