相続税対策について
1.母が死亡。2階に10年以上、同じ家族に部屋を貸しています。(外階段で)
この場合、「貸家建て付け」と認められますか?なお、賃料は毎月相当額を頂い ていますが、所得税の申告はしていません。
2.相続税の申告は税理士にお願いすることにしますが、預貯金の出し入れについて は必ず過去5か年間の記録を取り寄せて調査するのでしょうか?
以上、よろしくお願いします。
税理士の回答

1.2階を相当の対価で賃貸していた場合には、1階部分は自用地、2階部分は貸家建付地の評価となります(床面積で按分)。また、他の要件も満たしていれば、選択によって貸付事業用として小規模宅地の減額の特例も適用することが可能になります。
2.税務調査では預貯金の動きに関しては、過去10年分の入出金を確認されますので、申告の際も同期間の動きは確認しておかれた方が良いと考えます。
誠に迅速・的確・丁寧なご回答を頂戴し、ありがとうございました。良く分かりました。

親族内に貸し付けている場合、通常、賃貸借は成立しない、自用として利用すると見做されます。
例外として、第三者と同様に、賃貸借契約書を締結し、賃料も相場で徴収し、それらを確定申告していれば、検討の余地がある、といったものとなりましょうか。
賃料相場も大事ですが、その前の前提として、通常、親族向けに貸し付けていませんし、出て行ってもらうのにも支障は無く、評価を下げる必要もありませんので。
今回は、賃料は相当額、とのことですが相場と比べたうえで、後は、過去の所得税申告が漏れているのをどう位置付けるかですが、税務署の立場に立てば、当然、所得税の申告書も確認しますし、整合性が取れないことは核にされることを念頭に、争うための理論武装をしていくことになろうかとは存じます。
他、通帳においては、相続人、また、場合によってはそこから移動があれば、法定相続人の履歴等にも波及して確認される、というのを前提にされるのが宜しいのかと存じます。
相続税負担が生じる方に限りませんが、贈与税申告は漏れることが多く、一種の精算課税的な側面も有しますので。

ご連絡ありがとうございます。
所得税の申告がされていないことについての説明が漏れていましたので補足いたします。
建物を適正な家賃で賃貸していたことが事実であれば、所得税の申告を行っていなかったとしても、相続税の財産評価においては貸家および貸家建付地として評価することになると考えます。
しかし、貸家建付地等として相続税の申告を行うことによって、過去の家賃収入が無申告であったことを税務署が認識する可能性があります。その場合には被相続人の生前の家賃収入に関して期限後申告を求められることも考えられます。
実務的には、貸家建付地として申告する場合には、過去の家賃収入に関する所得税の期限後申告(5年分)を自主的に行っておくことが望ましいと考えます。
服部誠先生、相田裕郎先生、お忙しい中ご丁寧なご回答、深謝します。

親族に対する貸付においては、税理士においては判断は二分します。
服部先生は容認派。
私は、反対派です。
親族内で、第三者間と同様の賃料を取る、というのは極めて稀な事例であり、実務において、私は触れたことがありません。相場と比較すると、難しく、これが可能であれば、幾らでも租税回避できる、というのが親族間の取引であり、法人を絡めれば、法人格否認の法理の適用と同様の類の性質を持つため、慎重に判断すべきと考える立場をとります。
踏まえて、当事例は、適用は難しい、と思われます。

相田先生、フォローをありがとうございます。
私の回答は言葉が足りなかったですね。
貸家建付地として評価する大前提として、他人に賃貸している場合と同様の賃貸借契約(借家人が借家権を主張できる契約)が存在している場合になります。
相談者様のご質問文の「外階段で」とのことから独立した家屋を想定し、「賃料は毎月相当額を」の文言から適正な賃貸借契約があることを想定して回答した次第です(その前提条件も明記すべきでした)。
全てにおいて容認している訳ではなく、「他人に対する賃貸借と同様の契約と実態がある場合において」という前提を補足させて頂きますのでご了承ください。
宜しくお願いします。
相田先生、服部先生、ご回答ありがとうございました。私の言葉足らずの表現で両先生に余計なご回答をお願いしてしまいました。2階の賃貸先は”赤の他人”という表現をすべきところ、”別の家族”という曖昧な表現にしてしまいました。”赤の他人”で且つ”相応の対価”を取っておれば「貸家建て付土地」として申告可能というご判断かと思います。何れにしましても、両先生の明解なご回答に敬服しております。

第三者に対して時価で貸していたのですね。であれば貸家貸付地評価も、小規模宅地の特例も適用できます。10年前から貸し付けていらっしゃいますので。
相田先生、早速のご回答、深謝します。

ご連絡ありがとうございました。
2階部分に対応する土地は貸家建付地評価で小規模宅地の減額特例、建物は貸家評価になります。
なお、過去の家賃収入の申告につきましては、納める税金が生じるかどうか試算してご判断ください。
宜しくお願いします。
1.遺言書には相続人4人のうち2人を指定して、「残余の遺産(金融資産)は折半するように」とあります。
2.預貯金の通帳・印鑑はその2人の内の1人が占有しており、被相続人の死亡以前に一部引き出したと言っています。
3.各預貯金の残高証明は被相続人の死亡時における残高であり、それより以前に引き出されたものは入っていません。
4.そこで税理士は、死亡前に引き出された金員については、控除分に算入するか否認するかを決めていくことになるかと思いますが、「残余の遺産」を確定する(即ち折半する遺産の額を決定する)には、控除・否認の状況を税理士に教えて頂かなければ相続人には分からない、ということになります。
5.質問が最後になってしまいましたが、税理士は「控除・否認」の状況を教えてくださるのでしょうか、あわよくば「折半する金額」まで教えて下さるのでしょうか、それとも、相続人同士で相談して決めなさい、ということになるのでしょうか。

すべて最終的に決めるのは相続人の方全員の合意の下となりますね。
税理士は、相続税法上の取り扱いにそして、相続財産に含めるもの、不要なもの、結果的に相続税の節税に繋がる分割方法等についての助言等はさせていただけますが、被相続人の方の意思、相続人の方としてどう相続させるのが当然、あるべき、といったものがあれば、そのスタンスの中で税務上の検討、選択肢をご説明させていただく、といったことになろうかと存じます。
遺言書に従うのも、遺産分割協議で決めることもどちらでもできますし、預貯金等については被相続人、また、少なくとも専有されていた方名義の預金口座等の履歴を見て、税務署の立場で、相続財産から漏れているのではないか、と思われるものが無いかといった視点でも拝見することが一般的です。
税務調査の論点の半分は生前に引き出された預金等名義預金と言われるものですから、これらを相続税の視点から、どういったものかのご説明をさせていただくことからスタートされることになろうかと存じます。
これらは、税理士が決めることでは無く、申告される方が決めることですし、また、申告書を見れば、どう申告したのかは判ります。
ただ、税理士の方にお任せすることになることが多いのが実情かとは存じます。
相続税申告においては、相続財産等の額、資産内容等にもよりますが、精算課税としての性格も有しており、生前の贈与等の無申告分の精算をこれを機にする、といったこともあります。
名義預金についての取り扱いが、税理士としては、法令、そして、実務上の取り扱いについて、相続税上の一般的な取り扱いと、何故、それが一般的なのかを丁寧にごせつめいさせていただくというのが相続税申告において、毎回、重要な説明事項になることになりますので。
相田先生、何時も丁寧・的確なご回答をしてくださり、ありがとうございます。良く承知いたしました。お忙しい中、本当に恐縮に存じます。
本投稿は、2018年07月12日 16時29分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。