使い込み分の相続税申告について
介護施設に入居した父から預貯金口座を預かっていた長男が、カードを使って毎月平均して15〜20万円程度ずつを下ろしており、一部は長男の家族の生活費に使い込んでしまっていることがわかりました。
5年ほどになり、総額はだいたい800万〜900万ほどになります。
父のために使ったものも(施設に届けなければならない衣服や嗜好品など)ありますし、自宅にまだ残っている母に、毎月手渡ししていた生活費も含まれてはいます。全額渡すのではなく、多めに引き出してその一部を長男が使っていたということです。
長男が長男家族のために使っていた生活費は使い切ってしまっており、今すぐに返済することは出来ないので、相続が発生した時に、長男の相続分から差し引いて返す(長男の取り分が減る)つもりのようで、遺産分割で揉めるということはないのですが、
このような場合、父が亡くなった際にしなければならない相続税の申告はどのようにしたら良いのでしょうか。
被相続人が介護施設へ入ったころから、それまでなかったような額のお金が頻繁に引き出されていると、税務調査の対象になりやすいと知り、それがとても心配です。
毎月15万から20万であれば、生活費と説明して認められるのでしょうか。
ちなみに水光熱費は別口座から引き落としになっています。
高齢の母のためにもなるべく税務調査は避けたいと思っています。
都合の良い話ではありますが、なんとか税務調査を受けなくて済むような申告の仕方があれば教えて下さい。
よろしくお願いいたします。
税理士の回答

まず、そのご長男が使ってしまった生活費について、お父様からご長男への贈与が成立していたかを考える必要があります。
贈与は、あげる側ともらう側で「あげますね」「もらいますね」の相互の意思があって成立します。
つまり、ご長男がお父様の承諾の上で生活費の援助を受けていたのであれば、扶養義務者相互間での生活費の贈与であり、贈与税の非課税に該当し、特に問題は生じません。
問題になるのは、ご長男が勝手にお父様のお金を自分の生活費に充てていた場合です。
この場合、お父様にお金をあげる意思が無いわけですから、ご長男はその生活費として使ってしまったお父様のお金を、お父様に返金する義務があります。
お父様からしたら、ご長男から返金を受ける権利があり、これが相続財産になってしまいます。
5年という月日の、ご長男が生活費で使ってしまったお父様のお金が、総額いくらになるのか正確な金額を割出すのは難しいでしょうから、推計になってくるかとは思われますが、相続財産にきちんと計上して相続税申告をすれば、税務調査のリスクは格段に低くなるでしょう。
ご相談者様の場合、税務調査リスクなども勘案した上で申告方針を慎重に考える必要があるとお見受け致しますので、書面添付制度を利用してくれる相続税に強い税理士に相続税申告をご依頼されることを、お勧めいたします。
松井先生
お忙しい中、早速のご返答をいただきましてありがとうございます。
長男はおそらく父には言っていないと思いますので、贈与には当たらないと思います。
万が一、父とのやり取りがあったとしても、何か正式な書類があるわけでもありませんので、単に口約束ということになり、介護施設代はきちんと口座引き落としになっているので、月によってバラバラの出金額でもあり(さすがに一度に50万以上というような高額引き出しはありませんが)「生活費」である、長男家族への経済的な援助である、と言っても税務署の方々に納得していただけるかというと大変不安です。
このような不正のようなことがあるような場合でも、税理士さんは相続に乗って下さるのでしょうか。
全てが初めてなことでもあり、また大変無知なもので申し訳ありません。

仮に贈与が成立していない場合、最終的にどの程度の金額をお父様の相続財産として計上するかは、税務調査リスクなどもご説明しながら、納税者の皆様と一緒に決めていくことになろうかと思いますが、相続税申告に不慣れな税理士ですと、この辺りの相談に乗ってもらえない、そもそも検討もしっかりしてくれない、といった事も考えられますので、お近くの相続税を専門にしている税理士事務所をお探しいただくのが良いでしょう。
なお、贈与は口頭でも成立しますので、どのような背景があったのか、しっかり事実確認をご長男からするのも大切です。
一般的に親子間で生活費の贈与に、契約書を作成するような方はいらっしゃらないですし、税務署も分かってますので、例えば、ご長男世帯の収入だけで生活費を賄いきれない状況があり、お父様から生活費の援助を受けていて、相続開始時点で費消してました、ということなら辻褄も合うので、それならさほど問題ではありません。
あとは、そういった背景をしっかり添付書面に記載できる税理士が申告書を作成していれば、税務調査リスクもそこまで高くはならないと思います。
松井先生
お忙しい中、ご丁寧にご回答をいただきまして、本当にありがとうございます。
心から感謝致します。
まずは、このようなグレーな事例の相談は税理士さんに門前払いされるのではないかと不安でしたので、実際にはお話を聞いていただけそうだということがわかり、それだけで大変安心致しました。
贈与だということがわかった場合にも、契約書などがなくても税務署の方々にそれを理解していただくことも可能なのだとわかり、とてもほっとしています。
母が心身ともにか弱いので、税務調査だけはなんとか避けられたらとの思いでいっぱいで、支離滅裂な文章を申し訳ありません。
父が亡くなってしまった時には、松井先生に教えていただいたように、相続税に強い税理士さんを探し、相談にのっていただいて、教えていただいた書類添付というものをぜひお願いしようと思います。
松井先生、このたび本当にありがとうございました。

とんでもございません。
ご安心いただけましたようで何よりです。
またお困りの事がございましたら、ご質問ください。
松井先生
お忙しい中、私のような者にもわかりやすくご丁寧にご回答いただきまして、本当にありがとうございました。
心より感謝しております。
本投稿は、2021年04月16日 13時57分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。