税抜経理会社の貸倒損失の仕訳について
山中雅明先生が以前、税抜経理会社の貸倒損失の会計処理の回答を拝見しますと、税抜金額で貸倒損失を計上すると回答されていましたが、例えば個別引当する懸念や破産更生の貸倒引当金繰入は債権額(税込金額)110を費用処理します。この年度の利益▲110です。
これが貸倒れると債権額(税込金額)110で貸倒引当金を取崩し、消費税申告書で貸倒損失額の消費税を控除します。
(貸倒引当金110/売掛金110)→貸倒年度の利益に影響なし→繰入からの累計利益▲110です。
貸倒引当金を設定していない場合は貸倒損失を計上します。
(貸倒損失 110 /売掛金110)→上記と同様に利益は▲110となります。
しかし、ご回答のように貸倒損失を税抜金額にすると、
(貸倒損失 100 /売掛金110)→利益▲100で消費税10の利益が多くなります。
(仮受消費税等 10
企業会計の観点から税抜の貸倒損失は適正な会計処理ではないと考えます。
貸倒損失は回収不能となった売上債権の損失額であり、売上(税抜)を取消すための損失では無いと考えられるため、消費税申告書上で貸倒損失額の消費税を控除できる仕組みにしているのではないでしょうか。
仮受消費税等と仮払消費税等の相殺による未払消費税等と申告書の納付額に差額が生じますが、それは租税公課控除又は営業外収益で会計処理するのが妥当ではないでしょうか。
税理士の回答
あくまで私の考え方とお捉えください。
消費税は本来、預かった又は預けた税金です。
税抜経理の場合は仮受(預った税金・負債)、仮払(預けた税金・資産)で処理しますので、ご質問の税抜経理での売掛金には未回収の本来預かるべき消費税10(負債)が含まれていますから、これを租税公課などの損益勘定で計上するのはおかしいと思います。
また、貸倒損失は損益勘定ですので、もともとの税抜売上100(収益)に対して110の貸倒損失を計上すると逆に損失が10多く計上されることになります。
仮受消費税等はあくまで負債勘定ですので、(貸倒損失100・仮受消費税等10/売掛金110)→利益▲100で消費税10の利益が多くなる、ということにもならないと思います。

私の私見ですが回答させていただきます。
まず最初に、貸倒引当金とは将来に発生するであろうその有する金銭債権の貸倒れによる損失の見込額を見積り計上するものです。従って、個別引き当て懸念債権であっても、損失確定額ではないということです。
次に貸倒れ時の処理ですが、山中先生の回答したとおり貸倒損失額は税抜金額で計上します。貸倒れた際の経理処理は、「差額補充法」で考えると解かりにくいですので「洗い替え法」で回答します。また、経理実務においても法的に債権が消滅した場合を除き、税法上「損金経理要件」がありますので貸倒れ時は「洗い替え法」での経理処理が望ましいと思います。
1、貸倒引当金の洗替処理
(貸倒引当金110/貸倒引当金戻入110)
2、貸倒損失の計上
(貸倒損失100/売掛金110)
(仮受消費税10
私見ですが、上記の仕訳のとおり貸倒損失を認定又は確定した時点で「売掛金110」の内、回収不能額100、国からの還付又は充当される消費税相当額10(回収額)と理解できます。
質問内容にもあるとおり「貸倒損失は回収不能となった売上債権の損失額」であり、その取引実態に基づいて上記のような仕訳になっています。従って、「差額補充法」であろうと「洗い替え法」であろうと結果は同じになり、利益は▲100になります。
最初に戻りますが、貸倒引当金は将来に発生するであろう損失見込額の見積り計上であり、必ずしも実際の損失額と一致するものではありませんし、企業会計は取引実態を適正に反映させることだと考えます。
以上、誤解なきようご理解ください。
前田先生、福田先生早々のご回答ありがとうございました。
ご見解では、貸倒年度において貸倒れた売上債権に引当金を充当する場合、
(貸倒引当金110/売掛金110)の仕訳は成立せず、
(貸倒引当金 100 /売掛金110)
(仮受消費税等 10
となるのでしょうか。
こうなるのであれば貸倒引当金を税抜きで設定すればよいことになり、貸借対照表の表示において貸倒引当金は資産控除法ですから消費税分が認識されなくなります。
論点は、貸倒損失が売上債権の損失なのか、実現した売上の取消しであるかです。
例えば3月に売上が実現し仮受消費税等を計上したうえで決算し消費税を納付しています。
翌年度、売上債権の消費税分は、貸倒により回収していませんから消費税は預かっていません。
(負債から資産になっていることがわかります。)
正常循環においては、代金が入金された時点で、立て替えている消費税分も入金され債権が消滅します。
つまり、売上本体分と先に納付した消費税の立替分も含めて回収不能となったわけですから、
売上債権の110が損失(貸倒損失)として認識されるのではないでしょうか。
貸倒損失は回収不能の売上債権が資産性を失ったことによる減損であることは明白です。
企業会計は、損益アプローチから資産負債アプローチに転換して18年経過しています。
消費税の10が還付されることは、会計ではなく、申告書の段階と考えます。
よって資産の譲渡に該当しませんから不課税取引でもあります。
また、申告書で貸倒損失の消費税を控除するのは任意とされています。
(法人税の源泉所得税の税額控除と同様の扱い)
以上のことから
(貸倒損失 100 /売掛金110)
(仮受消費税等 10
の仕訳は、企業会計の観点から不適切と考えざるを得ません。
(貸倒損失 110/売掛金110)とし申告書で10を控除(還付)する。
この控除した10は、納付額が10少なくなるため最終的に営業外収益10となります。
企業会計では営業利益と経常利益に反映する違いは大きいと考えています。
お忙しいところ申し訳ありません。
当初の回答でも記載しましたように、あくまで私見です。
企業会計原則や会社計算規則において私の知るうる限りでは、貸倒引当金や貸倒損失について、ご質問者様が記載するような方法を妨げる規定はないと思いますが、私は、売掛金の中に内包されている仮受消費税という負債の消滅として会計処理します。
貸倒に係る税額控除を結果として行わず、その分消費税額が少なくなったとしても、消費税は事業年度を通しての計算ですので10だけを抽出して営業外損益に表示することも致しません。

私の私見として回答させていただきます。
会計とは、その対象である経済的事象を正確に把握し、反映させる技法であると考えます。
それは当然に各時点ごとの経済的事象を正確に把握することも含まれます。
1、 貸倒引当金設定時
この時点において貸倒れ、損失が発生するか否かは、確実ではないため売掛債権総額(税込)に対して貸倒引当金を設定する又はせざるを得ないものと思われます。また、前回にも回答させていただきましたが、貸倒引当金は貸倒れによる損失の見込み額を「見積り計上」したものですので、必ずしも貸倒損失額と一致するとは限らないということです。
2、 貸倒損失時
「論点は、貸倒損失が売上債権の損失なのか、実現した売上の取消しであるかです。」
ここでの論点は、実現した損失額の認識だと思います。現実に貸倒損失が認定又は確定した場合には、国はその貸倒債権相当額の消費税を還付又は充当するとしています。経済合理性を追求する資本主義経済の日本にあって当然に回収可能性があるものは実行するのが自然な行為と思われます。従って、貸倒損失が認定又は確定した時点で「売掛金110」の内、消費税相当額10が回収可能となった訳であり、この時点において法的に国に対して未収債権を持ったことになります。ゆえに、実現した損失額は100部分になったと考えます。
以上、誤解なきようご理解ください。

質問者様に誤解を与える文言と判断して、「2、本文5行目の後半部分」について訂正させていただきます。
(訂正前)「~、この時点において法的に国に対して未収債権を持ったことになります。」
(訂正後)「~、この時点において国に対する未収債権の法的な根拠を持ったことになります。」
以上、誤解なきようご理解ください。
福田先生、前田先生、両先生の明確なご回答に感謝いたします。
両先生とも税務のベストアンサーと存じます。
最後になりますが、
資産の部に売上債権110と認識した時点で本体金額100+消費税10の性質のものではなく、
売上債権の110は、あくまでも得意先A社に対しての債権額です。(会社法も民法も同様の認識)
消費税申告書も「貸倒損失の額」から返還する消費税を割戻す計算方法になっています。
例えば20の精算配当が入金された場合
110-20=90 を申告書の「貸倒損失の額」として消費税を割戻計算します。
90×10/110=8が返還される消費税額(本来は国税の税率で計算しますがややこしいので地方消費税の計算は省略)
現金預金(得意先A社) 20/売上債権(得意先A社) 110
貸倒損失(得意先A社) 90/
両先生のご見解から次の仕訳が追加され、
[※]仮受消費税(行政) 8/貸倒損失(行政) 8 ← 行政から返還されるので損失を減算
になるものと推定されます。
貸方の貸倒損失(行政) 8は、行政からすれば法的に預かっていない消費税を立替て納付していることが確定したので返還するだけで、得意先A社の債権の一部を返済してくれたわけではありません。
そのため貸倒損失の減額ではないと考えます。
よって[※]未払消費税等(行政) 8/営業外収益(行政) 8 ← 過年度消費税返還益
の仕訳が妥当と考えます。
長文による失礼をお許しください。
両先生のお忙しい時間を割いて頂きありがとうございました。
記載漏れしました。
貸倒損失に係る仮受消費税等を計上してもしなくとも経常利益以下は同額となります。
また、所得金額も同額となりますので納付すべき法人税の額には影響しません。
本投稿は、2019年12月25日 02時20分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。