売掛金について
工事の出来高が80%の状態でも請求書を出している場合は、売掛金となるのでしょうか
税理士の回答

80%の出来高で請求できることが契約において合意されていれば売上を計上できると思います。
工事収益の認識基準として、工事完成基準と工事進行基準は企業会計原則や工事契約に関する会計基準に規定されています。
工事完成基準は、収益の額はその目的物の全部を完成し、相手に引き渡した日の属する事業年度に益金算入します。つまり目的物の提供が完了するまでは売上高は計上されません。
工事進行基準は、工事の進捗に応じて工事収益を認識する基準であり、その進捗度を一定の基準で算出して適正な原価見積りをする必要があります。毎月出来高で請求する方法とは異なり、必ずしも請求書を交付することはありませんが、期間損益を適正に把握する工事収益の認識基準であります。
会計基準等では、工事進行基準が原則適用であり、適正な工事原価の把握が出来ない場合に工事完成基準を適用することになりますが、適正な工事原価の算出は複雑であり、工事進行基準を適用しているところは少数ですので、工事完成基準で工事収益を認識するのが一般的です。
慣習的に毎月出来高で請求する工事は、工事が部分的に完了したところまでを月末締め等で請求しますが、その金額は前受金(未成工事受入金)であり、その前受金を工事収入として計上しているだけに過ぎません。工事完成基準であっても工事進行基準であっても前受金で処理するのが正しい会計処理となりますが、多くの事業者が建設業会計ではなく商業簿記で会計処理をしているので、出来高請求額を前受金で処理せずに売上高に計上しているのが現状となっています。
すなわち出来高請求額を売上高に計上する方法は、実務的な会計処理に過ぎず、正しい会計処理ではありません。出来高請求額を前受金勘定に一旦計上し、工事が完成した時に前受金勘定から売上高(完成工事高)に振り替えるのが正しい会計処理となります。
以上のとおり結論的には工事の出来高が80%の状態でも請求書を出している場合は、売掛金(完成工事未収金)で計上するのではなく、請求額が入金されたときに前受金(未成工事受入金)で経理するのが正しいと考えますが、実務上は売掛金であっても弊害はありません。(上場企業等では不適切な会計とみなされますが)
ところで出来高請求分を前受金勘定で処理せずに売上高で計上するならば、出来高請求分が工事収益になりますが、税務署はこのような会計処理をしてもスルーします。工事が完成する前に売上高を先行して計上していることになりますので、正しくない会計処理ですが経常的に行われています。
本投稿は、2022年10月04日 09時53分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。