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電子帳簿保存法の適用について(貿易書類の場合)

私は、輸出を行っている会社で事務を担当しております。
今までは下記の書類を印刷してファイリングし保存しておりました。
・インボイス(印刷後社判押印して保存)
・BL(船荷証券)
・合計請求書(しめ毎にインボイスを集計した資料)
・入金明細(銀行から原本が送付されるもの&WEBで印刷したもの)

しかし、上司より国内業務同様輸出業務も電子データ保存のみで出来ないのかと聞かれております。

以下、税務上(法律上)適用可能かアドバイス頂けますでしょうか。
①輸出業務に関しても電子データにて保存が可能なのでしょうか。
②国内業務分(輸出に係る国内仕入含む)は証憑保存システムにて保存しておりますが、輸出業務の書類については会社のサーバー保存となります。保存方法の違いで適用の可否が決まるのでしょうか。
③印刷後社判を押してPDF化したもの・紙で届いた入金明細(電子保存ならPDF化)は電子データでの保存が適用されますでしょうか。


税理士の回答

① 結論
輸出書類であっても、電子帳簿保存法の対象として電子保存は可能です。
ただし、
保存区分ごとの要件(電子取引/スキャナ保存/電子帳簿)を満たす必要があります。
検索要件、改ざん防止措置、保存場所(サーバー・クラウド)の整備
この3点を満たしていることが前提です。
実務では 「保存は可能だが、やり方を間違えると否認リスクが高い」 という領域なので、要件を外さない運用が必要です。

② 理由
1. 輸出書類も電子保存してよい
電子帳簿保存法は「国内/海外」を区別しません。
税務申告のために保存が必要な書類であれば、輸出書類も電子保存可能です。
【可能な例】
インボイス(輸出用)
B/L(船荷証券)
シッパーレター
パッキングリスト
送金依頼書
入金明細
→ すべて電子保存の対象になります。

2. 保存方法(サーバー or 証憑システム)で可否は決まらない
どこに保存するかは自由です。
ただし、保存方法が違っても 「同じ要件を満たす」 必要があります。
最低限必要な要件
検索性(取引日・金額・取引先で検索可能)
改ざん防止措置(タイムスタンプ or 運用規定+訂正削除ログ)
真実性の確保(ファイル名ルール・アクセス制限など)
保存期間:7年間(法人税)
→ サーバー保存でも可能ですが、要件をシステム的に担保できるかがポイントとなります。
3. 印刷後に押印 → PDF化したものを保存してよいか
結論:保存できます。
ただし、保存区分が異なります
(A)電子取引
メール添付・WEBダウンロードなど「元が電子」のもの
→ 紙に印刷して保存は不可
→ 電子のまま、電子取引要件で保存必須
※ インボイスを取引先からメールで受領しているなら電子取引保存になります。
(B)スキャナ保存(紙→電子化)
紙で受け取った書類(B/L・銀行の郵送明細など)は、
→ スキャナ保存が可能
→ 要件
 ・読み取り後、保存要件を満たすこと
 ・カラー推奨
 ・解像度200dpi以上
 ・検索要件
→ 押印した後にスキャンして保存しても問題なし。
→ 紙で届く入金明細のPDF化は適法です。

ご回答への返信が遅くなり大変申し訳ございません。
国内取引は弊社グループの各社ともに電子保存用のシステムを導入しておりますが輸出用に上記用件を満たすのは難しいため、現在の状況のまま電子保存に切り替えるのは検索用件やタイムスタンプ等により難しそうです。
その場合、
①以前の通り紙での保存を行うことは可能なのでしょうか。
②電子保存へ必ず切り替えなければならないのでしょうか。
 印刷の手間や用紙代はかかりますが、新たなシステム導入が出来ない可能性もあります。
 電子保存への移行期間等の指定はあるのでしょうか。
③メール添付・WEBダウンロードなど「元が電子」のもの
→ 紙に印刷して保存は不可
→ 電子のまま、電子取引要件で保存必須
とご記載頂きました。
BLや船運賃等の請求書はメール添付で届いており、現在はそちらを印刷して保存しております。
上記の要件は全て電子保存に切り替えた際の要件で紙保存の場合は適用されないという理解でよろしいのでしょうか。

まず大前提として、電子帳簿保存法は「電子データで受け取った書類(電子取引データ)だけは、電子のまま保存が義務」という仕組みに すでに完全移行済み(2024年1月〜) です。
つまり、
紙保存できるもの
絶対に紙保存に戻せないもの(電子取引)
が明確に分かれています。

以下、ご質問ごとに回答します。
①「紙の保存に戻すことは可能か?」
結論:可能な部分と、不可能な部分があります。
(A)元から紙で受領する輸出書類
例:船会社から紙の原本BLを受領、銀行から郵送される入金通知
→ 紙保存のままで問題ありません(現行どおりです)
(B)メール添付・WEBダウンロードで受領するBL・請求書
例:エージェントからPDFで届くBLドラフト、船運賃の電子請求書
→ 紙保存は不可(法律上すでに不可能です)
→ 電子データのまま保存が義務(電子取引)
つまり、全部を紙に戻すことは制度上できません。
紙保存が許されるのは「元から紙の書類だけ」です。

②「電子保存に必ず切り替えなければならないのか?移行猶予は?」
電子保存が必須なのは “電子取引” のデータのみ
メール添付のPDF
WEBダウンロードの請求書・船荷証券
など“電子で受け取ったもの全部”が対象となります。
猶予期間はすべて終了しており、
2024年1月1日以降は 義務化し、本来は紙保存不可 の状態です。
※ ただし、後述する“運用緩和”があります。
③「紙保存で続けてよい例外は?(運用緩和の実務)」
国税庁は実務負担に配慮し、「真正性を害しない限り、紙保存を直ちに否認しない」という“当面の運用緩和”を出しています。
具体的には
以下の要件を満たせば、電子保存していなくても直ちにペナルティを課さないという扱いとなっております。
取引データを 保存せずに破棄していないこと
税務調査で すぐに提示できる状態 にあること(メール・PDFの保管がある)
不当な改ざん・加工をしていないこと
→ この場合、紙保存していても“すぐに違法とは扱わない”
→ しかし 法律上は電子保存義務があるため「紙保存で完全OK」ではない
→ あくまで “今すぐ罰しない”という緩和措置
④ご質問③への回答
上記要件はすべて電子保存へ切り替えた場合の要件で、紙保存の場合は適用されないという理解でよいか?
結論:誤解があります。
電子で受け取った書類は「電子保存義務」がある(紙保存は本来NG)
ただし 現時点では、紙保存にしていても罰しないという“運用緩和”がある
なので 「紙保存なら要件不要」という意味ではない
つまり、電子保存に切り替えた場合だけ要件が必要
紙保存なら要件ゼロでOK
ではなく、
電子取引データは電子保存義務があるが、紙保存していても現行は“直ちには否認しない”という猶予状態にあるという整理が正しいです。

⑤会社としてどう対応すべきか
当面(1〜2年)
電子保存が難しい場合は 紙保存継続でも運用緩和で対応可能
ただし、原本のPDF・メールは必ず保管
(紙だけ保管して電子データを削除すると、確実にアウト)
中期(システム導入が難しい場合)
社内サーバーに
・フォルダ分け
・ファイル名で検索要件確保
・改ざん防止として「削除禁止」「履歴残る設定」
などの“最低限の電子保存体制”を整えれば、外部システムなしでも法令対応は可能です。

本投稿は、2025年11月27日 18時15分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

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