夫婦の口座間での預金の移動による贈与税について
結婚15年の夫婦です。
昨年5月に1000万円を妻名義の定期口座から、
夫名義の給与天引き型の積み立て預金の口座に移動させました。
同銀行内の口座なので、振り込みという処理ではなかったように思います。
将来的に、こどもの教育資金や老後の生活費にしようと、
利率の良い夫名義の口座に移し替えたのですが、
贈与税の対象となる可能性があることを、最近になり知り、動揺しております。
積み立て口座ですので、生活費として引き出した履歴はこの1年ありません。
ちなみに、妻は産後より専業主婦で、
妻名義の定期の預金は、主に夫の収入から貯めたものです。
素人なりに調べるうちに、夫が妻に借りたということにして、
借用書を作り、妻名義の口座に返済という形で全額戻すという手法も
あり得るのかと考えましたが、どうなのでしょうか。
その場合、納税の期限を超えてからの手続きでも間に合うのでしょうか。
また、借用書についても、記載した日付を何らかの公的な機関で認証してもらうことが必要なのでしょうか。
まとまらず、申し訳ありません。
夫婦でコツコツ節約し貯めたお金を、少しでも金利の良い形で、との思いでの行動が、かえって大きな損失を招いてしまうと考えると悲しくてなりません。
お力をお貸し頂けると幸いです。
何卒よろしくお願い致します。
税理士の回答

同様のご相談で悩んでいらっしゃる方が実は多く、お気持ちお察しいたします。
本件の場合、「奥様名義の1000万円の定期預金」の真の所有者が誰であるか明らかにすることが、この問題解決の第1歩かと思います。
税務は実質で判断しますので、今回の定期預金が名実ともに奥様の支配下に移った奥様固有の財産だったのか、それとも奥様は単なる名義人であり実質的な所有者はご主人であったのか、あらゆる角度から検討し真の所有者を判断することが必要になります。
俗にいう「へそくり」に関しては、その所有権をめぐって税務当局と争いになっているケースが多くあります。
本件のケースで考えた場合、
① 定期預金の資金の拠出者は誰であったか
② 拠出者がご主人であった場合に奥様との間で贈与の事実があったか
③ 奥様名義の定期預金は奥様が自由に使える状態であったか
④ その定期預金を実質的に支配していたのは誰か
これらを総合的に勘案して、奥様名義の定期預金の真の所有者を判断することになります。
仮に、上記の各項目に関して、
① 資金の拠出者はご主人であった
② お二人の間で贈与した認識もその事実もない
③ 奥様の意思だけで奥様が自由に使うことはできなかった
④ 管理支配していたのはご主人であった
となりますと、奥様は名義だけのものであり、この定期預金の真の所有者はご主人と考えることになります。
あらゆる角度から考察した結果、真の所有者がご主人であると判断できるものであれば、奥様名義にしていた「名義預金」を、ご自分の名義に正しく戻したということになりますので、そこで贈与税が課税されることはないと考えます。
上記①~④の事実関係を明確にして、贈与ではない旨を主張されてはいかがかと思います。
以上、ご参考になれば幸いです。
早々のご回答、誠にありがとうございます。
ご提案頂いた①〜④の項目についてですが、
①②に関しては、クリアですが、
③④は、妻が、キャッシュカードを有し、
自由に引き出せる状況でした(引き出しの事実はありませんが)。
このような場合、やはり、真の所有権が夫であるとすることは、
難しいでしょうか。
或いは、確定申告の時期を過ぎてしまいましたが、
贈与の意志は互いになかったということで、
1000万円を妻の口座に移し替える方が良いのでしょうか。
その場合、再度贈与税をかけられる可能性や、
大きなお金が頻繁に動くことで目をつけられやすくなるのでは、
という不安もあります。
或いは、投資のために、妻から夫に貸与したとして、
金銭消費貸借契約を交わすということも可能ですか。
もし交わすとして、それは公証役場などでの証明がなければ、
有効とならないのでしょうか。
さらに質問を重ねてしまい申し訳ありません。
お忙しいところ、恐縮ですが、ご教示頂けると幸いです。

ご連絡ありがとうございます。
前述の①②がクリアし、実際には預金の引き出しがされていないという状況から鑑みますと、真の所有者はご主人と考えて宜しいかと思います。
過去の裁決事例において、妻名義の預金等に関して国税不服審判所が次のように判断しているものがあります。
≪平成19年4月11日裁決≫
(資産の帰属/妻名義の預貯金等)から一部抜粋
「財産の帰属の判断に当たっては、単に名義人が誰であるかという形式のみにより判断するのではなく、その財産の取得原資、管理及び運用の状況並びに帰属の変動の原因となる事実の有無等の客観的事実を総合的に勘案して判断すべきものである。」
「生活費の余剰金が妻に贈与されたことを具体的に明らかにする客観的証拠はない。」
「総合判断すると、本件預貯金等については妻の名義になっているものの、認定事実のとおり、その原資は夫が拠出したものであって、本件預貯金等は夫に帰属すると認めるのが相当である。」
仮に、本件定期預金が奥様のものであると税務署が認定するには、上記2項目の通り、「ご主人から奥様へ贈与があったこと」を税務署側が立証する必要があります。
これは事実上、不可能なことかと思いますので、素直に考えれば本件定期預金はご主人の財産であったということになるのではないかと思われます。
そのためにも、本件定期預金の形成経緯(ご主人の収入で形成されたこと)、贈与の事実はなかったこと、名義は奥様であったが実質的支配者はご主人であったこと、などを明確にしておくことが必要です。
上記見解に不安があり、夫婦間の貸し借りにする場合の契約書に関しては、特に公正証書にする必要はないと考えます。一般的な金銭消費貸借契約書を作成し、両者で署名・捺印をして頂ければ問題ございません。
以上、宜しくお願いします。
重ね重ねありがとうございます。
過去の判例読ませて頂き少し安心致しました。
妻の口座の真の所有者を夫のものであるとするなら、
下手に賃借契約書など作り、返済の記録を残せば、
上記見解と相違し、
そもそもが夫から妻への贈与があったことが前提
となってしまうので、
そうしないほうが良さそうですね。
お時間割いて頂きどうもありがとうございました。
大変参考になりました。
本投稿は、2015年06月11日 15時11分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。