住宅取得目的の生前贈与が多すぎて返金したい
21年3月に夫名義でハウスメーカーと契約をしました。
その後妻の父から生前贈与の話があり、総額550万円を分割して贈与を受けました。
10月に夫名義で住宅ローンの契約をしました。
融資額+贈与440万円(暦年贈与110万を引く)が見積もりを上回り、ハウスメーカーへの支払いで消費しきれなさそうなので一部父へ返金したいです。
4点質問です。
・普段娘が管理している娘名義の口座に、一時的に父が通帳を保有し11回に分けて入金した
→名義預金に該当しますか?
→贈与契約書は何枚必要ですか?
→年内の返金はいくらまでなら問題ないでしょうか?
→返金方法は娘名義口座から父名義口座への送金が良いでしょうか?
税理士の回答
質問者の趣旨は、当初550万円の贈与を受けたけれども、住宅ローンの借入額(数字の記載がないので仮に3,000万円とします。)と合わせると、住宅の値段(仮に3,350万円とします。)よりも超えてしまい、住宅資金贈与を550万円受けると、住宅取得控除を受けれる金額が当初予定の借入残高3,000万円から2,800万円に減少してしまうことから(住宅資金贈与の金額を先に充てることになっています。)、住宅資金贈与の金額を350万円に変更するために、贈与を受けた金額から200万円を返金したいということで、これは問題ないかという前提で、述べてみたいと思います。
まず初めに、義父と娘である妻との間の当初の贈与の合意内容が、いつ、いくら、どのような方法でお金を贈与する約束であったかということが問題になります。当初は口頭による約束であったとしても、贈与契約書の書面を作成する場合の内容は、あくまでもこの口頭での合意内容を記載して書面化する必要があります。おそらくATMでの1日の引出可能額が50万円が上限であったことから、50万円を11回に分けて通帳をつかって入金したものと思われます(振込の方法でないことから、誰からの入金か分かりません。)。とすると、一般的には、ある日に550万円贈与する約束ができて、履行として50万円ずつ11回に分けて交付する内容であったと推測されます。したがって、このように考えた場合には、贈与契約書は1通となります(550万円を贈与する、履行方法として50万円ずつ11回に分けて交付するという内容になります。)。
次に、質問者の多すぎて返金するということが、法律的にみるとどう考えるかについてですが、これは贈与契約の一部200万円について合意解除した(後からやめにした)とみることになると考えらえます。しかし、後から200万円をやめることにした理由が、住宅控除を受けることができる金額が減少してしまうのでやめにしたということでは、やめた理由としては合理的な理由があるとは認められないでしょう。また、返金した200万円について、今度は妻から義父への贈与であるという指摘がされる可能性も否定できません。それでは、贈与を受けた550万円は返金処理しないでそのままとして、その内訳を住宅資金として350万円、家財道具などで200万円としてするならば、住宅資金贈与は350万円となりますので問題がないようにもみえますが、通常住宅取得時にまとまったお金を渡すのに、一部は家財道具代として交付するということは考えられません。つまり、いずれの考え方も合理性がなく、税務署に否認される可能性があります。最後に、11回入金額のうち7回分の350万円だけを住宅資金贈与として申告する方法も考えられますが、後から連続して入金している200万円の贈与を指摘された場合に、これは住宅資金贈与ですといって非課税の取扱いを受けることもできません。いすれにしても、後からつじつま合わせをするために、一部を返金する処理はやめた方がよいと考えます。なお、名義預金になるかという点ですが、妻が通帳を管理していることから、たまたま義父が贈与の履行の手段として通帳を預かったにすぎないので名義預金にはなりません。今回の事例では、通帳の入金や出金の事績だけを見ても、そのお金が贈与なのか何なのかは分かりませんので、税務署から聞かれた時に、連続する合計11回の入金の計550万円について、合理性のある回答ができるようにする必要があります。
本投稿は、2021年12月01日 17時29分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。