給与と外交員報酬の区分けについて
先日、税務調査において従業員への給与支払いについて指摘を受けました。
事業内容は不動産仲介業です。
1例であげると、基本給17万円、外交員報酬6万円+歩合給等としてあります。
給与所得として、基本給17万円部分については事務職として労働契約書を外交員報酬部分については業務委託契約書を締結しております。
税務署からは、基本給と外交員報酬の違いを示すように言われています。
(実務に何の違いがあるのか?という意味だと思います)
何かしら、先方も納得できそうな説明材料はありませんでしょうか?
よろしくお願いいたします。
税理士の回答

石割由紀人
税務調査で指摘された「基本給」と「外交員報酬」の違いについて、納得してもらえる説明を準備するためには、それぞれの性質や実務上の違いを明確にし、法的な観点や具体的な事例に基づいて説明することが重要です。以下にポイントを示します。
1. 基本給(給与所得)と外交員報酬(業務委託報酬)の違い
1. 契約形態の違い
基本給(給与所得): 労働契約に基づくものです。従業員が会社の指揮命令下で働き、勤務時間や業務内容が会社によって管理されます。
外交員報酬(業務委託契約): 独立した業務委託契約に基づくもので、個人事業主としての性質を持ちます。自己責任で成果を上げる形態であり、勤務時間や業務内容において自由度が高いことが一般的です。
2. 税務上の取り扱いの違い
基本給(給与所得): 給与として源泉徴収され、会社が社会保険料の負担も行います。
外交員報酬(業務委託契約): 外注費として扱われ、源泉徴収(所得税のみ)を行いますが、社会保険料は個人が負担します。
3. 業務内容や働き方の違い
基本給部分に相当する事務職の業務は、内勤的な業務であり、従業員として決められた時間内に作業を行う。
外交員報酬部分は、顧客との交渉や営業活動など、成果に応じて報酬が支払われる形態であり、個人の裁量に任される範囲が広い。
2. 実務上の具体的な違いの説明
税務署に説明する際、以下のような実務上の違いを整理し、書面や証拠を用意すると納得されやすくなります。
1. 労働時間管理の違い
基本給(給与所得)部分は、就業規則に基づく労働時間(例: 9時~17時)に従い、タイムカードや出勤簿で管理されている。
外交員報酬部分は、自由な裁量で働くものであり、営業活動の時間については会社が指示していない。
2. 業務指示の有無
基本給部分の事務職は、上司の指示の下で作業を行う。
外交員報酬部分は、成果物(契約件数や売上など)に対して報酬が支払われるもので、具体的な業務指示は行われない。
3. 報酬計算の基準
基本給部分は固定額で支給される。
外交員報酬部分は、歩合給や成果報酬であり、売上に応じて変動する。
4. 契約内容の違い
労働契約書には、会社の指揮命令下での業務や就業時間、給与に関する事項が記載されている。
業務委託契約書には、報酬計算方法や成果物に基づく支払い条件、委託範囲などが明記されている。
3. 裏付けとなる書類や資料の準備
税務署に提出できる書類として以下を用意しましょう:
労働契約書と業務委託契約書の写し(それぞれの契約内容を明示)。
タイムカードや勤怠管理表(基本給部分の勤務実績を示す)。
報酬支払い明細(外交員報酬部分が成果報酬であることを証明する)。
営業活動報告書や成果物の記録(外交員報酬部分の成果を示す資料)。
4. 追加説明として考えられるポイント
税務署が懸念するのは、業務委託契約が実質的に「給与所得」として扱うべきものである可能性です。実態として、外交員報酬部分が「独立した業務委託契約」に基づく業務であることを、上述の書類や説明で強調することが重要です。
外交員報酬部分が、基本給に含まれる給与所得の一部ではなく、別業務に対する報酬であることを明確にしてください。
石割先生、ご丁寧に回答いただきありがとうございます。大変参考になりました。
本投稿は、2024年11月25日 14時13分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。