税務調査時のメールの提出について
売上高2000億ぐらいの企業の経理マンです。
国税局による税務調査が入りました。
指定する従業員の調査期間中のメールをすべて見せろと言ってきました。
メールをデータですべて見せて、そこからいろいろと波及するのが嫌だったので「対象案件のメールをこちらで絞って、提出する」と言ったのですが、それだと、会社側で怪しいメールを隠す恐れがあるので、メールを絞る作業は国税局側で行う、と言われました。
おそらく対象は数名の従業員だけだろうと思い、システム部門に相談して、妥協案として、対象者、対象期間、キーワードの3点でメールを絞って、その抽出結果を国税側に提出するということでいったんは落ち着きました。
その後、実際に国税側から対象者のリストを渡されると、対象者は50人ほど、対象期間3年で、対象者はほとんどが社長を含む役員ばかりでした。
対象者が思いのほか多かったので、この作業をシステム部門に依頼すると大変な作業になります。
また、重要事項が含まれている役員のメールをキーワードを絞った上とはいえランダムに提出することを上司に相談すると、それは絶対に辞めろと言われました。
私自身、役員のメールは税務調査云々に関係なく、1社員が見てはならないメールが多々あり、見たくないです。
最終的には最初にこちらから提案した「対象案件のメールをこちらで絞って、提出する」にしたいのですが、国税側が、それはダメだと言うことは目に見えています。
国税側をうまく納得させるにはどのようにすればよいでしょうか?
法的根拠を示して「それはやりすぎだ」と言えるのがベストなのですが。
税理士の回答

顧問税理士の方はいらっしゃらないのですか?その方の責任をもって、断固戦うのか、戦うにあたってもどの場面で何を戦うのかになるとは思うのですが。メールが主戦場になるのでしょうか。
顧問税理士はもちろんいますよ。その前に一般的にどうなのかがわかっていないのでお聞きした次第です。
国税の指示するやり方に従わなければならないのかがわからないのです。
従うとなれば役員に説明しなければならない等社内手続き上面倒なことが生じてしまします。

公表裁決等見ていただくのがよろしいのかと存じます。基本的に、すべて依頼があったら開示しなければならないもの、として理論武装はされています。

岡本好生
税務調査で電子メールの提出を求められることが多くなっているようです。
この問題に関連して調査官の質問検査権についての裁判例はないようですが、私は結構判断は微妙ではないかと思っています。
国税通則法には下記の規定があります。犯罪捜査じゃないんですから、証拠になりそうなものを片っ端から持っていくことはできないはずです。
調査官の持つ権限は、あくまで「特定の取引についての資料の確認・提示を受ける権限」でしょうから、電子メールを検索する際のキーワードは特定の取引に限定していいはずです。メールを抽出するためのキーワードが妥当かどうかが重要です。さらに、抽出したメールの中にも契約により秘密保持の必要なものが含まれてはいないかも検討すべきでしょうね。
国税庁の「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」の問5では、社員が操作してディスプレイの画面上で確認することを前提にしているようです。
私だったら、まずキーワード限定でかなり絞り込ませたうえ、面前でそれをすべて読ませて特定の取引に関係のあるものしか持ち帰らせないようにすると思います。
国税通則法第74条の8(権限の解釈)
第74条の2から前条まで(当該職員の質問検査権等)の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
参考URL:
国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm

税務調査は拒否できるのかという点ですが、
税務職員には税務調査をする権利(質問検査権)が与えられていると同時に、納税者には税務調査を受ける義務(受忍義務)があります。
正当な理由があれば別ですが、税務調査を拒否したりすると罰則があります。
任意調査ではあっても事実上は強制的なものであり、これを間接強制と呼んでいます。任意調査ではありますが、拒否すると不利益を被ることがあります。
法人税法第162条においては、税務調査を拒否した場合、「一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する」と規定されています。
法人税法
第百六十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
一 (略)
二 第百五十三条又は第百五十四条第一項若しくは第二項(当該職員の質問検査権)(これらの規定を第百五十五条(質問検査権に係る準用)において準用する場合を含む。)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ若しくは忌避した者
三 前号の検査に関し偽りの記載又は記録をした帳簿書類を提示した者
岡本先生、ありがとうございます。
「特定の取引についての資料の確認・提示を受ける権限」は、国税通則法の
どこかに記載されているのでしょうか?
山中先生、ありがとうございます。
税務調査の拒否をお聞きしているのではなく、調査官の指示するメールデータの提出が社会通念上受けなければならないのかをお聞きしている次第です。

個人的なメールの提供を拒むことは、問題ありません。

任意の税務調査においても税務調査官とは良好な関係を作りつつ税務調査に臨まれたら良いと考えます。
個人的なメールは提出しなくとも、会社の取引に関するメールを分かりやすく提出されたら良いと考えます。

(質問検査等の対象となる「帳簿書類その他の物件」の範囲)
1-5 法第74条の2から法第74条の6までの各条に規定する「帳簿書類その他の物件」には、国税に関する法令の規定により備付け、記帳又は保存をしなければならないこととされている帳簿書類のほか、各条に規定する国税に関する調査又は法第74条の3に規定する徴収の目的を達成するために必要と認められる帳簿書類その他の物件も含まれることに留意する。
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/01.htm#a01_5
メールデータも、含まれると思います。
富樫先生ありがとうございます。メールデータが含まれていることは知っているのですが、どこまで出すべきかは明確ではないので、その判断に困っています。

基本的には、個人的メールも含め、すべてと思います。
必要かどうかを判断するのは質問検査権がある税務当局と思います。
問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を求められることがありますが、対象となる帳簿書類等が私物である場合には求めを断ることができますか。
法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することができるものとされています。
この場合に、例えば、法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。
https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm

岡本好生
お返事が遅くなりました。
「特定の取引についての資料の確認・提示を受ける権限」の件ですが、通則法には明確に書かれていません。
先に書いた国税通則法第74条の8(権限の解釈)
第74条の2から前条まで(当該職員の質問検査権等)の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
の解釈の問題です。なんでこのような条文をわざわざ入れているのかということです。
この条文については通達が出ておらず意味が明確ではありませんが、少なくとも文理解釈上、税務当局の質問検査権は犯罪捜査権ほど広範なものではないことは明らかですし、納税者を犯罪者とみなして行う調査は違法だということも明らかでしょう。
ウィキペディア では、「捜査とは、犯罪に対し、捜査機関が犯人を発見・確保し、かつ証拠を収集・保全する目的で行う一連の行為である」のに対し、「調査とは、ある事象の実態や動向の究明を目的として物事を調べること」です。
一般的な用語では、調査とは事象を特定して行うものです。そこになんらかの問題があるかもしれないという不明確な目的で調査する権限はないように思います。
法人税の調査であれば法人税額に影響のないことについて質問検査権がないのは当然ですし、答える必要はありません。特定の事象を明らかにするという目的がないものについては、調査権の範囲を超えているのではないでしょうか。いずれにしても、税務調査の現場では、問題があるから調査を拒んでいると思われるのを避けるために権限の濫用が起こりがちです。機会があったら法廷で争ってみたい問題です。
フリーハンドの権限を持っているわけではないので、「調査の目的とそのためにどんなキーワードで検索するか、それが質問検査権の範囲内である理由を文章で明確にしてもらわないと社内手続が通らない」ぐらいのことは言ってもいいと思いますよ。

任意調査で見せないこともできますが、非協力な対応で対立的な関係となることは、何のメリットもありません。
見せないことで、不信感が増して、徹底的な調査が行われるであろうことは、容易に想像できます。
皆さん大変ありがとうございました。大変参考になりました。

公表裁決に理屈が沢山ありますので、その中で稟議書になりそうなものを見繕いされれば宜しいのかとは存じますが。
貴社の状況に即したものがあるはずですので。
すべて提供せざるを得ないケース
一部提供すべきケース
拒否できるケース
全てのケースがあります。
本投稿は、2018年07月28日 21時05分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。