役員退職金を損金算入して節税するときのポイント【まとめ】 - 節税や実務に役立つ専門家が監修するハウツー - 税理士ドットコム

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役員退職金を損金算入して節税するときのポイント【まとめ】

役員退職金の決め方

役員退職金とは、退任する役員に対して長年の功労に報いるために支給するもので、報酬の後払いとして位置付けられています。「役員退職慰労金」や「退職給与」ともいわれています。

役員退職金は一般的に、「役員報酬額」「在任期間」「社内での功績」などを考慮して金額が決められます。

役員退職金が支給されると、多額のキャッシュアウトが発生しますが、適正な金額であれば全額損金に算入できるので、節税に有効です。その一方で、不相応に高額な役員退職金は法人税法上では損金算入が認められないため、金額の決め方には注意が必要となります。

なお、具体的な金額の決め方は、損金算入できる役員退職金の計算方法で紹介します。

役員退職金規定を作る

役員退職金を支給するには、定款に定められていない場合は、株主総会の決議で金額を決めることが会社法で定められています。ただ、役員退職金を定款で定めてしまうと、金額が変更になるたびに定款も変更が必要になるため、株主総会で金額を決定するのが一般的です。

なお、役員退職金を支給することや、算出方法などについてまとめた「役員退職金規定」を作成しておくといいでしょう。役員退職金規定がない会社も少なくありませんが、退職金規定がなかっために税務調査で否認されたケースもあるため、役員退職金規定の作成は不可欠といえます。

役員退職金を支給するメリット

役員退職金を支給すると、会社にとっては以下のようなメリットがあります。

全額損金に参入できる

前述したとおり、役員退職金は適正価格であれば全額損金にすることが可能です。会社は役員退職金を支給することにより、課税所得を減少させ、法人税を節税することができます。

また、役員退職金は特別損失として計上できます。本業には直接関わりない「イレギュラーな損失」とみなされるので、通常の損失と異なり、銀行評価を下げる心配がありません。

社会保険料の対象外

役員報酬を支払った場合は、労使折半を含めて約30%の社会保険料の負担が発生します。一方で役員退職金は社会保険料の対象外のため、社会保険料を支払う必要がありません。

それでは役員退職金を支給することで、具体的にどれくらい社会保険料を削減できるのか試算してみましょう。平成30年4月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表に当てはめて計算します。

  • 役員報酬月80万円×12カ月=年間960万円の場合
    年間社会保険料合計額:230万40円
    └年間健康保険料 = 7万8210円 × 12か月 = 93万8520円
    └年間厚生年金保険料 = 11万3460円 × 12か月 = 136万1520円
  • 役員退職金960万円の場合
    年間社会保険料合計額:0円

役員退職金として支給すると、役員報酬として支給した際と比べて、社会保険料を約230万円削減できることがわかります。

役員報酬より税制優遇される

役員報酬と役員退職金は、それぞれ以下の計算式で課税されます。

役員報酬の所得税額

(所得 -所得控除額)=課税所得

課税所得 × 所得税率-税額控除 =所得税額

役員退職金の所得税額

(退職金-退職所得控除額) × 1/2 =課税退職所得

課税退職所得 × 所得税率 - 控除額 = 所得税額

役員退職金の場合、長年の功労に報いる意味もあるため、所得から差し引ける「退職所得控除額」が給与所得と比べて高くなります。退職所得控除額は以下のように、勤続年数に応じて定められています。

勤続年数退職所得控除額
勤続年数20年以下40万円×勤続年数(1年未満は切り上げ)
勤続年数20年超800万円+70万円×(勤続年数−20年)

退職所得控除額を控除した上で、さらに2分の1をかけて課税所得が計算されるため、役員報酬と比べて税制面で大幅に優遇されます。ただし、役員としての勤続年数が5年以下の場合は、課税所得が2分の1になる優遇措置はありません。

また、退職所得は分離課税となり、他の所得と合算されることなく、退職所得のみの金額に対しての税率が適用となります。

役員報酬と役員退職金の税額比較

役員報酬と役員退職金でどれだけ違いがあるのか比較してみましょう。所得税と住民税あわせて20%、勤続年数30年と仮定して計算してみます。

※基礎控除などの各種控除は省略し、その他の条件についても簡略化して計算しているので、実際の税額とは異なります。

【役員報酬月150万円×12カ月=1800万円を受け取った場合】

  • 役員報酬1800万円-給与所得控除額220万円=課税所得1580万円
  • 課税所得1580万円×20%=税額合計316万円

【役員退職金1800万円を受け取った場合】

  • 800万円+70万円×(30年-20年)=退職所得控除額1500万円
  • (役員退職金1800万円-退職所得控除額1500万円)×1/2=課税退職所得150万円
  • 課税退職所得150万円×20%=税額合計30万円

事業承継時の贈与税の節税になる

事業承継をするときには、後継者に自社株式を移転するため贈与税が発生します。この際に役員退職金を支給すると、全額損金算入できるため、会社の純資産が減少し、株式評価額が下がります。株式評価額が下がったタイミングで後継者に株式を生前贈与することで、贈与税を低く抑えることができるというメリットもあります。

なお、非上場株式の株価は一定のルールに基づいて計算する必要があります。計算方法には「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」があります。類似業種比準方式は、同様の業種を営む上場会社の株価の平均値をもとに、一定の比準割合をかけて評価額を算出する方法です。純資産価額方式は、会社の純資産価額を株式の数で割り、1株あたりの評価額を算出する方法です。

損金算入できる役員退職金の計算方法

役員退職金の支給額には特に制限はありませんが、損金算入できる金額には上限があります。上限額を超えた金額を支給すると過大な部分は損金不算入となり、役員賞与とみなされる場合もあるので、金額の決め方には注意が必要です。

役員退職金の金額の妥当性に関する税法上のルールは、法人税法第34条に定められています。

法人税法第34条
(役員給与の損金不算入)
内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

功績倍率方式で計算する

適正な役員退職金を求めるには、「功績倍率方式」を用いて計算する方法が一般的です。これは、役員退職金が不相当に高額であると判断された事例で、税務署が適正価格を算出する際に用いている計算方法です。具体的には以下のように計算します。

役員の最終報酬月額×在任年数×功績倍率=役員退職金

功績倍率」とは、役員が任期中に会社へ貢献した度合いを一定の倍率で表したものです。倍数は役員の役職によって異なり、1~3倍程度の倍率を採用している場合が多くなっています。一般的な株式会社の場合で、「代表取締役=3.0」「専務取締役=2.5」「常務取締役=2.3」「取締役=2.0」「監査役=1.5」などと設定しています。

例えば役職が専務取締役で、「最終報酬月額100万円」「在任年数25年」「功績倍率2.5倍」の場合、役員退職金の適正額の目安は次の通りになります。

  • 最終報酬月額100万円×在職期間25年×功績倍率2.5倍=役員退職金6250万円

役員退職金規定には、役員退職金は功績倍率で求めること、役職別の功績倍率についても盛り込んでおきましょう。

功績倍率方式以外にも、「1年当たり平均額法」や「平均功績倍率法」を用いることもあります。

役員退職金で節税するときのポイント

役員退職金を活用して節税対策するときには、以下のポイントを理解しておきましょう。

過大な積み立ては資金繰り圧迫に

役員退職金を支給する際には、一度に多額のキャッシュアウトが発生します。そのため、役員退職金のために、生命保険や共済、銀行の定期預金、株式、債券などで事前に積み立てを行うケースが一般的といえます。とはいえ、役員退職金のために過度な金額の積み立てを行うことは、会社の資金繰りを圧迫することになるので注意しましょう。

赤字の期は節税メリットがない

赤字の事業年度に役員退職金を損金算入しても節税にはつながりません。そのため、役員退職金の損金算入のタイミングには注意が必要です。

損金算入できるのは原則「役員退職金が株主総会の決議で確定した日が属する事業年度」となっています。ただし、株主総会の決議で確定した日が属する事業年度と、会社が退職金を実際に支払った日が属する事業年度が異なる場合は、「会社が役員退職金を実際に支払った事業年度」を選ぶことができます。

例えば「今期は利益が出ないが、次年度は利益が見込めそうだ」という場合には、今期のうちに株主総会決議で役員退職金について決めたとしても、支給自体を次年度にすれば、次年度の損金とすることができます。

最終報酬月額を不当に高くしない

「最終報酬月額」とは、役員の退職時の給与のことです。功績倍率方式を用いた場合、最終報酬月額が高くなるほど役員退職金の額を増やすことができます。

ただし、役員退職金を高額にするために、退職のタイミングに合わせて役員報酬を著しく上げるのは要注意です。例えば最終報酬月額のみ倍額にするなど不自然に増額した場合は、その分が臨時的昇給と指摘され、役員退職金の金額の一部が過大だと否認されるリスクがあります

また、役員報酬を増額する際には、職務上の地位が変更されたなど、明確な変化が問われます。もし不相当に高い役員報酬とみなされれば、その額が損金不算入となってしまう可能性あります。

役員報酬を下げると損金算入上限も下がる

役員退職金を作るためによく利用される共済や生命保険は、積み立て分が一定金額まで損金になる節税メリットがあります。そのため役員報酬を下げて、減額分を役員退職金の積み立て分に回すというケースもあります。

ただし、 役員退職金を功績倍率方式で計算する場合、役員報酬を下げると損金算入できる役員退職金の上限も下がってしまいますので注意必要です。

分掌変更でも退職金が支給できる

代表取締役や取締役が、非常勤取締役や監査役になり、引き続き在職することを分掌変更といいます。一定の要件を満たせば役員を辞めた際に役員退職金を支給することができ、損金算入が可能です。

分掌変更による役員退職金に関するルールは通達に定められています。

(役員の分掌変更等の場合の退職給与)
9-2-32 法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員の対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位まあは職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。
(1)常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。
(2)取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号<使用人兼務役員とされない役員>に抱える要件のすべてを満たしている者を除く。)になったこと。
(3)分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。
(国税庁 法令解釈通達 第7款 退職給与)

上記の通達からからわかるのは、「実質的に退職したと同様の事情にあると認められること」が必要だということです。つまり、役員退職金だと認められるには、役員が会社の業務から離れることが大前提となります。

退職後も会社に対して大きな影響力を与えている場合には、実質的には退職していないとみなされ、役員退職金の支給が否認されることもあります

分掌変更が否認されると損金不算入に

税務調査で分掌変更が否認されると、役員退職金は役員賞与とみなされ、全額損金不算入となってしまいます。すでに支給した役員退職金は給与所得として再計算されるため、所得税が課税される可能性が高くなります。

また、役員退職金の支給に併せて後継者へ株式の移転を行った場合には「株式評価額の増額×移転株数」の金額が贈与とみなされるなどのデメリットが生じることもあります。くれぐれも分掌変更が否認されないように注意しましょう。

分割支給は合理的な理由が必要

一般的に役員退職金は高額になるため、支払うタイミングによっては会社の資金繰りに大きな影響を与えることもあります。そのため、役員退職金を複数期にわたって分割で支払うケースもあります。その場合、「合理的な理由」があれば分割支給することができます。

万が一合理的な理由として認められない場合は、2回目以降の支給は退職金ではなく、役員報酬とみなされてしまう可能性が高くなります

そのため、役員退職金を分割支給する際には、以下のことに注意しましょう。

  • 分割支給の期間は2〜3年程度にする(長期支給は退職年金とみなされ、雑所得の対象になる可能性がある)
  • 取締役会および株主総会で、分割支給する理由や支給時期、各回に支給する金額などを明確にしたうえで、議事録を作成する
  • 赤字決算を避けるための利益調整の場合は、分割支給の合理的な理由と認められない

なお、分割支給する際には、「支払う事業年度ごとに損金を算入」もしくは「役員退職金が株主総会の決議で確定した日が属する事業年度に全額損金を算入」のいずれかで会計処理を行います。

共済や生命保険で積み立てる

役員退職金を支給する際には、一度に多額のキャッシュが流出します。そのため、あらかじめ積み立てておくのが一般的です。

代表的な積み立て手段としては、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)や生命保険が挙げられます。役員退職金を経営セーフティ共済や生命保険で備える場合、保険料や掛け金を損金にすることができ、その分所得を圧縮して節税できるメリットがあります。

経営セーフティ共済は、中小企業基盤整備機構によって運営されている共済制度です。本来は取引先が倒産して売掛金の回収が困難になった際などに、共済金を借り入れることができる制度ですが、一定期間積み立てることで解約時に掛け金が全額戻ってくるため、経営者や役員の退職金の備えとしても活用されています。

掛け金は月20万円(年間240万円)、累計800万円までで、全額損金算入しながら積み立てを行うことができます。積み立てを40カ月(3年4カ月)行えば、それ以降に解約すると掛け金が全額戻ってきます。

なお、解約した掛け金は雑収入(益金)に算入されるので、役員退職金(損金)と相殺できるよう、同じ事業年度に解約することが大切です。

保険料が損金に算入され、解約時に解約返戻金が返ってくる法人保険で退職金を準備するという方法も一般的です。ただし、これらの法人保険は、平成31年度以降に改正が予定されているため、現在は販売が中止されている状況です。今後の動向を確認しながら利用を検討するといいでしょう。

源泉徴収を行う

役員退職金を支給する場合、源泉徴収を行い、翌月10日までに納税を行う必要があります。退職手当等に対する源泉徴収の方法は、退職する人から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合と受けていない場合とで異なります。

実務上は、「退職所得の受給に関する申告書」を退職者から入手するのを忘れないように気をつけましょう。

おわりに

役員退職金は、損金に算入できることや社会保険料の対象外になるなど、会社にとってさまざまな節税メリットがあります。ただし、役員退職金とみなされるには条件があり、法人税や役員個人の所得税や住民税、社会保険料についても考慮して、金額を決める必要があります。

役員退職金で節税を検討する際には、役員退職金規定の作成も含め、税理士などの専門家に相談するのが得策でしょう。

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