カナダで日本の会社から委託業務中。源泉徴収、租税条約について
カナダ在住で今年2023年6月より日本の会社から委託業務をし始めた者です。
日本で確定申告はせず、カナダで来年するタックスリターンにて、日本の口座に振り込まれた金額をそのまま外国からの収入として記入するつもりです。
【源泉徴収について】
毎月会社側に請求し、翌月に振り込まれる形になっており、
ですが、これまで
初月分は請求分のままの金額、
2、3ヶ月目の分は10%分しか差し引かれた金額をすでに受け取っております。
最近になり、「会社側は20.42%の税率で源泉徴収が必要」という情報を目にしました。今まですでに受け取った金額についてはこれからどうなりますか。
一方で、
「海外在住のフリーランスが現地で作業する仕事の報酬は、源泉徴収されない」
という情報も目にしており、どちらの情報を信用していいのか困惑しております。
これは一体どういうことになるんでしょうか。
【租税条約について】
租税条約に関する届出書の存在を知り、をこれから提出するつもりですが、今まですでに受け取った金額についてはどうなりますか。
また提出次第、これからの請求分は源泉徴収は免除されるのでしょうか
用語、税金に関する知識が不足しており、上記の文章に至らない点があるかと思いますが、
御回答の方お待ちしております。よろしくお願い致します。
税理士の回答

回答します
「カナダ在住」ということですので、貴方が日本の非居住者・カナダの居住者との前提で説明します。
1 当該報酬が日本の国内源泉所得(日本でも課税対象)に該当するか否か
貴方と日本の企業との「業務委託契約」の内容によって、取り扱いが変わります。
たしかに、コンサルタントのような「人的役務提供」の報酬の場合は、日本での作業などがない限りは、国内源泉所得に該当しないため、日本での課税権は生じません。
しかし、他の国内源泉所得に該当する場合は、「源泉分離課税」又は「源泉徴収後総合課税(申告納税)」など、所得によってその取り扱いが異なります。(末尾に「源泉徴収のあらまし」の非居住者課税に関する箇所を添付します。7枚目(P274)の表を参考にしてください)
貴方の報酬に10%の源泉徴収がされていたというお話なので、もしかすると「著作権の使用料」に該当する可能性があります。ただし、「租税条約の届出書」を提出していない場合は、本来は20.42%なのですが、この点は日本の企業に確認する必要がああります。
2 租税条約について
日加租税条約では、日本の国内法とは異なる取り決めをしています。
最初に、貴方と日本の会社との契約の内容により、国内法もですが、租税条約の当てはめる条文が異なります。
先にお話しした「著作権」ですが、
日カ租税条約§12条で、居住地国(カナダ)の課税とともに源泉地国の課税も認めており、かつ、債務者主義(債務者の所在地が源泉地=日本)をとっていますので日本でも課税権を有していることになります。
そして、その「税率」は10%となっています。
租税条約では、このように一つの所得に対し二重課税になることは珍しくなく、その調整として居住国において源泉地国で課税された「外国税額控除」等をもちいて二重課税の回避を図っています。
3 今後について
租税条約の届出書を提出せず、かつ、全額が振り込まれた報酬に関して、仮に10%の税率が正しいのであれば、すぐに租税条約の届出書を報酬の支払者(日本の会社)を通じて、提出し10%分の源泉所得税額を納税してもらう必要があります。
届出書の提出ができるのであれば、遡って20.42%の納税をする必要はありません。
次に、今までの報酬や今後の報酬に関しても「源泉所得税等の納税証明願い」を日本の会社を通じて依頼し、発行してもらってください。
カナダでの申告をする際の「外国税額控除」の証明書になります。
※カナダでの申告関係については、カナダの課税当局にご確認ください。
【まとめ】
いずれにしても、貴方の業務委託による報酬が、どの「国内源泉所得」に該当するかご確認ください。
その上で、条約により軽減が受けられる所得であれば「租税条約の届出書(所得によって種類があります)」を2部、支払者を通じて提出し、軽減等を受けるとともに、「源泉所得税等の納税証明願(納税証明書)」を入手することをお勧めいたします。

文章が長くなったため参考のアドレスなどはこちらに添付します
「源泉徴収のあらまし」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2022/pdf/12.pdf
「租税条約の届出書」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/mokuji2.htm
「源泉所得税等の納税証明願」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_31.htm
本投稿は、2023年09月27日 09時17分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。