従業員車両の修繕について
今回、台風時に現場等の確認のため従業員数名に出勤をお願いしました。
その際に通勤時に台風の影響で飛んできた木の枝で従業員の車に傷ができました。
台風時に出勤をお願いしたため車の修理代を出してあげたいと思っています。
金額は10万円未満にはなりそうです。
この場合の修理代は従業員の給料として処理し源泉を徴収しなければいけないのでしょうか?
それとも、台風時に業務命令として出勤させたことによる責任であるため修理代は給料とせず修繕費として処理してもいいのでしょうか?
税理士の回答
非常に微妙な部分がありますが、原則的には「従業員の給料として処理し源泉を徴収」が無難と考えます。以下は私見として参考としてください。
雇用主は、雇用者が身体が守られた状態で働くことができるように配慮する義務を負っています。これを「安全配慮義務」といい、労働契約に付随する義務として「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と明文化されています。
安全配慮義務には、「生命・身体の保護」のほか、「心の健康への配慮」も含まれていますが、法律上の安全配慮義務は、あくまで抽象的な定義にとどまっています。そのため実際には業務内容などによって対策をとることが求められています。
過去台風の際には、従業員を出勤させた会社に「安全配慮義務違反ではないか」との指摘されたことがありましたが、罰則は存在せず安全配慮義務に違反したとしても何もありません。ですが義務を怠り従業員が負傷をした場合には、民法の規定をもとに従業員から損害賠償を請求される可能性があります。損害賠償請求が認められるかどうか、つまり安全配慮義務に違反したと認定されるかどうかは、予見可能性(負傷などの発生が予測された)、結果回避性(負傷などを回避する方法があったのにしなかった)、因果関係(負傷の原因となった)が問題となります。
台風の中、従業員を勤務させたことが安全配慮義務違反になるかどうかを検討して、甚大な被害が発生することが予想された状況下で勤務をされれば「出勤中に車が水害及び風害の影響を受ける」といった被害が出ることが予想されます。(営業を休んで従業員に自宅待機を命じれば、これらの被害は避けられます。)ですから「予見可能性」も「結果回避性」もあったと考えられます。そのため従業員から損害賠償を請求してきた場合には、安全配慮義務に違反したとして裁判で賠償を命じられる可能性があります。
このような状況を考え合わせれば、貴社が実費弁済分として修理費負担されることは社会通念上相応の対処と考えております。
何より御社にとって大事な従業員の生命と身体を尊重頂く事を望みます。
本投稿は、2022年11月28日 23時10分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。