カフェや居酒屋など飲食店ができる節税対策まとめ

レストランやカフェ、居酒屋、ラーメン屋などの飲食店を開業するにあたり、メニューや店のコンセプト、集客方法と同じくらい経営者が意識しなくてはならないのが「税金」です。
すでに飲食店を経営している人であっても、きちんとした税務知識に則った節税対策についても検討する必要があります。
そのためにも、飲食店オーナーが知っておくべき税金と節税対策について把握しておきましょう。
目次
飲食店経営に関わる税金
飲食店経営に関わる税金は大きく4種類があり、個人事業主と法人、どちらの事業形態で飲食店を経営していくのかによって課税される税金が異なります。
個人事業主 | 法人 | |
---|---|---|
所得に対して課税される税金 | 所得税 | 法人税 地方法人税 |
消費に対して課税される税金 | 消費税 | 消費税 |
一定の事業に対して課税される税金 | 個人事業税 | 法人事業税 |
居住地や事務所所在地の自治体から課税される税金 | 個人住民税 | 法人住民税 |
そのほか、飲食店経営に関わる税金には印紙税、償却資産税、自動車税、軽自動車税、登録免許税などがあります。
飲食店ができる節税対策の例
飲食店の経営において、売上アップはもちろんですが、手元にキャッシュを残すためにも利益は最大限確保しておきたいものです。
利益とは売上から経費を差し引いたものとなり、税金は利益に対して課せられるため、適切に経費を計上することが節税対策としては重要になります。
ただし、あまり過剰に節税してしまうと利益が少ない飲食店とみなされ、たとえば金融機関から融資を受ける際にはマイナス評価されてしまう恐れもあります。
そこで節税方法の中でも特に飲食店経営者が検討すべき方法をいくつか解説します。
簡易課税の選択
簡易課税とは、仕入れにかかる消費税額について、実際の取引金額ではなく「みなし仕入率」という一定の割合を乗じて算出する方法です。飲食業においては、このみなし仕入率が60%と決められています。
飲食店の場合、仕入れ(原価)の割合を多く占めるのが人件費となるケースも少なくありません。
人件費は消費税の課税対象外なので、みなし仕入率を用いて算出した消費税が、実際の仕入れに即して算出した消費税額よりも少なくなる場合もあるため、簡易課税を選択することで消費税を節税することができる可能性があります。
ただし、簡易課税を選択できる事業者には条件があり、また、簡易課税を選択する前によくシミュレーションして節税になるかどうかきちんと見極めることが大切です。
共済制度への加入
共済に支払う掛け金については、個人事業主の場合は必要経費、法人の場合は損金として計上できるので、節税に繋がります。
飲食店の経営者におすすめなのが「食品営業賠償共済」です。これは飲食関係の業種に特化した共済で、お店で提供した食品が原因で食中毒を起こした場合や、異物が混入して怪我や感染症が発生したような場合に、損害賠償費用の一部について保険金がおります。
たとえば飲食店の場合、月額2,700円で1名1事故あたり5,000万円を限度として保障が受けられます。
店舗の敷金や保証金の償却
飲食店の場合、店舗を借りる際に支払った敷金や保証金を貸借対照表に資産として記載しているケースがよくあります。
敷金や保証金でも、賃貸借契約書上で返還されないことが決定している金額については原則5年で償却して損金として計上することが可能です。また、20万円未満であれば支払った事業年度で一度に償却できます。
節税対策は、損金にできるものを漏れなく計上することが基本となりますので確認してみましょう。
雇用関係の助成金活用
飲食店はアルバイトなどを雇用する機会が比較的多い業種なので、雇用関係の助成金を上手に活用することで、会社に残るキャッシュを増やすことができます。
たとえば「雇用調整助成金」という制度は、経営が悪化して雇用の維持が難しくなった際に、従業員を解雇せず休業状態にすることで休業手当の一部を助成してくれます。
助成金や補助金は基本的に収入とみなされるため課税対象ですが、「圧縮記帳」という会計処理をすることで税金の支払いを繰り延べることができます。
節税ではありませんが、負担を複数年度に分散させることで資金繰り悪化を防止することができるのです。
経費として計上できる具体例
節税対策をする前に、本来計上できる経費を見落としていないか確認してみましょう。飲食店を経営する上でかかる経費は大きく分けて「材料にかかるもの」「人材にかかるもの」「店舗にかかるもの」の3種類に区分できます。
【材料にかかるもの】
- 仕入れ・・・食材の仕入れ代金
- 消耗費(ペーパータオル、割り箸、ナプキン、爪楊枝、包装紙、ビニール袋など)
【人材にかかるもの】
- 給与
- 交通費
- 福利厚生費(社会保険料など)
【店舗にかかるもの】
- 店舗家賃
- 内装設備費用
- 火災保険料
- 減価償却費
- 通信、サービス費
- 水道光熱費
飲食店はたとえ規模が小さくても、経費として計上できる項目が多岐にわたるため、もれなく計上するよう心がけましょう。
会計処理の注意点
飲食店では仕入れた食材が余ってしまう食品ロスが発生することが多々あります。この場合、余った食品をどう処理するかによって、会計処理の仕方が異なります。
たとえば、個人事業主本人が自分で消費した場合には「家事消費」扱いとなり、仕入値か売価の7割のいずれか高い方の金額を「事業主貸」勘定に仕分けをして収入として計上します。
あるいは廃棄処分した場合には「仕入」から「廃棄損」に振り替えるといった処理が必要です。
また、おつりの渡し間違いなどでレジ金と実際の計算金額が合わないということもあるでしょう。その際は「現金過不足」に仕訳をし、決算時にはその合計額についてマイナスの場合は「雑損失」、プラスの場合は「雑収入」として処理することになります。
いずれの場合でも誤った会計処理をしてしまうと税務調査で否認される可能性もありますので、不安なときは税理士などの専門家と相談しましょう。
福利厚生としてまかないを提供
飲食店といえば、従業員にまかないを提供するケースがよくあります。
まかないは「福利厚生費」として損金に参入することができますが、そのためには以下の要件を満たす必要があります。
- 役員や使用人が食事の価格の半分以上を負担していること
- (食事の価格)-(役員や使用人が負担している金額)が1ヶ月あたり3,500円以下であること
これらの要件を満たさない場合、給与として扱われることになり、その分源泉徴収をしなくてはならないので注意しましょう。
おわりに
経営者として、納税や節税など税金にまつわる基礎知識は知っておいて損はないでしょう。しかし、飲食店の会計処理は仕入れや損金の項目が多岐にわたるため、慣れない経営者が自分で対応することはおすすめできません。
むしろ、経営者は店舗運営の実務に時間を使って、会計や税務の面についてはプロである税理士にサポートしてもらう方が、費用対効果で考えても得策です。
税理士を探す際は店舗付近のエリアであるかどうかや、飲食業に強い税理士・税理士事務所であるかどうかを基準にするとよいでしょう。