海外在住フリーランス 源泉徴収が必要と言われましたがなぜでしょうか
書籍のデザインをフリーランスでやっています。
今年の4月に夫に帯同して海外に引っ越しました。
引っ越し前に、税務署に電話して源泉徴収について聞いたところ、
非居住者となるので納税義務はなくなり、源泉徴収の必要はなくなって、
その場合特に書類提出の必要もなく、取引先の会社に源泉徴収はしないでくださいと
伝えるだけでよいとのことで、その通りにしました。
ところが、先日報酬支払いの段階で取引先の経理課から
税務署からの指導で源泉控除をしなければならず、消費税は不課税になると伝えられました。
消費税は仕方がないとしても、源泉徴収しなければならないのはなぜでしょうか。
著作権は取引先の出版社にあり、日本に居住していた時は源泉徴収は10.21%徴収されていました。
海外に居住していることで税率などが変わるということでしたら、
「租税条約に関する届出書」は今から提出できるものでしょうか?
それより、源泉徴収されない税務上の手続きというのはありますでしょうか?
ご回答お待ちしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
税理士の回答

安島秀樹
著作権が取引先にあるということは、書籍のデザインをしているあなたの著作権を取引先に譲渡しているからだと思います。デザインしていない人にいきなり著作権が発生することは(あることはありますが)ふつうないです。租税条約があるなら、たぶん減免がききます。後出しでも大丈夫です。半分になるのではないですか。取引先と手続きなど相談してください。

回答します
デザインは通常「著作物」であるため、デザインを作成した貴方には著作権が生じます。
報酬の支払者(便宜上「会社」といいます。)と貴方の契約が、著作権の譲渡又は使用料に該当するとして、源泉徴収の指導が入ったのだと解されます。(国際源泉の場合、著作権に関しては厳密です)
貴方の居住地国が分かりませんので、具体的なことは説明できませんが、租税条約を締結している国であれば、「租税条約の届出書」を提出をすることにより、当該条約の免税・軽減は受けることができます。
提出がない場合は20.42%の源泉徴収になります。
先ずは、会社に、税務署が「譲渡」と判断したのか「使用料」と判断したのかを確認してください。
その上で、今からでも「租税条約の届出書」を提出する用意があるとして、詳細を確認することをお勧めいたします。
なお、著作権の使用料でかつ免税(※)となっている国との条約の場合、居住国の課税当局から「居住者証明書」を入手し、「租税条約の届出書」に「特典条項の付表」、「居住者証明書」を添付する必要があります。
居住者証明書は、各国の課税当局で発行されますが、英国と仏国だけは、相手国の承認印を貰う書式があります。
米国などは発行に1ヶ月ぐらいかかると聞いていますので、早めの手続きをお勧めいたします。
※米国はすべての項目が「特典条項付条約」のため、必ず必要になります。
国税庁HPから「源泉徴収のあらまし」を添付します
「源泉徴収のあらまし」の40枚目(P308)に使用料の租税条約による取扱いが国別に記載があります。
譲渡の場合は、42枚目(P310)を参照してください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2021/pdf/12.pdf
また、「租税条約の届出書」、「特典条項の付表」及び課税当局に依頼する「居住者証明書」の様式(英国・仏国)も添付します。
「租税条約の届出書(使用料)」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/1648_41.htm
「特典条項の付表」・・・国によって別様式になっています。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/5320/01.htm
「居住者証明書(英国に依頼する様式)」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/pdf2/y_17.pdf
「居住者証明書(仏国に依頼する様式)」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/pdf2/y_16.pdf
安島先生
ご回答ありがとうございました。
著作権はもともと私に発生しているということなのですね。
取引先と相談してみます。
ありがとうございました。
米森先生
丁寧なご回答をありがとうございました。
現在取引先に確認をしています。
もうひとつお聞きしたいのですが、
著作権の使用料と譲渡とでは手続きに違いがあるのでしょうか?
どうぞよろしくお願いいたします。

回答します
国内法上は著作権の譲渡も使用料も同様に20.42%の源泉徴収になります。
しかし、租税条約では、その国との条約の内容次第によっては、免税、国内法と同様などのように取扱いが変わります。
添付した「源泉徴収のあらまし」のp310にその旨が記載されていますが、事実関係を確認したうえで、会社を通じて税務署の調査官の方に確認されることをお勧めいたします。
その上で、租税条約の届出書等の準備をされることをお勧めします。
特に「居住者証明書」は、発行までに時間が掛かります。なお、課税当局以外が発行した「居住者証明書」となります。

追伸
「譲渡」の場合は、免税になる条約のケースが多いので、日本の会社との契約をよくご確認ください。
本投稿は、2022年08月08日 13時59分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。