居住用不動産の又貸し
役員A所有の居住用不動産を法人Bで第三者Cに又貸ししています。もちろん又貸しに関してはその役員の了解は得ています。
その居住用不動産の賃貸料ですが、相場では月額5~10万円かなといったところですが、30万円で賃貸しています。役員Aと法人Bのみのやり取りであれば、利益操作といった点で指摘をされかねないと思っていますが、同じ金額で第三者Cに又貸しをしているので、30万円が流れていくだけで法人Bの所得に影響は全くありません。
それでも問題はありそうでしょうか?
税理士の回答

佐藤和樹
【税務的な問題点】
■ 1. 役員との取引=「同族間取引」扱い
• 法人とその役員との間の不動産取引は、市場価格と乖離していれば、税務調査で否認される可能性があります。
• 特に、相場の3~6倍という「明らかな乖離」は、高リスクです。
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■ 2. 法人に損失がなくても、役員側に「不当な利益移転」と見なされることがある
たとえば以下のように扱われる可能性があります:
・「過大役員報酬」的な扱い(法人の損金否認)
• 法人Bが30万円で借りる理由が不自然と見なされれば、**差額部分(例:20万円)は、役員Aへの経済的利益供与(実質的な報酬)**とされることも
・「みなし配当」として、役員Aに課税される可能性
• 相場を超えた家賃収入が、利益の分配と見なされることがあります
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■ 3. 又貸し(転貸)で帳尻が合っていても、安全とは言えない理由
• 税務署は、「実際に法人がその物件を業務で必要としていたかどうか」や、「法人が不動産業などで第三者に貸すことが主目的だったか」などを見ます。
• 帳簿上損益がゼロでも、取引の実態や目的が問われます。
• また、法人Bが不動産貸付業をしていない場合、「なぜ高額賃貸を通してまで転貸したのか?」という点が論点になります。
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【実際のリスク判断】
• 法人に損金不算入リスクあり(=経費として認められない)
• 役員側に所得課税の可能性あり(給与課税やみなし配当)
• 税務調査で指摘されやすい構造
• 特に、契約書だけでなく、利用実態・合理的な価格設定の根拠が問われる
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【リスク回避のための対策案】
1. 不動産鑑定評価や周辺の相場根拠を用意する
→ なぜ30万円という賃料設定が正当か、第三者的根拠を整える
2. 法人の不動産事業として整備する
→ 転貸が主目的であり、法人が一定の利益を得る構造であれば合理性が出る
3. 賃料設定を見直す
→ 相場+α(管理業務、借主対応など)に収まる程度にする
4. 税理士や顧問会計士に事前相談する
→ 専門家の視点で問題のない範囲で調整を検討
本投稿は、2025年04月15日 16時15分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。