兼務役員の退職金
兼務役員に従業員部分のみの退職金を支給し、今後は取締役として残っていただき、週4日の勤務体系で引き続き働いていただきます。
このようなケースの場合、この退職金は損金計上可能なのでしょうか。
税理士の回答

兼務役員に従業員部分のみの退職金を支給し、今後は取締役として残っていただき、週4日の勤務体系で引き続き働いていただきます。
このようなケースの場合、この退職金は損金計上可能なのでしょうか。
できます。
従業員部分の退職金ですので。
兼務役員に従業員部分のみの退職金を支給し、その後も取締役として残り週4日の勤務体系で働き続ける場合、この退職金を損金計上できるかどうかは、「実質的に退職したと同様の事情にある」と認められるかが判断基準となります。単に勤務日数が減少するだけでは、損金算入が認められにくい点に注意が必要です。
法人が役員に退職金を支給する場合、原則としてその役員が退職した場合に損金算入が可能です。ただし、使用人兼務役員が役員としての地位を残したまま従業員としての職務を解かれる「分掌変更」の場合には、一定の条件を満たせば従業員部分の退職金を損金算入することが認められるケースがあります。
国税庁の取扱いによれば、分掌変更に伴う退職金が損金算入できるのは、当該役員が「実質的に退職したと同様」と認められる場合に限られます。その典型例は以下のとおりです。
(1) 職務内容が重要なものから非重要なものへと大幅に変更された場合
(2) 給与水準が大幅に減額された場合
(3) 常勤から非常勤へ変更された場合
(4) 副社長・専務などの兼務役員から、兼務でない役員へ変更された場合
今回のケースでは「取締役として残る」ため役員としての地位は継続しています。また「週4日の勤務」に変更されたことのみでは、職務権限や責任が依然として維持される可能性が高く、直ちに「実質的退職」とは評価されにくいと考えられます。したがって、退職金を損金算入できるかどうかは、役員としての職務や権限の縮小度合い、給与水準の減少、勤務実態の変化などを総合的に勘案して判断することになります。
結論としては、週4日勤務に変更された事実だけでは損金算入は難しく、役員としての職務権限や報酬体系が大幅に変わるなど、実質的な退職と同様と認められる事情が伴う場合に限り、損金算入の余地が生じると整理できます。

三嶋政美
兼務役員に対する「従業員部分の退職金」は一定の条件を満たせば損金算入が認められます。具体的には、①役員と従業員としての職務が明確に区分されていること、②従業員としての勤続年数に基づき、社会通念上相当と認められる金額であること、が必要です。一方で、従業員部分の退職に伴い支給する性質を逸脱し、役員報酬の前払い的な性格を帯びる場合は、損金算入が否認されるリスクがあります。今回、今後も取締役として勤務を継続されるとのことですが、従業員としての退職が実態として明確であれば、その部分に対応する退職金は原則として損金に算入可能と整理できます。
本投稿は、2025年08月21日 10時23分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。