個人事業主の現金・普通預金について
お世話になっております。
個人事業主が青色申告をするのに、
プライベートと事業用とで通帳等分けていない場合、
現金・普通預金勘定を使わずに、事業主貸/借で仕訳するのはダメでしょうか
税理士の回答

松谷隆之
「全部を事業主貸/事業主借だけで処理する」こと自体は直ちに違法ではありません。
ただし、実際に事業の現金や預金の出入りがあるのに「現金・預金勘定を一切使わない」記帳は不可(実態不反映)で、青色申告特別控除の帳簿要件を満たせない可能性があります。
私用口座で事業支払をしたなら 「(借)経費/(貸)事業主借」 でOK、事業資金を私用に回したなら 「(借)事業主貸/(貸)現金・預金」 が基本です。
事業で現金や預金を運用しているなら、基本的に現金出納帳・預金出納帳(口座別)を作成し、必要な場面では現金・預金勘定を用いるのが安全です。
実務で迷いやすいポイントですね。結論からいうと、「現金」「普通預金」勘定を一切使わず、すべて事業主貸/事業主借で処理するのは適切ではありません。以下整理します。
1. 青色申告における通帳・現金の扱い
・青色申告では、帳簿の正確性・網羅性が求められます(所得税法施行規則第59条など)。
・「現金」や「普通預金」は、実際に残高が存在する勘定科目です。
・帳簿上も残高管理することで、現金実査や通帳残高との突合が可能になります。
👉 したがって、これらを一切使わないと、残高の整合性がとれなくなり「帳簿の信頼性が低い」と判断されるリスクがあります。
2. 事業主貸/事業主借の役割
・「事業主貸」:事業用のお金を生活用に使ったとき(事業→個人)
・「事業主借」:生活用のお金を事業に使ったとき(個人→事業)
・あくまで 事業と生活のやりとり部分だけに使う補助的な勘定です。
👉 つまり、「現金」「普通預金」に代わるものではなく、両者を補完する存在という位置づけです。
3. 口座を分けていない場合の実務的な処理
口座が共通でも、帳簿上は以下のようにします。
例)共通口座から仕入代金5,000円を支払った場合
仕入 5,000 / 普通預金 5,000
例)同口座から生活費2万円を引き出した場合
事業主貸 20,000 / 普通預金 20,000
👉 このように 預金勘定を必ず通し、プライベート分を事業主貸で処理するのが正しい形です。
4. まとめ
・「現金」「普通預金」を使わないのは不可。帳簿の残高管理に必須。
・「事業主貸/事業主借」は補助的に使う(生活費の引出や私的入金など)。
・口座を分けていなくても、預金勘定を通した仕訳を行い、プライベート分は事業主貸/借で振り分けるのがベスト。
💡 実務上は、今後できれば「事業用口座」を分けておくと記帳が格段に楽になります。
本投稿は、2025年08月25日 12時10分公開時点の情報です。 投稿内容については、ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。