【法人税の完全ガイド】法人税・法人住民税・法人事業税とは?税率・計算方法・納税義務者のまとめ

会社が納める税金は、「法人税、法人特別税、法人事業税、地方法人特別税、道府県民税、法人市民税、固定資産税、消費税、印紙税」などがあり、その中で代表的なものが「法人税」です。
法人税とは、法人が得た収益(所得)にかかる税金で、個人の所得にかかる所得税や住民税と同じような税金です。
会社経営において必須知識とも言える法人税について、これから法人成りを考えている個人事業主の方や、現経営者の方がより理解を深められるように、法人税と法人に関わる税金について解説いたします。
なお、このページでは、東京都内にある法人に焦点をあて、計算方法については「雇用促進税制」「中小企業投資促進税制」などの各種控除は省略しています。
目次
法人にかかる税金
法人にかかる主な税金は次のとおりです。
法人税
法人の所得( ≒ 利益)に連動して課税される(利益が出なければ発生しない)。
個人でいう所得税に相当するもの。
所轄の税務署を通じて国に納付します。
法人住民税
(1)法人税に連動して課税される部分(法人税割)
(2)法人税に連動せず、資本金や従業員人数規模に応じて、課税される部分(均等割)
上記の2つから構成されます。法人税割は法人税(≒利益に連動)が出なければ課税されませんが、均等割は利益が出てなくても課税されます。
県税事務所/都税事務所と区役所/市役所にそれぞれ納付をします。
※東京都の23区だけは、特別区という特殊な扱いになっているため、まとめて都税事務所に納付します。
法人事業税
原則的に法人の所得( ≒ 利益)に連動して課税される。
ただし、期末日時点の資本金が1億円を超える(1億1円以上の法人)は、付加価値を課税標準とする「付加価値割」、資本等の金額を課税標準とする「資本割」の2つから構成される「外形標準課税」が課されます。
県税事務所/都税事務所に納付をします。
地方法人特別税
地方法人税率の引上げに伴い、平成29年度に廃止→法人事業税へ復元。
県税事務所/都税事務所に納付をします。
消費税、地方消費税
物やサービス、様々な意味での消費に対して課税される。
現行では国税分(6.3%)と 地方消費税分(1.7%)を合わせて8%。
所轄の税務署を通じて国に納付します。
印紙税
経済取引に伴って作成する契約書や領収書などに課税される。
所轄の税務署を通じて国に納付します。
固定資産税、償却資産税
固定資産(土地、家屋、償却資産)に課税される。
県税事務所/都税事務所に納付をします。
事業所税
東京23区や政令指定都市が所在地であり、且つ一定規模以上の事業所に該当する場合に課税される。
原則として、区役所/市役所に納付をします。
決算日後2か月以内に納税する税金
消費税・法人税・法人住民税・法人事業税の4つは、決算日から2か月以内に納税しなければいけません。会計上では「法人税・法人住民税・法人事業税」の3つを合わせて「法人税等」といいます。
テレビなどで聞く「日本の法人税率は〇〇%です」というのは、法人税単体の税率ではなく、多くの場合は法人税等の税率を合わせた「法定実効税率」のことを差しています。
法定実効税率とは
決算申告時に使用する税率を「表面税率」といいます。次のように算出します。
法人税率 × (1 + 地方法人税率 + 住民税) + 事業税率
また、法人税等の実質的な税金の負担率は「法人実効税率(法定実効税率)」といいます。
法人事業税については、損金算入(経費にすること)が認められているので、表面税率では最終的な納税額を算出することができません。よって、最終的な納税額を表すために、法定実効税率というものがあるのです。
なぜ法人事業税が損金算入が認められているかというと、法人税は、利益の分配のためそもそも損金算入する性質でないのに対して、事業税は、都道府県が造った道路の利用料など「公共交通機関の利用負担金」という点で交通費など同じ位置づけ(所得ではなく事業に対して課税されるから)だからといわれています。
法定実効税率は次のように算出します。
{法人税率 ×(1 + 地方法人税率 + 住民税)+ 事業税率}/(1 + 事業税率)= 法定実効税率
法人税とは

法人税とは、個人でいう所得税に相当する税金で、国税の1種です。法人が得た所得に対して税金が課されます。なお、累進課税制度である個人の所得税とは違い、法人税の税率は比例税率(固定税率)です。
日本の法人税率は、他の先進国に比べてるとかなり高い数値であると言われており、租税回避のために、タックスヘイブンへの日本企業の流出が加速しているそうです。
日本政府はこのような事態を受け、平成27年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税率を段階的に引き下げることを決定しました。
平成28年度以降に23.4%、平成30年度以降には23.2%に引き下げられました。
法人税の納税義務者
法人及び人格のない社団等が納税義務者となります。公共法人や、収益事業を行わない人格のない社団等は、法人税の納付義務はありません。
これは、法人税は「利益の分配」という性質が強いためです。
法人税の計算方法
会社の所得は「売上 - 経費」で算出します。ただし、これは会計上の計算であり、法人税の計算には、税法上の定めにより「益金 - 損金」で法人所得を算出し、この法人所得(課税所得)に対して法人税率を乗じて法人税額を求めます。
課税所得金額 × 法人税率(原則23.2%) = 法人税額
法人税の税率
法人税率は、資本金や課税所得金額、会社の規模などによって税率は異なり、法人税法では、次のように定められています。平成30年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税です。
普通法人
区分 | 税率 |
---|---|
中小法人以外の普通法人 | 23.2% |
中小法人に該当しない普通法人。法人税法第二条一項九号に規定されています。
中小法人・一般社団法人等
区分 | 税率 |
---|---|
中小法人、一般社団法人等、公益法人等とみなされているもの、人格のない社団等 | 年800万円以下の部分:19%(15%) |
年800万円超の部分:23.2% |
※括弧書の税率は平成31年3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。
中小法人とは、公益法人等又は協同組合等、人格のない社団等や、普通法人のうち資本金(出資金)を有していない、もしくは1億円以下の法人をいいます。ただし、次の法人に該当するものについては除外されます。
1. 保険業法に規定する相互会社等
2. 大法人(イ~ハに掲げる法人)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人
(イ) 資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人
(ロ)相互会社等
(ハ)法第4条の7に規定する受託法人
3. 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び、出資の全部をその全ての大法人のうち、いずれか一の法人が有するものとみなした場合において、そのいずれか一の法人と、その普通法人との間にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人
4. 投資法人・特定目的会社・受託法人
一般社団法人等とは、営利を目的としない非営利型法人である「一般社団法人・一般財団法人・公益社団法人・公益財団法人」をいいます。
公益法人等とみなされているものとは、「認可地縁団体・管理組合法人・団地管理組合法人・法人である政党等・防災街区整備事業組合・特定非営利活動法人・マンション建替組合・マンション敷地売却組合」をいいます。
公益法人等
区分 | 税率 |
---|---|
公益法人等 | 年800万円以下の部分:19%(15%) |
年800万円超の部分:19% |
※括弧書の税率は平成31年3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。
公益法人等とは、一般社団法人や医療法人など法別表第二に掲げる法人(一般社団法人等を除く)をいい、公益法人等とみなされているものは含みません。
協同組合・医療法人等
区分 | 税率 |
---|---|
協同組合等、特定医療法人 | 年800万円以下の部分:19%(15%) |
年800万円超の部分:19% | |
特定の協同組合等の年10億円超の部分:22% |
※括弧書の税率は平成31年3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。
協同組合等とは、農業協同組合・漁業協同組合・消費生活協同組合・信用金庫などの法別表第三に掲げる法人をいいます。共通する目的のために自主的に集まり、人々が共同で所有し民主的に管理運営する非営利の団体組織のことです。
特定医療法人とは、医療法人内の区分の一つであり、租税特別措置法第六十七条の二第一項に規定する承認を受けた医療法人をいいます。
特定の協同組合等とは、租税特別措置法第六十八条に掲げる法人をいいます。その事業年度における物品供給事業のうち、店舗において行われるものに係る収入金額が、1,000 億円にその事業年度の月数を乗じて、これを12で割って計算した金額以上であるなど、一定の要件を満たす協同組合等をいいます。
法人住民税とは

法人住民税とは、個人住民税に相当する税金です。東京都内に事務所や事業所がある法人であれば法人都民税といいます。地方税の1種で、市町村や都道府県によって税率が異なります。
自治体の行政サービスのための財源に使用する目的があり、法人の担税力に応じて税額が決定されます。
定額である「均等割」と所得から算出された法人税額に住民税率を乗じた「法人税割」を足した額が法人都民税(法人住民税)です。
法人住民税の納税義務者
都内に事務所や事業所のある法人、収益事業を行う人格のない社団や財団が納税義務者となります。
都内に寮、保養所、宿泊所、クラブなどをもつ法人や収益事業を行わない公益法人・特定非営利活動法人等は、均等割のみ課税されます。ただし、収益事業を行わない特定の公益法人等については、東京都都税条例により免除の制度があります。
こちらも法人税の「利益の分配」という性質のためです。
法人住民税の計算方法
法人税割は、次のように法人税の計算で算出された法人税額を元に計算します。
法人税額 × 税率 = 法人税割
均等割は、資本金額や事務所の所在地などによって異なった税額が定められています。23区内であれば、7万円が最低ラインとなっています。
法人住民税の税率
東京都では、法人税割の超過課税を実施しており、あわせて資本金又は出資金の額が1億円以下で、且つ法人税額が年1,000万円以下の法人は、標準税率となる不均一課税を行っています。
税率は次の表のとおりです。
区分 | 税率 | |
---|---|---|
不均一課税適用法人の税率(標準税率) | 超過税率 | |
23区内に事務所等がある場合 | 12.9% | 16.3% |
市町村に事務所等がある場合 | 3.2% | 4.2% |
区分 | 税率 | |
---|---|---|
不均一課税適用法人の税率(標準税率) | 超過税率 | |
23区内に事務所等がある場合 | 7.0% | 10.4% |
市町村に事務所等がある場合 | 1.0% | 2.0% |
法人事業税とは

法人及び個人が営む事業に対して課される税金で、税法上ではまとめて「事業税」といいます。個人の場合は「個人事業税」、法人の場合は「法人事業税」と呼び分けるのが一般的です。
地方税の1種で、都道府県によって税率が異なり、法人の事務所や事業所の所在地である各都道府県に対して納税します。
住民税と同様に、行政サービスのための財源に使用されています。
法人事業税の納税義務者
都内に事務所や事業所を設けて事業を行っている法人、又は人格のない社団や財団で収益事業を行い、法人とみなされるものが納税義務者となります。
法人事業税の計算方法
法人事業税は、法人の所得に、事業規模などに応じた税率を乗じて算出します。税率は都道府県ごとに定められています。
法人所得 × 税率 = 法人事業税
法人事業税の税率
東京都では、法人事業税の超過課税を実施しており、あわせて資本金又は出資金の額や法人の分類によって異なる税率を適用する不均一課税を行っています。
次の図のとおりに区分を判定し、それを元に税率が決定されます。
法人事業税の区分の判別方法

法人事業税の区分別の税率(平成28年4月1日から平成31年9月30日までに開始する事業年度)

法人事業税の区分別の税率(平成31年10月1日以後に開始する事業年度)

おわりに
このように、法人税とはさまざまな税法が関わっていたり、市町村や都道府県で異なったりと、とても複雑な内容になっています。また、税率や税法は数年度毎に改正されるため、現在発表されている改正案がさらに変更される可能性もゼロではありません。
このような法人税や税法について網羅しようとすると、税理士並の知識が必要となってきますので、困ったことがあったら税理士への相談をおすすめいたします。税理士に無料で質問ができる「みんなの税務相談」も活用してみてください。
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