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「相続時精算課税制度」は節税対策にならない?メリット・デメリットと利用時の注意点

「相続時精算課税制度」は、生前贈与をスムーズにするために2003年に導入され、2015年に対象者の範囲が拡大されてから、利用しやすい制度となりました。

従来からあった「暦年課税制度」と比べて、贈与税が非課税になる金額の上限が高いため、「相続税対策のために利用できる贈与制度」と認識している人もいます。

そこでこの記事では、相続時精算課税制度の概要や特長、注意点、手続方法と「どういった人におすすめの制度なのか」について解説します。

目次

相続時精算課税制度とは

「相続時精算課税制度」とは贈与方法のうちの1つで、合計2500万円までの“贈与”が非課税になる制度のことです。ただし、贈与した人が亡くなった際には、本制度を利用して贈与した分の財産額が、相続税の課税対象として加算されます。

“税金を後払いできる制度”とイメージすると分かりやすいでしょう。

相続時精算課税制度のイメージ

相続時精算課税制度(相続時精算課税)で2500万円を子の一人に贈与。法定相続人が子供3人で相続発生時の相続財産が3000万円の場合。

暦年課税制度との違い

いわゆる通常の贈与である「暦年課税制度(暦年贈与)」では、贈与税が非課税になるのは1年間に110万円(基礎控除額)までです。110万円を超えた分は贈与税の課税対象になりますが、贈与した人が亡くなっても相続税の課税対象にはなりません。

基礎控除額を超えた場合は、贈与金額や贈与をされた人(受贈者)と贈与をした人(贈与者)との関係によって異なる税率で課税されます。

贈与金額 - 110万円 × 税率 = 贈与税額

なお、相続時精算課税と暦年贈与は併用することができません

そのため、相続時精算課税を選択した翌年以降、同じ贈与者からは暦年贈与での贈与を受けることができないので注意してください。 

贈与税率一覧

 特例税率(※1)一般税率(※2)
基礎控除後の課税金額税率控除額税率控除額
200万円以下10%10%
300万円以下15%10万円
400万円以下15%10万円20%25万円
600万円以下20%30万円30%65万円
1000万円以下30%90万円40%125万円
1500万円以下40%190万円45%175万円
3000万円以下45%265万円50%250万円
3000万円超55%400万円
4500万円以下50%415万円
4500万円超55%640万円

※1:祖父母や父母などの直系尊属から20歳以上の子や孫などの直系卑属への贈与
※2:上記以外の贈与

制度の利用は贈与者ごとに選べる

贈与の方法は、贈与者ごとに“暦年贈与”または“相続時精算課税”のどちらの制度で贈与をするかを選択することができます。

たとえば長男が贈与を受ける場合、父親からの贈与については相続時精算課税とし、母親からの贈与については暦年贈与とすることが可能です。もちろん、兄弟姉妹で別々の方法を選ぶこともできます。

なぜ制度ができたの?

制度が誕生した背景には、以下の2つの事柄が関係しています。

  • 高齢化に伴って、子世代への資産移転の時期が遅れてきていること
  • 高齢者の保有する資産を活用して、経済の活性化を図ろうとしていること

このような社会的背景を考慮し、生前贈与をスムーズに進めるために2003年1月1日に本制度が導入されました。

2015年には、以下のような改正が行われて対象者の適用範囲が広がったので、一般的に利用しやすい制度となりました。

 改正前改正後
贈与者(贈与する人)65歳以上の親60歳以上の親または祖父母
受贈者(贈与される人)20歳以上の子20歳以上の子、孫

相続時精算課税制度の利用条件

相続時精算課税制度を利用するには、以下のような条件を満たす必要があります。

  • 贈与者が60歳以上の親または祖父母であること(贈与年の1月1日時点の年齢)
  • 受贈者が20歳以上の子または孫であること(贈与年の1月1日時点の年齢)
  • 贈与年の翌年の2月1日から3月15日の間に所定の書類を提出すること
  • 「相続時精算課税選択届出書」を提出すること(以後、暦年贈与には変更できない)

なお、贈与財産の種類や金額、回数などついては制限はありません

相続時精算課税制度の手続方法

相続時精算課税制度を利用するには、受贈者が贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税申告を行う必要があります。

その際、必ず相続時精算課税選択届出書などの書類を一緒に提出します。なお万が一、申告期限までに間に合わなかった場合は、制度の適用を受けることができないので注意しましょう。

必要書類と添付書類

申告時に必要な書類と入手先は以下のとおりです。

必要書類入手先
贈与税の申告書国税庁のホームページ/最寄りの税務署など
相続時精算課税選択届出書国税庁のホームページ/最寄りの税務署など
受贈者の戸籍謄本本籍地のある市区町村の役所など
受贈者の戸籍の附票本籍地のある市区町村の役所など(転籍した場合は過去のも必要)
贈与者の住民票住民登録をしている市区町村の役所など

これらの書類のうち、「相続時精算課税選択届出書」「戸籍謄本」「戸籍の附票」「住民票」は初回のみ提出が必要です。贈与税の申告書は、2回目以降も提出が必要になります。

相続時精算課税制度の計算方法

相続時精算課税制度では、“合計”で2500万円まで非課税になるので、1年間で贈与された金額が2500万円以下だった場合は、残りの非課税分を翌年に引き継ぐことができます。

  • 【1年目】1000万円の贈与→「2500万円 - 1000万円 = 1500万円」→非課税
  • 【2年目】800万円の贈与→「1500万円 - 800万円 = 700万円」→非課税
  • 【3年目】700万円の贈与→「700万円 - 700万円 = 0円」→非課税
  • 【4年目】500万円の贈与→全額課税対象

贈与額が2500万円を超えたとき

贈与税額が2500万円を超えた場合、超えた金額に対して「一律20%の贈与税が課される」という決まりになっています。

「贈与金額 - 2500万円 × 20% = 贈与税額」

先の例の4年目の贈与税額は、「500万円 × 20% = 100万円」となります。

相続税対策としてはデメリットになる?

相続時精算課税制度は「相続税対策にもなる」と紹介されることもありますが、実際はデメリットになるケースも多くあります。

それは、税金が免除されているわけではないということや、不動産の贈与の場合は税金の負担が増えてしまうということなどが関係します。

税金が免除されるわけではない

本制度は、贈与時点の贈与税を非課税にする代わりに、生前贈与した分を課税財産に足して相続税を計算するという制度です。

そのため、実際には税金が免除された訳ではなく、あくまでも納税を先延ばしにしているに過ぎないのです。

必ず贈与税申告が必要になる

暦年贈与の場合は、基礎控除の110万円以下の贈与であれば贈与税申告は必要ありません。

しかし、相続時精算課税の場合は贈与金額に関係なく、贈与が発生したら必ず贈与税申告を行わなければなりません

たとえば、相続時精算課税を選択した1年目の贈与が1000万円で、2年目にも1000万円の贈与を受けるとします。この際の贈与税は0円ですが、贈与税申告は必ず行わなければいけません。

もし贈与税申告を行わなかった場合は、控除が認められず一律20%の贈与税が課税されることになるので忘れずに贈与税申告を行いましょう。

暦年贈与が使えなくなる

一度、相続時精算課税を選択すると、そのあとは暦年贈与に戻すことができません

また、財産金額や贈与の仕方によっては、暦年贈与の方が有利になることもあるため、どちらの制度を選択するかは慎重に検討することをおすすめします。

実際にどのくらいの差がでるかを、計算例(親→子の贈与)を用いて比較してみます。

    • 【CASE1:4000万円の一括贈与の場合】
      暦年贈与:(贈与金額4000万円 - 基礎控除額110万円) × 税率50% - 控除額415万円 = 贈与税1530万円
      相続時精算課税:(贈与金額4000万円 - 基礎控除額2500万円) × 税率20% = 贈与税300万円

相続時精算課税のほうが1000万円以上も税額が少なくなります。

    • 【CASE2:200万円を20年間贈与した場合】
      暦年贈与:(贈与金額200万円 - 基礎控除額110万円) × 税率10% × 20年 = 贈与税180万円
      相続時精算課税:(贈与金額4000万円 - 基礎控除額2500万円) × 税率20% = 贈与税300万円

暦年贈与のほうが100万円ほど税額が少なくなります。

CASE1の場合は、将来発生する相続財産額によっては、トータルの税金で不利になることもあるので、このことも視野にいれて考えると良いでしょう。

「定期贈与」とみなされないように注意

暦年贈与で、毎年一定の金額を贈与すると「定期贈与」とみなされる可能性があります。

定期贈与とは、あらかじめ取り決めて行った計画的な贈与のことをいいます。たとえば、200万円を20年間贈与することをあらかじめ決めてから贈与する場合は、はじめから4000万円を贈与したこととみなされて課税されるということです。

たまたま毎年贈与を行っていたというような場合は「連年贈与」となり、贈与額が年110万円以下であれば贈与税はかかりません。

定期贈与とみなされないためには、「受贈者自身が管理する口座に振込みをし、贈与日の履歴を残す」「贈与する度に贈与契約書を作成する」などの対策を行いましょう。

登録免許税や不動産取得税の負担が増える

通常の売買で不動産を取得する際には、価額の2.0%を「登録免許税」3.0%を「不動産取得税」として納付する必要があります。

相続で不動産を取得する際には「登録免許税」は0.4%に減税され、不動産取得税は免税されます。

贈与で不動産を取得する際には、売買と同様の税率になるため、相続で不動産を取得するよりも、税金の負担が増えてしまうというデメリットがあります。

小規模宅地等の特例が受けられない

自宅を相続するときには、「小規模宅地等の特例」という“土地の評価額を最大80%減額できる”といった制度があります。

しかし、贈与にはこのような特例がありません。登録免許税や不動産取得税のことも合わせて考えると、自宅を同居する子に譲りたいというときなどは、相続時精算課税制度を利用するのは税金面でデメリットになる可能性があります。

相続税対策でメリットになるケース

基本的には相続税対策にはあまりならない相続時精算課税制度ですが、以下のようなケースではメリットになります。

相続財産が少額(基礎控除額以内)である

もともと相続財産が基礎控除額以内におさまる場合には、相続時精算課税を選ぶと良いでしょう。

なぜなら、本制度で生前贈与された分と相続財産をプラスした合計額が相続税の基礎控除額以内なら、将来的に相続税がかかることはないからです。

相続税の基礎控除 = (3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)

この制度を活用すれば、一度に多額の財産を非課税で生前贈与することができます。

たとえば、遺産が現金3000万円だけの場合は、そのうちの1000万円を子に生前贈与することで、この制度の従来の目的である、“子世代への資産の移転”を図ることができるのです。

将来値上がりする可能性のある財産がある

もし贈与者の財産の中に、将来値上がりするであろう財産が含まれている場合は、相続時精算制度を活用しましょう。

本制度を利用して贈与した財産は、相続時の値上がりした価格ではなく、贈与されたときの価格で課税されるからです。

たとえば、贈与時点での価格が1000万円の土地があり、10年後の価値が5000万円程度になると想定します。この場合、1000万円の時点で贈与を済ませておけば、相続時には「贈与時の1000万円」に対して相続税が課されます。

つまり、「差額分4000万円」に対する税金分を節税できたことになります。このように、将来的に資産価値が上がりそうな財産の場合にはおすすめです。

ただし、将来その財産が値下がりした場合は、相続時には値下がりした価格ではなく、贈与したときの高い価格で評価されますので、実質的に損をすることになってしまいます。そのため、このリスクについては注意してください。

収益を生む財産がある

もし贈与者が、収益を生む財産(賃貸物件、高配当の株式など)を所有していたら、相続時精算課税制度で子などへ贈与することも検討しましょう。

たとえば賃貸物件の場合は家賃収入が発生するため、その収益で贈与者の財産も増えていきます。

しかし、早めに賃貸物件を贈与しておけば、収益も受贈者の財産になります。さらに贈与者の相続財産も増えませんので、相続税の節税効果を期待できるのです。

ただし、家賃収入は不動産所得として扱われます。つまり、その所得には所得税が課されるので、金額によっては確定申告が必要になるので注意しましょう。

すでに110万円を超える贈与をしている

お金や財産を子や孫に渡した際に、贈与税がかかるということをあまり認識していないこともあります。

贈与税は、1月1日から12月31日までの贈与の合計額に対してかかります。暦年課税は超過累進課税なので、贈与額が多くなるほど納税額も多くなります。

そのため、すでに110万円を超える贈与が発生している場合は、相続時精算課税制度を利用することを検討してみても良いでしょう。

繰り返しになりますが、一度、相続時精算課税にすると暦年課税には戻れないので注意が必要です。

争続の防止につながる

生前仲の良かった相続人同士であっても、いざ相続が発生すると「財産の奪い合い」が起こってしまう場合もあります。

その点、相続時精算課税制度を活用して生前贈与をしておけば、被相続人が元気なうちに相続人との話し合いで、ある程度の遺産分けをしておくこともできます。

つまり、相続時精算課税制度は、活用次第で争続の防止にも役立つ可能性があるのです。また、子や孫にとっては、欲しい財産を欲しい時期に受け取ることができる点もメリットといえます。

ただし、生前贈与は「特別受益」に該当することを念頭に置いておかなければなりません。

特別受益とは、「被相続人から特別に利益を受けている場合の利益分」のことで、その分は相続財産に組み入れられ(特別受益の持ち戻し)、特別受益を受けた相続人は「遺産取得分から利益分を減額される」ことになっています。

特別受益を受けた相続人は、その分の遺産配分が減ってしまいますが、贈与時に贈与者が特別受益分の持ち戻しをしなくて良いという意思表示をすれば、持ち戻しを免除することができます。

他にもある贈与の非課税制度

相続時精算課税制度以外にも、直系尊属からの贈与であれば、贈与税が非課税になる制度が複数あります。

いずれも非課税となる金額が比較的高額となっていますので、相続時精算課税を使うよりも、以下に紹介するような制度を使った方が、節税効果が高くなるケースもあります。

【住宅取得等資金贈与の特例】控除額700万円(省エネ等住宅1200万円)(※1)

【結婚・子育て資金贈与の非課税措置】控除額1000万円(※2)

【贈与税の配偶者控除(夫婦間の贈与のみ)】控除額2000万円

これらの制度を利用して贈与しても、のちに相続税申告時において課税財産に足されることはありません。そのため、いずれかの制度を利用できる場合は、無理に相続時精算課税を使う必要はないでしょう。

判断に迷った際は、税理士に相談するのもおすすめです。

※1:2020年3月末契約分まで、消費税8%の場合
※2:贈与者が亡くなった時点で残額があればその分が課税財産に加算される

おわりに

相続時精算課税と暦年贈与のいずれを選択するかは、相続財産の金額や贈与を受ける人の事情、家族構成など、さまざまな要素を考慮する必要があります。

ただし、相続財産や税額を正しく把握するには、財産によって評価額の出し方なども異なるため、自身で判断するのはなかなか難しいものです。また、贈与税申告は複数の書類を準備して正しく記入をするなど、様々な手間がかかります。

その点、税理士であれば代理で税務関係の手続きや節税対策のアドバイスを行うことも可能です。生前贈与や相続税対策でお悩みの人は、資産税(相続税・贈与税)に詳しい税理士に相談してみることをおすすめします。

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